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Butterfly  作者: 姫
17/45

新しい撮影

今日は外での撮影、スタジオと違っていつもより開放的な気分になる。

撮影した写真をチェックさせてもらう。

「いい感じじゃない」

奈緒美も満足した表情だ。

「ありがとうございます」

自分でいうのもなんだが、やればやるほど自然な表情になっている気がする。

この日の撮影が終わると、奈緒美に個別で呼ばれた。

「裕香に2つお願いがあるの。1つは強制、もう1つは半強制」

「奈緒美さん、それってお願いじゃなくて命令じゃないですか…」

思わず本音を言ってしまった。

奈緒美は「そうかもね」と言いながら笑っていた。

「まず1つ目、そろそろインスタとかSNSを始めてほしいの。舞香もだけどみんなやってるから。やることでオシャレな写真を撮ろうという意識も強くなるし、読者の子たちからコメントとかもくるから励みにもなるよ」

正直、こういうのは苦手だ。

今まで一度もやったことがないし、やってみようと思ったこともない。

けど、舞香をはじめ、みんなやっていることなのでやるしかなかった。

「わかりました。頑張ってみます…」

問題はもう1つだ。何を言われるのか不安になる。

「来月号で今年人気の水着を紹介するの。裕香やってくれない?」

「はぁ…って水着??」

「そう、友梨絵と玲衣と裕香で」

友梨絵とは何度か撮影を一緒にしているが、玲衣とはまだ会ったこともない。

ただ、LaLaに載っているのでち玲衣の存在は知っている。

細くて大人っぽい雰囲気の女の子だ。

「な、なんでわたしなんですか…?お姉ちゃんのほうが…」

やりたくないので舞香になすりつけてみた。

「舞香は去年やってるの。だから今年は裕香」

確かに去年、舞香が水着で乗っていた記憶がある。

「あの…ほかにも人いますよね…」

「裕香!やるの?やらないの?」

怒鳴られて肩をすくめてしまった。

やるかやらないか聞いているけど、やらないなんて絶対に言えない雰囲気だ。

これも半強制じゃなくて強制だよ…

「や、やり…ます…」

「なんか嫌々って感じね。別に嫌ならいいけど」

奈緒美は冷たい目で裕哉を見ている。

恐い…やる気あるように返事をしないといけないのか…やりたくないのに。

「やります、やらせてください!」

元気よく言うと、奈緒美の目がいつもの雰囲気に戻り、ニコッとした。

「裕香ならそう言ってくれると思った。でもご褒美があるから楽しみにしててね」

ご褒美?水着撮影だと値段が上がるのかな?

それなら我慢できるかも!

給料は多いに越したことはない。

少しだけ裕哉はやる気がわいてきた。


「へー、水着やるんだ」

「奈緒美さんが強制的にやれっていうから仕方なく…」

舞香が化粧水を塗りながら裕哉の話を聞いている。

「まあ、何事も経験だよ」

「ずいぶん簡単に言うよね。お姉ちゃんは去年やって恥ずかしくなかった?」

「んー、別に。だって日ごろから体系気にしてるし、どうせプライベートで海やプール行けば水着になるからね」

それは舞香が元々女だからだ。

元々男だった裕哉からすれば、人前で水着姿になるのは抵抗がある。

ましてや、それが雑誌に載るとなると不特定多数の人目にさらされることになる。

「あー、憂鬱…とりあえずお風呂入ってくる」

脱衣所まで行き、服を脱いで裸になった。

お風呂場の前には、全身が映る鏡が置いてある。

これは裸になったときに体系がチェックできるように舞香が前から置いたものだ。

何気なくその鏡で自分の裸を確認してみた。

もう見慣れた女の身体、違和感もなくなってしまった。

大きな胸に少しくびれた腰、ほっそりした腕に、意外とすらっとした脚。

まあ、スタイルは悪くないよね…なんとかなるかな…

「なにしてるの?」

いきなり後ろから舞香の声がしたので、慌てて振り返った。

「な、なんでいるんだよ!?」

裕哉はほとんど女のような話し方になっていたが、

慌てたりするとたまに男の頃のような話し方になる。

「トイレ行こうとしたら裸で鏡の前に立ってたから。さてはスタイルチェックしてたな」

思わず手で胸を隠して腰を引いてしまった。

「よ、余計なお世話だ!」

下着姿は何度も見られているが、裸は初めてだったので恥ずかしいに決まっている。

やはり下着姿と裸は別物だ。

そんな裕哉の気持ちをまったく理解していない舞香は平然と言ってきた。

「別に女同士だし姉妹なんだから隠さなくてもいいのに」

「今は女同士だけど元は男だ!」

「あー、そうだったね。最近の裕香って普通に女だから忘れてたよ」

忘れるか、普通…

「まったく…」

「ま、そのスタイルなら水着になっても問題ないから」

そういって舞香はトイレに入っていった。

確かに…このスタイルなら問題ないはず…

少しだけ不安が安らぎ、お風呂場のドアを開けて入っていった。

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