変わりゆく日常
今日は何を着ればいいんだか…
裕哉は舞香の服とにらめっこをしていた。
そもそも女の服って種類が多すぎるんだよな。
組み合わせとかも面倒くさいし…
あれ、こんなのも持ってるんだ。
手に取ったのは大きめの白いシャツだった。
「それ着るんなら下はスキニーのデニムでいいと思うよ」
支度をしていた舞香が後ろからそう言ってきた。
舞香にしてはめずらしくシンプルな服装を押してきた。
てっきり、またワンピースだのスカートだのと言ってくると思っていた。
「今日は仕事ないしね、それに今の裕香だったらそういうラフな格好もオシャレに見えるよ」
本当にそうなんだろうか?
とりあえず着てみると、確かにダサくは見えなかった。
「髪、少し大人っぽくしようか」
寝ぐせ直しでたっぷり濡らした後、ドライヤーで乾かしてかきあげバングにされた。
それだけで一気に大人っぽく見える
そして早くメイク覚えるように言われながらメイクをされて完成。
「うん、いい感じ。今日はかわいいっていうよりかっこいいかな。着る服でメイクや髪型も変えないといけないんだよ」
オシャレに関しては本当に頼りになる。
本当にすごい姉だと思わず関心していた。
昨日とはまったく違う雰囲気、みんなはどういう反応をするんだろう…
あれほど嫌だったのに、ひそかに楽しみになっている自分に気づいていなかった。
早速矢沢たちが近づいてくる。
「裕香ちゃん、今日は大人っぽい。昨日と全然違うじゃん」
「ちょっと雰囲気を変えてみただけだよ」
サラッと言うと「さすが舞香ちゃんの妹だよねぇ」と話している。
そう言われて少し優越感に浸っていた。
座る場所を探してると、実久が一人で座っているのを発見したので、
そこへ向かいかけたが、途中で昨日の実久の言葉が蘇ってきた。
オシャレとか興味ないから、そういう人は苦手なの。
自分はオシャレなんかじゃない!
そう言い聞かせて1歩足を進めてから立ち止まった。
オシャレじゃないのか、本当に?
昨日の格好、今の格好、雰囲気を変えて、矢沢たちに褒められて優越感に浸って…
それに読モになった以上、オシャレを頑張らないといけない。
昨日のインタビューでも見本になれるように頑張るって言ったじゃないか。
裕哉は冷静に考えた。
これからは自分とフィーリングが合うオシャレに興味がない実久と仲良くするよりも、
波長が合わなくてもオシャレが好きな…特にLaLaが好きな子と仲良くするほうが大事なのでは…
奈緒美の怒鳴り声が響く。
プロ意識が足りないんじゃないの?
そうだ、姉貴も言ってたっけ。常に読モだってことを意識しないといけないって…
裕哉は180度体を回転させ、矢沢たちのほうへ歩き出した。
「隣、いいかな?」
「もちろん!裕香ちゃんと仲良くなりたかったし」
そう、今の俺…いや、わたしにはこれが一番いいんだ。
この時から裕哉は矢沢美紗たちと仲良くなることを選び、
少しずつ今までの自分から変化していった。