表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Butterfly  作者: 姫
11/45

撮影とその後

中に入ると舞香がメイクをしてもらっている最中だった。

その奥には別の女性がメイクをしてもらっている。

彼女も読者モデルだろうけど誰かはよくわからない。

すると舞香が中断してそのモデルに裕哉のことを紹介してくれた。

「友梨絵、この子が妹の裕香」

「へー、雑誌で見るより似てるじゃん」

「そうかな?とりあえず今月号から一緒にやっていくからよろしくね」

「はーい、よろしくね。裕香」

「こ、こちらこそお願いします」

裕哉が慌ててお辞儀をすると友梨絵が笑いだした。

「そんなかしこまらなくていいよ。同じ読モなんだから。まるで体育会系みたい、裕香って運動部だったの?」

友梨絵が気さくに話しかけてくる。

「い、いえ…帰宅部です…」

「あ、そうなんだ。なんか不思議な子だね」

そういってまた笑っていた。

よく見ると、友梨絵はLaLaに一番多く載っていた気がする。

つまり1番人気ということか?

とても明るく、メイク途中でもかわいいのがわかるので、人気があるのも頷ける。

「裕香ちゃん、メイクするよ」

「は、はい」

ヘアメイクさんに呼ばれ、舞香の隣に座らされた。

「今日はちゃんとベースメイクしてきてくれたんだ」

「お、お姉ちゃんに…」

「あー、なるほどね。でもこのほうが早く済むから助かる」

そういいながら手際よくやってくれた。

先に始めていた舞香と友梨絵はメイクが終わったので、衣装に着替えている。

ようやく裕哉も終わったので、着替えることになった。

着替えるために服を脱ぎ、下着姿になったらスタイリストさんに言われてしまった。

「裕香ちゃんは下着にももう少し気を使ったほうがいいよ。見えない部分のオシャレも大事なんだから」

裕香がもともと持っている下着はすべて無地でシンプルなものだったので

裕香になった裕哉もそれを使っている。

特に気にしてはいなかったが、言われてみると本当にオシャレの欠片もない下着だ。

こういうところにまで気を使わないといけないのか…

オシャレって大変なんだな。

着替え終わり、スタジオに向かう。

まず3人で1枚撮影したあと、衣装を変えて今度は舞香と2人での撮影になった。

姉妹で押し出していく、それをまさに実践している。

これで終わりかと思ったら、まだ続いた。

舞香と友梨絵が単独で撮影し、まさかの裕哉まで単独で撮影することになっていた。

ただでさえ撮られることに不慣れなのに1人はすごく緊張する。

「うーん、少し目線を逸らしてみようか」

カメラマンの指示が出て、裕哉はそれに従うのが精いっぱいだったが、

なんとかOKが出たのでホッとした。

「はい、みんなお疲れさま」

どうやらやっと撮影が終わったらしい。

前のときよりも疲労がドッときたが、無事に終わってなによりだ。

元の服に着替え終わると、裕哉と舞香は奈緒美に呼び出された。

ダメ出しかなと不安になる。

今日はこないだと違って、自分なりに精いっぱいやったんだ。

文句を言われたらやる気がなくなりそうだ…

そんなことを思いながら話を聞いてみたら、全然違う内容だった。

「明日2人とも会社にこれる?裕香の正式な読者モデルデビューを記念してインタビューの記事を組むことになったの。だから明日は姉妹でインタビューに答える仕事」

一難去ってまた一難とはこのことだ。

なんとか撮影を終えたのに次はインタビュー…なにを答えればいいのか。

ため息をつきそうになったが、答えるだけならある意味撮影のほうが楽な気がした。

「わかりました。大学があるので夕方でいいですか?」

「時間は2人に合わせるよ」

結局、夕方の4時ごろに行くということで話がまとまった。

そしてやっとこの日の仕事が終わり、駅に向かって歩いていたら

舞香がさっそく今日の感想を聞いてきた。

「どうだった?」

「なんだかわけわからないうちに終わった感じだよ。とにかく疲れた」

「でも嫌な気分じゃないでしょ?」

嫌だとかそういう感情も持てないくらい、

いっぱいいっぱいだったというのが正直なところだ。

「よく…わかんないよ」

「ふーん、でもきっと慣れてくれば楽しくなるよ」

そうなればいいが…自分ではまだよくわからないと思った。


裕香にしては頑張ったかな。

本人は本当に疲れたみたい、そんな顔してるんだもん。

今何時だろう?

腕時計を見てみると、夜の7時を指していた。

まだ間に合うかな。

頑張った裕香にご褒美を買ってあげよう。

「裕香、駅に着いたら買い物していくよ」

「えー…今日は帰ろうよ、マジで疲れた」

「ダメ!これからの裕香に必要なものだから」

ごねる裕哉を押し切り、買い物に行くことになった。

必要なもの、それはメイク道具だ。

化粧品売り場に連れていかれ、困惑していた。

「お姉ちゃんのでいいよ」

お、ちゃんとお姉ちゃんって呼んだ、偉いえらい。

「そういうわけにいかないの。化粧品は女にとって必需品なんだから」

とは言ったものの、片っ端から揃えると結構かかるんだよなぁ…

必要最低限のを揃えただけでも3万近くになってしまった。

「こんなにするの?やっぱりいいよ。そんなにお金もらってないんだしもったいない」

「お金のこと奈緒美さんに聞いたんだ?」

「うん…思ったより安くて驚いた。お姉ちゃんが頑張って稼いだんだから自分のために使いなよ」

へー、こんな風に気を遣うんだ。

ちょっと意外だけど、かわいいところもあるんだね。

ますます買ってあげたくなった。

「妹なんだから遠慮しなくていいの、わたしに任せて」

ということで、買ってあげました。

家に帰り、買った化粧品を舞香が使っていないポーチに入れて裕香に渡した。

「はい、これ裕香のだから。早く自分で使えるようになろうね」

「う、うん…ありがとう」

お礼を言ったということは自覚してきたということかな。

それが舞香にはとても嬉しかった。


あー本当に疲れた。

今日は早く寝よう。

お風呂から出ると、置いてあったジャージがなくなっていた。

代わりに舞香が着ているルームウェアが置いてある。

「ねえ、ジャージは?」

リビングにいる舞香に向かって叫ぶと返事が返ってきた。

「あんなのダメに決まってるじゃん。わたしのだけど今度からそれ着て」

フレアの袖になっているトップスと水玉のボトム。

はあ…そうか、365日こういう風にかわいいのを着ないといけないのか。

そういえば下着のことも指摘されたな。

かわいい下着…

またため息をついてしまった。

慣れるしかないな…

あきらめて、それを着てリビングに戻った。

「いい感じじゃん」

「はい、どーも」

もうまともに答える気にもならない。

今日は本当にもう寝よう。

舞香に厳しく言われ、今では日課になってしまったスキンケアをして眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ