力を授かりし者 ①
「さて、次は大いなる力について説明しましょう」
「あぁ、よろしく頼む」
「あ、その前に名前を聞いていませんでしたね!教えて頂けますか?」
「そういえば、名乗ってなかったな。俺は剣 広夢だ」
「ツルギ ヒロム...いい名前ですね!ではこれからは、ヒロムさんと呼ばせていただいます!」
「うーん、さっきから思ってたけど、レイティアちょっとかたすぎじゃない?もうちょっとゆるくいこうよ」
「と言いますと?」
「俺のことは呼び捨てでも、ヒロムゥとか広ぴょんとか変えてもいいし、敬語だって使わなくてもいいんだよ?」
「敬語じゃないと他人と喋るの苦手なのでそこは気にしないでください。あと、他の呼び方はないのですか?ヒロムゥ、ヒロピョンは嫌です」
「そうだな...呼びやすいのでいいと思うんだけど...」
「では、『お兄ちゃん』はどうでしょう?人間の男性はこの呼び方をされると嬉しくなると聞いていますが」
「俺の妹は由美だけで充分だ!
他のやつの兄になる気はない。
それに、『お兄ちゃん』と呼ばれるなら、由美を助け出して、由美に呼んでもらいたい...」
「分かりました、それではヒロムと呼ばせていただいます」
「あぁ」
「それでヒロム?その妹のユミという人はどこかに捕まっているのですか?」
「あぁ、アルヴァロン王国の騎士3人が突然来てその中のユーディルってやつが由美がアルヴァロン王国次期女王ユミルだと言って由美を連れていったんだ。
俺は由美を助けに行くために転移門を使ってアルヴァロンに行こうとしたけど、何故かここに着いた」
「アルヴァロン...聞いたことがあります。アルヴァロン王国の騎士は、アスタリアで最も強いと言われています。」
「アスタリア?」
「アスタリアは、異世界の地球といったところです」
「なるほど」
「でもヒロム?人間のあなたがアスタリア最強の騎士に勝つ術はあるのですか?」
「今はない。とりあえずアルヴァロンに行って、騎士の訓練を学んで、俺もトレーニングして強くなろうと思ってる」
「無理です。」
「即答!?」
「アルヴァロンの騎士達は訓練などしません。彼らの力は生まれ持ったものなのです」
「マジかよ...」
「さらに今のあなたの体では、鍛えても、彼らに傷ひとつ付けることは出来ません。」
「なんだよそれ!俺は...俺は由美を救うことが出来ないのか!?」
どんなに鍛えてもあの者達に勝てないと断言されたことがショックだった。
もう、由美は助けられないのか?俺を信じて待っている由美を助けられないというのか...
「はい、今のヒロムでは無理です」
「なら、俺はもうアルヴァロンに行く意味がない。
なぁ、お前は最強の神なんだろ?なら俺を殺してくれよ。あいつらに勝てないんじゃ由美を助けられない。由美がいない人生なんて、生きててもしょうがないんだ」
「私は言いました、『今のヒロム』では勝てないと」
「え?どういうことだ?」
「私は、大いなる力をあなたに授けに来ました。そして、その大いなる力を授かり、その力を使いこなせればアルヴァロンの騎士全員を相手にしても、ヒロムが負けることはありません」
「それは本当なのか!」
「はい!12神の私が言うのですから、間違いありません」
「由美を助けられるんだな!よし、早速その力をくれ!」
「その前に、大いなる力について知る必要があります」
「わかった...まぁその力を貰えばすぐに由美を助けに行けるから説明だけ聞いておこう」
「まず最初に、ヒロムは伝説の騎士アーサーを知っていますか?」
「あぁ、100万の魔物を一人で全滅させた伝説の騎士だろ?」
「その通りです」
「でも、なんで空想の人物の話なんてするんだ?」
「アーサーは空想などではありません。存在していました」
「マジかよ」
「そして、アーサーが使っていた剣、聖剣エクスカリバーは知っていますね?」
「あぁ、凄い力を持っていたけどアーサーが死んだ直後に力を失って砕け散った剣だよな」
「はい、でもエクスカリバーが凄いのではありませんよ?アーサーが生きてる間アーサーの持つ力が、エクスカリバーに宿っていたからエクスカリバーは強くなったのです。そして、アーサーが死んだことにより、エクスカリバーに宿る力もなくなったので、エクスカリバーは今まで溜め込んでいたダメージを一気に食らって砕け散ったのです」
「なるほど...じゃあアーサーが凄いんだな!」
「いいえ、アーサーが持っていた力が凄いのです」
「え?だからアーサーの力だからアーサーが凄いんじゃないの?」
「ここからが話の本第です」
「あ、うん...」
「アーサーが持っていた力、実は私があげたものなんです!」
「なに!?」
「そして、今からヒロムに授ける力はアーサーの力と同じなのです!」
「お、驚きすぎて言葉が出ない...」
「あとですね、エクスカリバーの名前は剣の名前ではなく力の名前なのです」
「あぁそうなの?もう何を言われても驚かない自信があるよ...ははは」
「でもですね、当時その力は12神皆が持っていたのでアーサーみたいな人があと11人いたわけです!」
「なんだって!もっと驚くことがあったとは...世界ってなんでもありなんだな」
「世界の可能性は無限なのです!」
「なにドヤ顔しながら、名言言っちゃってるの?ちょっとひくわぁ」
「ひかないでください!」
「冗談だよ」
「じゃあ話を戻します。
それでですね、アーサーの力と同じものが他に11個あったのですが、その力を持つ者が死んだ時、力が様々な場所に飛び散り、無くなってしまったのです」
「他の12神なにしてんだよ!」
「なので、ヒロムに授けるこの力が最後の1個なのです。」
「なるほど」
「それで、なんで俺にその力をくれるんだ?」
「この空間、普通の人間は入っただけで死んでしまうのです。」
「おいちょっとまて、由美は大丈夫なのか!?」
「恐らくユミさんは本当にユミル姫なのでしょう。アスタリアの者ならこの空間を通っても安全なので」
「どうしてそう言いきれるんだ?」
「私はこの空間を任されています。当然、この空間で死んだ人間の情報は全て把握しています」
「そうか。じゃあ由美は大丈夫なんだな」
「はい、ご安心を!」
「それじゃあ、俺は人間なのにこの空間で生きている。だから力を貰えるのか?」
「いいえ、それだけではありません。この空間で生きていると言うだけで力を授けるわけではないのです」
「じゃあ何なんだ?」
「それはですね。私のタイプかどうかです!」
「ふざけてるのかレイティア?」
「いいえ、真面目ですよ?私達12神が好きになる人間は、英雄の素質、そして綺麗な心を持つ者だけなのです」
「マジかよ!じゃあレイティアはアーサーも好きなのか?」
「好きにも種類があります。アーサーは人間として好きでした」
「じゃあ俺は?」
「ひ、秘密ですっ///」
「そう。まぁいいや」
「コホンッ。それでは話を戻します」
「どうぞ」
「つまりこの空間でいても生きていて、私がす、好きになった人間なのでヒロムは力を授かることが出来るのです。」
「なるほど」
「では説明は終わりましたので、力を授けます」
「おっいよいよか」
「アーサーが持っていた時の名前はエクスカリバーでした。ヒロムの場合はどんな名前になるのでしょう。楽しみです!」
「出来ればかっこいい名前がいいな」
「行きますよー!それっ!」
「うわっ!」
体に何か光るものが入っていった。
これで力は手に入ったのだろうか。
どんな力が手に入るか楽しみだが、それよりも、やっと由美を助けに行けるということが嬉しい。
「由美、もうすぐ助けに行くから!もう少し待っていてくれ!」