黒いスーツを着た者達
「あれ?広にぃ、これなんだろ?」
由美はテーブルに置いてあったある物を取った。
「なんだこれ?なにかのお守りか?」
「お守りなのかな?変な紋章が書いてあるけど...広にぃのじゃないの?」
「俺のじゃないな。お前のでもないとすると...お前の友達の忘れ物か?」
「広にぃ!私に友達が居ないことぐらい知ってるでしょ!もうっ!」
「あ!すまん!」
そう、由美には友達がいない。それは何故かって?由美は昔から大の恥ずかしがり屋で、学校でも先生意外とは全く喋っていないからだ。
由美は容姿がいいことから、クラスの男子からたびたび告白されるのだが、由美はすぐに逃げてしまうらしい。
俺にとって、由美に彼氏が出来ないのは嬉しいことなんだけど...
まぁそれは置いといて、俺と話す時はこんなに元気なのだから、ひとことでも喋れば、友達ぐらいすぐに出来ると思うから由美には頑張って欲しい。
でも、できれば男以外と仲良くしてほしいというのが俺の本音だ。
「まぁ、今回だけは許してあげる。ただし後でアイス買ってよね!」
「わかったよ、あとでアイス買いに行こう。」
「やったー!」
「まぁ、とりあえずそのお守りのことは置いといて、早くシチュー食べな。食べないなら兄ちゃんが食うぞ?」
「だめ!これは私のシチューだよ!誰にも渡すもんか!」
「ははっ。冗談だよ。」
数分後
「ごちそうさま」
「ごちそうさま!あぁ美味しかった
!」
「そっか。またいつでも作ってやるよ。」
「本当?やったー!」
こうして2人は食事を終え、アイスを買いに行く準備をしていた。
「アイス〜、アイス〜、何食べよ〜、美味しいアイス〜、チョコアイス〜」
「よし、行くか。」
「はーい!」
2人は出かける準備を終え、玄関へ向かおうとしたそのとき
『ドーン!!』
ドアが砕け散り、煙が上がった
「なんだ!?」
「なに!?」
煙が消え、玄関の方を見てみると、そこには黒いスーツを着た、耳が長く、尻尾が生えた男が3人いた。
「ふぅ、やっと見つけましたよユミル姫」
真ん中の男が前に出てそう言った。
「ユミル?誰のことだ?それよりお前達は何者だ!」
「うるさい人間ですねぇ。まあいいでしょう、特別に質問に答えてあげます。
私の名前は、ユーディル・グレイテール、右と左にいるのは私の部下です。二人とも自己紹介なさい。」
「俺の名前はセンディヒ・ラウンドファーだ。」
「俺の名前は、ジェイネール・ブラッドファングです。」
「私達は、アルヴァロン王国の騎士です。そして、そちらにいるお方こそ、アルヴァロン王国次期女王ユミル・アルヴァロンなのです。」
ユーディルと名乗る男は俺たちに、色々説明した。
「一応お前らのことはわかった。でもこいつは俺の妹の剣 由美だ。お前らの姫のユミルじゃない。」
「いいえ、その方はユミル姫です。このDNAスキャニングで確認したので間違いありません。」
「なんだ?その変な装置。とにかくこいつはユミルじゃないんだ。帰ってくれないか。」
「ええ、帰りますとも、ユミル姫を連れてね。センディヒ」
「かしこまりましたユーディル様」
センディヒという男は、その瞬間目の前から消えた。
「どこいった!?」
「キャッ!広にぃ助けて!」
「なっ!お前いつの間に!」
なんとセンディヒは、由美を捕らえていたのだ。
「お前!由美を放せ!」
広夢はセンディヒに飛びかかった。しかし、ジェイネールがそれを止めた。
「ぐっ!放せ!」
広夢は抵抗するが、ジェイネールの握力は強く、広夢は手を解くことが出来ない。
「邪魔をしないで頂きたい。あなたはそこで横になっていてもらいましょう。ジェイネールやりなさい。」
「はい、ユーディル様」
その瞬間、ジェイネールは広夢を壁に叩きつけた。
「ぐはっ!?」
「広にぃ!!」
「行きますよユミル姫。」
「いや!放して!」
「あなたもしつこいですねぇ。これ以上抵抗するなら、その人間を殺します。いいのですか?」
「えっ!?」
「ジェイネール」
ジェイネールはユーディルに命令されると、広夢の首を掴んだ。
「んぐっ!?」
「広にぃ!」
「どうします?ユミル姫。その人間はあなたにとって大切なのでしょう?」
「やめて、お願い!わかったから!ついて行くから!」
「だめ...だ!ゆ...み、行く...な!」
「いい判断ですユミル姫。ではセンディヒ転移の準備を」
「かしこまりましたユーディル様」
センディヒは何やら紋章が書かれたお守りのようなものをポケットから出した。
「天と地を繋ぐ門よここに現れよ!」
センディヒが叫ぶと壁から黒い扉が現れた。
「さぁ行きましょうユミル姫」
「お願い!最後に...最後にお兄ちゃんにお別れをさせて!」
「いいでしょう、ただし5分だけです。」
「わかった...」