夜の港
工場に勤めていた。
3勤3休4勤4休。日勤夜勤。このローテーション。
顕微鏡で携帯電話のカメラモジュールの目視検査だった。
給料はそこそこもらえたので、熊本から種子島まで旅行に行ったこともある。
恋多き女なので、ここでも惚れた人がいた。
しかし、彼の携帯の待ち受けにはかわいい女の子の写真が写っていたので、初デートでは食事だけでバイバイした。
その後すぐ彼は、名古屋へ転勤になった。
その後も私は工場に通っていたが、この工場では短いスパンで首切りがされていた。
辞めるか名古屋に行くか選ぶように言われて、名古屋へ行こうと思った。
なりをひそめていた統合失調症の幻聴が現れて、精神的にガクッとなってしまった。母に付き添われて精神科へ行き、入院することになった。
退院した私は、Mサイズのコートを買って交通センターの地下にあるトイレで着替えた。しかし、身体がパンパンで見苦しい姿が鏡に映っていたので、そのコートをゴミ箱へ捨ててしまった。
車を運転して熊本市内を走った。
熊本新港へ行くと、オレンジ色の街灯が連なってきれいだった。
ひとけはほとんどなく、車を駐めて、すぐ近くの波止場に降りた。
海に赤い棒が何本もさしてあって、ゆらゆら揺れていた。
私はしばらくその情景を堪能すると、車に戻り、帰宅した。