はじまりはじまり
1人として考え方が一緒の人はいないと思う。
その辺はよく有名な曲の中でもいじられているので深く追及はしない。
簡単に言えば好き嫌いの別れ方である。あの食べ物が好き、あの人が嫌いと人それぞれ様々だ。ちなみに俺にももちろん好き嫌いがある。
自分が好きなものは他人と共有したいと人は行動する。しかし俺はそれを他人に押し付ける行為はあまり好きではない。
趣味嗜好は共有できることもあれば共有できないこともある。
「これ絶対おいしいから今度食べに行こう?」「ねえこの人かっこいいよね~」
などと自分の好きなものを他人に押し付けるなど言語道断だ、そのような行為!同じ趣味のやつに言え!!
失敬、取り乱した。
俺の趣味は読書だ。読書は良い、特に俺は物語が好きだ。頭の中で勝手に風景や人物や匂い、食べ物に至るまで文章通りに勝手に想像できるからな。
まあアニメや映像化した時に自分の想像通りではなくってたびたび落ち込むがな。
しかし俺はそれを誰かと共有する必要はないと思っている。誰かに話したところでそいつが同じものを同じように好きになってくれるとも限らないしな。意思疎通がぎこちなくなって離れていくのが見え見えだ。
まあそんな考え方が祟ったのだろうな。
友達0人。恋愛経験0。
学校には知り合いがいる程度。話し相手は授業の後に質問しに先生と話すぐらい。別にさみしいとかぎこちないとか思ったりしないが、それでもまずいとは思っている。
だが俺は共有したくない。好きなもの嫌いなもの。そんなことを他人に教えて何になると言う……まあこんな考え方じゃ友達出来ないよな。
そんなことを考えつつも俺は図書室で本を立ち読みしている。
なぜ立ち読みなのかって?席に座ると誰かが近くに座ってしまうかもしれないだろ?それが声を押さえない非常識だったらどうだ、俺の本の世界はパリピ一色になってしまうじゃないか。だから俺はあまり人の通らない図書室の端、それも誰が読むのかわからないこれでもかってくらいでかい本のゾーンにわざわざ最近出版された文庫をもって読みふけっているのだ。
まさに完璧。
そう完璧に友達ができないなこれは。
現状社会的にもやばいだろうな。この間なんてクラスでカラオケ大会があったらしいが俺には声がかけられなかった。クラスでもはみ出し者の奴でさえ声をかけられてたのにな~。
天国の母さん…高校1年の夏……俺は読書がはかどりそうです。
『ピンポンパンポ~ン!冷房ガンガンな部屋にいる学園長です!!』
…ピンポンパンポンくらい楽器でやったらどうなんだ?
『このクソ暑い中勉強に励む愛すべき生徒たち!いかがお過ごしかな?ぺろ学園長はこれからプールに行ってガンガン泳いで来たいと思いますぺろ、あ~やっぱ暑い日はアイスに限るぺろ』
イライラする~
『さてぺろ、その前に学園長室に来てもらぺろたい子がいるのでほうそうかけまぺろ』
とりあえずアイスなめるのやめろ
『図書室で一人楽しく寂しい日々を送る誰も読まないような本の並ぶ列の隅に最近出版された文庫を読みふけっているそこの君!ガジガジ』
おい今かじった……な?あれ今のって…
『く~!あったまいたい!一気にかじりすぎたよ~。え~っとなんだっけ』
俺の事じゃない俺の事じゃない俺悪いことしてないだから俺じゃない
『あ、そうそうお茶お茶』
違うだろ!俺だろうが!……いや違う違う俺じゃない。
『ふぃ~、治った治った。さて能登良太君!お話があるので今すぐに学園長室に来ること!30秒で』
俺だった
放送では学園長がのんきな感じに『い~ち、に~い、さ~んぺろぺろ』とカウントダウンしてる。原因はともかくとりあえずダッシュだな。
あとまだ食ってるな。
『よ~ん、ガジガジっう頭が』
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バタン←ドアを思い切り開ける音
ドタン←驚いて椅子からひっくり返ってお茶をこぼす学園長
「あち!あっち!あっちいよ!」
「ああ、ごめんなさい学園長急いでたもので」
「ドアくらい静かに開けなさいよ、まったくせっかくのお茶が台無しじゃんか~」
じゃあだんだん早くなっていくカウントダウンをやめてほしかった。図書室からそれなりに距離あるから廊下は走るなの警告ガン無視で来たんだから。
「さてと、どう?涼しいでしょ?」
「自慢のために呼んだのなら図書室に戻りますが?」
「まあまあ焦りなさるな若人」
どっちがだ。
俺の前で偉そうに最大まで引き上げられた皮の椅子にふんぞり返っている学園長の姿はまるで中学1年生くらい……いやもしかしたら小学生くらいの姿をしている。年齢不詳、噂では100歳を優に超えていると聞いたことがあるがとてもそんな肌年齢ではないと思う。
「君を呼んだのはほかでもないぺろ」
「学園長、アイスはいったん置いといてください集中できません」
「え~溶けちゃう」
「じゃあ話の前に食べ終えてくれません?」
「いや、私はこの後忙しいからな。このまま話そう」
「アイス片手にって……まあいいですけど」
てか忙しいってプールだろうが
「改めて、こほん。君を呼んだのは他でもない。」
「はい…」
「君はこの六花学園において過去最高と言えるほど優秀な成績を収めている」
「え?そうなんですか?」
「うむ、今までこの六花学園において勉強、実技、体育。一つは出来てももう一つは平均しか取れない者ばかりだった。しかし君はすべてにおいてトップレベルという今までに例を見ない成績を収めている」
「まだ中間しかしてませんから何とも言えなくないですか?」
「いや!何人もの生徒を送り出してきた私が言うんだ。間違いないともさ」
「はぁ」
何人もってそんなずっと見てきたみたいな事こんな小学生みたいな子に言われても説得力が
ふいにトロフィーが飾られている棚の上を見てみたがどうやら本当らしいな。この学園の初期メンバーらしい白黒写真の中に髪の長さの違う学園長がいた。
ありえない
「ん?どうした?鳩が鉄砲喰らった顔して」
「学園長それ死んでます」
世の中はまだまだ知らないことが多いなー
「聞けい若人!」
「あ、はい」
学園長が椅子の上に立った、危ないな~
「この学校の校則はご存知かな?」
「はい」
「まあ君ならそうだろうともさ」
「まあ基本ですから」
なんなんだ?校則?やっぱり俺なんかしちゃったか?
「さて、それなら話が早い。では紆余曲折しながら話すがいいか?」
「単刀直入にお願いします」
「そうか?まあプールもある事だしな」
停学?退学?嫌でもそんな感じの雰囲気じゃないしな、何か他に用がある…そんな感じだよな
「うちの校則には校内での不純異性交遊は禁止と書いてあることは知っているだろう?」
「はい確かにそうですね」
「しかしこうは書いていない。校内での恋愛を禁止する…とは」
「え?それって不純異性交遊なんじゃ?」
「シャラップ!!私が『YES』と言えば『はい』と答えるのがこの学校のルールだ!」
「そんなの校則にありませんが」
「二度は言わないぞ」
うわ~すんごい真顔だ。こわい
「とにかくこの学園では恋愛が推奨されています」
「は、はい」
「よろしい。そして君はこの学園で文武両道の体現者でありトップランナーだ」
「もうなんかちぐはぐしてますね」
「………」
「なんでもないです!」
「よろしい」
まじでこわい!心臓掴まれてるみたいな感じ!
「そんな君に私から質問だ」
「YESマム!!」
「恋愛、してみない?」
「YESマ……なんですいきなり」
レンアイシテミナイ?なにそれ
「恋愛しろ」
「いやっあのっ恋愛しろと申されましてもその~」
「しろ」
「いやいやいや、しろと言われても相手がいないですしそもそも自分あまり他人と話しませんし」
「しろ」
「はい」
押し負けた、いやいや押し負けたけどそれとこれとは話が違う。
「学園長、恋愛しろって言われても自分そんな開いていないんですが」
「安心しなさい。私が用意しておいたから」
ヨウシシテオイタ?なにそれ
「君に似合う女子をこちらでね、用意しておいたんだよ。」
「はい?女子を用意した?」
「そう!それぞれの分野で君と競っている女の子たちをね」
「………」
処理が追いつかない…
「彼女たちにはもう声をかけて了承を得てるから安心して」
「安心できないんですが!」
「大丈夫大丈夫、彼女たちも好きな子いないって言ってたから」
「そうじゃなくて」
「君はさ…もっと幸せにならないとね」
「いや、何俺の過去に係わってるかのような話し方してるんですか、学園長と直接話すのこれが初めてなんですが」
「いいから彼女たちと話してきなさい!君は少しでも良いから他人と関わるべきよ。このリストに載ってる子が君を紹介した子達だから話しかけてみてね」
「はい、ワカリマシタ」
「ちなみに話しかけなかったらまた学園長室に呼ぶから」
「分かりました!!」
「よろしい、もうお昼休みも終わりだ!君の未来の幸せを祈ってるよ」
「あ、アリガトウゴザイマス」
もう溶けてボロボロになったアイスの汁を浴びた学園長に「失礼しました」と言い部屋を出た
「本当にさ、君は幸せにならないと。」
学園長は良太の出て行ったドアの方を見て考えふけっていた。
つづく
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