お星さまになったんだよ。
死ぬ。
少女が認識した瞬間には、もう遅かった。
しがわれた怒声も、漏れだす尿も、飛び出しそうな眼球も、首の骨が軋む音も、それらを作り出した祖父の手も、全てが遠くに消えた。ただ、窓の外、青空を自由に飛び回る鷹が鋭い爪とクチバシを構えているのだけが見えた。
そして迫り来る死を待つだけのしがない一般人の少女は、空を落ちていた。理解の追い付かない脳みそが悲鳴と一緒に罵倒を繰り広げたが、何故か薄紫色の空に全て飲み込まれる。
確かに青空だった。鷹が飛んでいた。死肉を、少女の遺体を狙うかのように、眼光を向けていた。何よりも少女は祖父に殺されていた。
首を撫でるが痛みは無く、尿で濡れた筈のスカートも乾いていて染みもない。
『お前は、魔法と剣の世界に産まれ変わる。お前は、膨大な魔力と頑丈な身体を持つ。お前は、願う事を実現させる創造力を持つ。生きるも良し、死ぬも良し。』
空から降り続ける男女ともつかない中性的な声は、よろしく頼む。と軽やかな声で締め括られたが、高度数千フィートから落としただろう声の言う事ではない。
言い返す余裕もなく少女はただ落ちていくが、1つだけ言える。
よろしく、は到底出来そうにない。