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Butterfly  作者: 姫
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混乱する舞香

思わぬトラブルで撮影が押してしまったので、

舞香が家に着いたときには夜の9時を過ぎていた。

あー、疲れた…。

それにしても裕哉のやつ大丈夫かな?

寝ぼけてただけだと思うけど…

ドアを開けると、裕哉はショボンとしながらテレビも付けずリビングに座っていた。

不気味で思わず怪訝な顔になる。

「お姉ちゃん…おかえり…」

またお姉ちゃんって呼んでる…なんなの一体?

「裕哉さ、からかってるの?」

「違うよ!本当にわけがわからないの…なんで裕哉に戻っちゃったのか…」

そういうと裕哉は泣き出していた。

まったく意味がわからない。

ただ、さすがに無視するわけにはいかないかな…こんなんでも弟だし。

「わかった、とりあえず話を聞くよ」

「うん…今のお姉ちゃんに信じてもらえるかわからないけど、1年3か月前の今日、目が覚めたらわたしは裕哉じゃなくて裕香っていう女の子になっていたの。それはわたしが元々裕香っていう女の子だった世界で、わたしが裕哉だったっていうのは、わたしとお姉ちゃんしか知らなくて…」

バカバカしい…空想の世界の話じゃん。

ちょっとでも真面目に聞こうと思ったわたしがバカだった。

「その話し方気持ち悪いからやめて。あとそんなくだらない妄想の話を聞くほど暇じゃないから」

裕哉を無視して自分の部屋へ行こうとしたら、裕哉が大きな声で言ってきた。

「今日まりやさん骨折して撮影にこなかったでしょ。奈緒美さん困ってたでしょ」

驚いて足を止め、ゆっくりと振り返った。

「なんでそのことを知っているの?」

「やっぱり…夢なんかじゃなかった…」

「なんで知ってるのか聞いてるの!」

裕哉がこのことを知っているなんてありえない!

「1年3か月前の今日にあった出来事だから…代役見つかった?そのときはわたしがお姉ちゃんに急に呼ばれて代役をやったんだよ」

代役の話までしている。

驚くというより、急に怖くなってきた。

「それがきっかけで、わたしも読モになったんだよ。それで姉妹で人気になって…」

しかし、読モになったと聞いて、怖さが薄れて現実に引き戻された。

やっぱり作り話だ。

なんで今日のことを知っていたのか知らないけど、そんなのあり得ない。

「仮にアンタが女だったとして、読モなんかになれるはずないから。この仕事バカにしないで。それともなに?女のアンタはオシャレだったわけ?」

「お姉ちゃんがオシャレの楽しさを教えてくれたんだよ。それで顔も似ていて、その代役でやったのが評判よくて奈緒美さんが姉妹で人気が出ればって」

バカらしいと思いながらも引っかかるところがあった。

それは、わたしがオシャレの楽しさを教えたというところだ。

確かに昨日の夜、わたしは裕哉が妹だったら強制的にオシャレをさせるのにって考えた。

共通している?いや、やっぱりそんなバカな話はない。

「そんな話、やっぱり信じられないから」

「じゃあこれならどう?モデル仲間に友梨絵ちゃんや玲衣ちゃんとかいるでしょ」

なんでそれも知っているの…?

舞香は無意識に否定するための理由を考えた。

「そんなのLaLaを見ればわかるし」

「友梨絵ちゃんがお姉ちゃんみたいにしっかりした性格ってことも、玲衣ちゃんが見た目と違って天然で人懐っこいこともLaLaに載ってる?」

当たっている…特に玲衣に関しては…

これで何度目だろう?同じ言葉を口にしてしまう。

「なんで知ってるの…?」

「だから裕香で経験したからだよ!特に玲衣ちゃんとは仲が良かったから。信じてもらえないなら他のことも話そうか」

裕哉はLaLaの読モをやっていないとわからないことを次々と言ってくる。

それに服や美容のことについても。

どれもリアリティーがありすぎて、さすがに疑うほうが難しくなってきていた。

「あとね…わたしとお姉ちゃん、仲直りしてすごい仲良し姉妹だったんだよ…」

それが一番信じられなかった。

でも…この馴れ馴れしい口の利き方、どことなく懐かしい気がする。

だが、舞香の頭の中が追い付かない。

これ以上聞いていたら気がおかしくなりそうだった。

「悪いけど…今日はちょっと休ませて。わたしもわけわかんなくなってきたから…」

そういうと裕哉は「わかった…」と悲しそうな声で呟いていた。

チラッと顔を見ると、すがるような目でずっと舞香のことを見つめていた。

少し後ろめたい気持ちにさせられたが、本当に今日は限界だったので部屋に戻り、

着替えもせず、メイクも落とさずにベッドの中にもぐりこんだ。

裕哉が女で読モをやってて…それが裕哉に戻ったら1年3か月前だった…

ダメだ、わけがわからない!

それに仲直りして仲良しだった?そんなのありえない。

こんなに仲が悪いのに…

ふと裕哉の言葉が頭の中に蘇ってきた。

「お姉ちゃん」

お姉ちゃん…か。裕哉にそう呼ばれたのはいつ以来だろう?

小学生?ううん、中学生以来?

あの話し方はあの頃と同じ…そういえばあの頃は仲良かったんだよね。

あの頃と同じ話し方をしているってことは、本当に仲直りしたのかな…?

そもそもなんでわたしたちって仲が悪くなったんだろう?

裕哉がオシャレじゃないから?

違うな…もっと前から仲が悪かったと思う。

ダメだ、思い出せない。

とりあえず今日は寝よう。

裕哉の話はまた明日考える…

舞香は何も考えないようにして目を閉じた。

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