初雪の日②
車に乗って町役場に向かう。
毎年こんなに雪が降るもんだからこのあたりの家はだいたいが一階は車庫で二階以上が生活空間になっている。
玄関の先の階段を降りていくともうかなり雪が積もっていた。
「うーん。だいたい40cmくらいかな?初日から飛ばしてるねー」
「雪平。冗談言ってる暇ないよ。遅れたら小泉さんが心配しちゃう」
「それもそうだね。じゃあ、まずは車が出られるようにしないとね。」
「うん。雪平まかせた」
普通ならここで除雪を初めて数十分は時間を取られてしまうが、なんでも屋さんにはそんな時間はない
「それじゃ、今年もやりますかー。1発目はやっぱり雪だるまだよねー」
そう言って雪平が手をかざすと幅2mほどの雪が一斉に集まりはじめた。
集まり空中で大きく2つの球体が出来るとそれが自然とくっついて大きな雪だるまとなって浮かぶ。
「また、雪だるま作ったの?毎年飽きないよね」
「いやー、毎年初雪の最初に使う時は雪だるまって決めてるんだよねー。うん。思ったよりまだ重くなってないからこれなら楽勝そうだね」
そう言うと、雪だるまは雪がなくなった場所の隣に自分から座るかのように移動して止まった。
「腕となる枝とかが欲しいけどそろそろほんとに小泉さんが心配しちゃうから行こうか」
そうして、雪平とちーは車に乗り込み移動をはじめた。
「いやー雪平さんありがとうございます!!」
そう、大きな声で話しているのは小泉さん。
普通に話す声が大きいから役場中に声が響いている。
これは、ほかの人の仕事の妨害にならないのかと少し心配になるが、みんないつもの事というように涼しい顔をしながら仕事をしている。
「小泉さん。今シーズンもよろしくお願いします。では、さっそくですが、今年は何から始めていきますか?」
「そうですねー!昨日の夜から降り始めて結構積もってきてますからね!早めに対策しておいた方がいいと思うんですけど、雪平さんはどうでしょうか?」
「そうですね、もしかするとこれは一日70cmのペースかもしれないので、お年寄りの多い地域などで、早めに雪をどけておいた方がいいかもですね」
「さすが雪平さん!わかってらっしゃる!では、今日は下組の方をお願いしたいと思います!」
下組か…確かにおじいちゃんとおばあちゃんばっかりの印象だな。
「わかりました。では、下組の地図をお願いします」
「任せてください!魔法使いさん!」
「小泉さーん?僕はあんまりそれで呼ばれるの好きじゃないって言ってるじゃないですかー。だから、なんでも屋さんか雪平と呼んでください。」
「ああ!失礼しました!雪平さんでは、こちらが地図になりますのでよろしくお願いします!」
悪気があってわざと言ってないこともわかるけど、堅苦しい感じがするからそんな呼ばれ方は嫌いだ。
気楽に頼ってもらうための看板がなんでも屋さん。
みんなのために出来ることをしていくのが僕の仕事。
「じゃあ、終わったらほーこくに来ますからー」
そう言って僕は町役場をあとにした。
「雪平さっきちょっとムッとしてた?」
僕の機嫌を伺うようにちーが助手席から訪ねてくる。
やっぱりそう感じ取られちゃうよね。
「いや、怒ってないよ?ただ、違う職業で呼ばれたから訂正したまでたよ」
「そっか、じゃあ、お仕事頑張ろ!地図は私に任せて」
「うん。ちー頼りにしてるからね」
ちーはそう言うとスッキリしたような表情になっていた。
気を使わせてしまったかな?
まぁ、帰りにお詫びの印としておしるこでも買ってあげよう。
どうも唯織です。
魔法ってイメージはあるけど、いざ文章にしてみようとするとやはり難しいですね!
そんなことを実感した②でした。
次はなかなか地方色が強くなってくるかもです。
よろしくお願いします!