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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第四章「一般編」
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80話「お父さんに隠し子」



『無事解決、で良いのかな?』

『良いのではないか?ま、儂らは何もしてないがな……』

『いや、クロは活躍したよ。俺は本当に何もしてないけど……』


 紅さんのもとに部下の方々から敵部隊の壊滅とリサ先輩の救出が終わったとの報告が入り、事態は無事に終息した。

 そして俺たちにもニアとシロから連絡が入り、みんなの大活躍ぶりを聞いて少し項垂れていた。

 単独で乗り込んできたジャスパというマジシャンを警戒しすぎて、結果的には最大戦力である俺とクロはまんまと陽動されたのである。見事に踊らされた……。


『……でもそう考えると、こいつって相当優秀なのかもな』

『たしかに、陽動という面では最高の結果を出したわけだからな』


 ロープでぐるぐる巻きにされて床に転がされているジャスパを見ながら、クロと霊力糸を通してそう言葉を交わした。

 今回の事件の実行犯は全員警察に突き出す予定なのだが、主犯格であるトウジョウ、ニケラの2人は驚くほど経歴が綺麗なため、実際の罪よりも軽く裁かれる可能性があるらしい。また、元凶である蛭害は経歴が綺麗な上に財力や人脈の力でそもそも罪にすら問われない可能性があるようで、全員明らかに経歴を詐称しているが軽い罪で終わる可能性もあるそうだ。

 それでも、紅さんが必ず相応の報いを受けさせると言っていたので罪を償う事になりそうなのだが、このジャスパだけは別だった。


『トウジョウやニケラは銃器や爆弾で武装していた証拠映像とかあるけど、こいつはトランプしにきただけだから表向きには何も悪い事してないんだよな』

『服や口内に怪しい道具や薬を隠していたが、厳密には違法ではない物ばかりのようだ。ここまでの流れを想定しての行動だったとすれば、相当な策士のようだな』


 結局、紅さんはジャスパに適切な罰を与えられないと判断して、イカサマポーカーの後から異常な崇拝対象となっている俺が処遇を決めることとなったのだ。

 紅さん曰く、俺の弟子になるためなら命懸けの命令も喜んで実行する目をしているから、適当に罰を与えて欲しいとのことだった。

 信頼されている証拠なのかも知れないけど、いち高校生にそんな大役を押し付けないで欲しい……。


「とりあえず、お前に聞きたいことがある」

「何なりとお申し付けください師匠!」


 まず師匠になった覚えはカケラもないのだが、気にせず話を続ける。


「今までどんな悪いことをしてきたんだ?もしかして、人殺しとかしてる?」

「直接戦闘は苦手なので、殺人などはしておりません。直接的には」

「直接的には?」

「はい、具体的にお話ししますと……」

 

 処遇の判断のために今までの悪事を吐いてもらったのだが、想像を遥かに超えていた。

 一部だけ抜粋すると、とある国からの依頼で敵国の資金源となっている組織を壊滅させたり、その過程で邪魔をしてきた政治家の資金を全て奪い去ったり、追手を罠に嵌めて人身売買組織に売ったりしたそうだ。直接手を下したことはないが、間接的な被害で何人が不幸になったかは見当もつかないらしい。

 まるで犯罪を題材にしたダーク系漫画やアニメの世界のお話だ。


『クロは今の話って本当だと思う?』

『"擬似・感知"で観察していたが、全て真実のようだな。ついでに言えば、お主を異常なまでに崇拝していて、弟子にすることを条件にすれば何でもするという紅の話も真実のようだ』

『ただバイト頑張ってただけなのに、何でこんなヤバい人に好かれるんだよ……』


 クロ曰く、ジャスパの語った闇の経歴は全て真実らしい。想像以上に危ないやつだった。

 だが、それらの被害に遭った相手のほとんどが悪事を働くような人間であるため、見方によっては完全な悪とも言い切れない。

 罪を洗いざらい吐いて自首してこい!とか命令すれば本当に自首しそうだが、ジャスパ曰く今までの悪事の証拠は徹底的に消しているため罪の証明が難しいようだ。

 こいつの処遇を決めるって、想像以上に面倒だな……。


「……よし!決めた!」

「師匠、何をお決めになられたのですか?ご協力できることがあれば何なりとお申し付けください!」

「まず、師匠呼びは禁止。弟子にするって決めたわけじゃないから」

「なっ……!?」

「それと、今まで迷惑をかけてきた人達を探し出して相応の償いをすること。人の命を平然と奪うような凶悪な犯罪者には償わなくていいけど、それ以外の人には全員にしっかりと償うんだ」

「そ、それを行えば、先程の本物の魔術(リアルマジック)を教えていただけるのでしょうか?」

「……考えよう」

「なるほど、まずは師しょ……結城殿の信頼を勝ち取る必要がありそうですね。すぐに実行して参ります!」

「あとは、当たり前だけど今後犯罪行為も禁止」

「ぐっ、それは滞在国の法律に準じればよろしいでしょうか?」

「法律か……」


 判断が難しいな。償いに行く国の法律を守らせれば大きなことは出来ないと思うけど、こいつなら法の穴を縫って何でもできそうだ。


「基本的にはその国の法律に従ってもらえればいいけど、違法にならなくても道徳的にダメそうな行為は禁止だ。償いが終わったら内容を説明してもらうから、その時に俺が納得できるような行動を心掛けてくれ」

「なるほど……わかりました。その任務、完璧にやり遂げてみせます!」


 まずは各国の法律と日本の道徳観念を学ぶ必要がありますね……と呟いていたため、やる気は充分のようだ。


『早く解放しよう。目が怖い』

『うむ。危険はないだろうが、謎の狂気を感じるな。早く距離を置いた方がいいだろう』


 ジャスパの処遇をすぐさま紅さんへ報告し、解放することとなった。

 納得していない部下の方々も居たが、紅さんはジャスパの狂気じみた執着心を理解しているため、不満を持つ部下の方々の説得もしてくれた。ありがたい。


「というわけで、償いが終わるまで戻ってくるな」

「畏まりました!あの、師しょ……結城殿。不躾なお願いだということは分かっているのですが、旅立つ前にもう一度、本物の魔術(リアルマジック)を見せて頂くことはできますでしょうか?」

本物の魔術(リアルマジック)か」


 正確には魔術ではなくクロの能力なのだが、説明も面倒なので訂正はしていない。

 周囲には紅さんも部下の人たちもいないし、ジャスパのモチベーションを維持させるためにも少しくらいは見せておいたほうがいいか。


「はい、こんな感じで良いか?」

「うおおおおおおおおお!!こ、このようなこともできるのですね!」


 トランプサイズの結界を作り出し、表面にスペードのキングの模様を浮き上がらせた。

 ふっふっふ、日々のトレーニングによって結界は様々な形に変形できるのだ。ウルが近くにいると強制的に分厚く強靭な結界になってしまうが、1人の時はこのような繊細な模様の結界も作り出せるのである。


「必ずや結城殿の弟子になって、本物の魔術(リアルマジック)を習得してみせます!すぐに償いを終えて、必ずや連絡させていただきますので!」

「あ、いや、償いはゆっくりでいいよ」

「それでは、行ってまいります!」


 ジャスパはそう意気込み、去っていった。


「あ、連絡先も家の住所も教えてないけど、償いを終えたらどうやって連絡を取るつもりなんだろ?」

『まぁ、いいのではないか?あの様子なら償いはしっかりと行うだろう。それに、これっきりの関係だったなら、それはそれで構わないと思うぞ』

「たしかに、それもそうだな」


 クロとそんな雑談を繰り広げていると、ディエスやソージ達が事後処理を終えて戻ってきた。リサ先輩も無事なようだ。

 

「結城くん、お母さんとディエスから活躍は聞いたわ。ディエス達に的確な助言をしてくれたり、今回の事件の主犯格の1人を倒してくれたんだよね。本当にありがとう」

「私からも改めてお礼を言わせてもらうわ。娘の救出に協力してくれて本当にありがとうね」

「いえ、大した事はしてないので、頭を上げてください」


 リサ先輩と紅さんに頭を下げられると罪悪感がより一層強まる。謙遜とかではなく、本当に俺は何もやってないのだ。

 「さすが結城さんっす!」みたいなキラキラした目でソージも見てくるが、眩しくて目を合わせられない。本当に何もしてないんです!ごめんなさい!


「今回の借りは必ず返すんで、何かあったら遠慮なく言って欲しいっす」


 周りには聞こえない声で、ディエスにもそうお礼を言われた。

 ディエスから異能の使い方と武術を習っている時も思ったが、こいつはマジで化け物だ。

 神様からの強化で素の筋力は俺の方が強く、神様のミラクルパワーの影響で『強化』の出力も俺の方が上なのだが、訓練中は一度も勝てなかったのである。雫さんを助けた時は相当油断していたということが、嫌と言うほどわかった。

 そんなディエスへの貸しか、大切に使おう。俺は何もしてないけど。あと、ディエスに渡した身代わり札はそのままあげることにした。


「結城さん、『身代わり札』本当にありがとうございました。マジでこれが無かったら死んでました」

「それ、残りは返さなくて良いよ。追加で渡しておくから、雫さんとアカリさんにも持たせておいて」


 ソージが身代わり札の余りを返してこようとしたので、ディエスと同じくそれはあげることにした。さらに、追加で俺の持っていた10枚を渡しておいた。


「えっ!?いやいやいや、陰陽術ってよく知らないっすけど、これって絶対ヤバい物ですよね」

「大丈夫。うちに沢山あるから、それくらいなら全然問題ないよ」


 ソージが改めて感謝してくるが、こちらこそ申し訳ない。異能組織から狙われているのなら、むしろもっと早く渡してあげればよかった。

 でも、身代わり札ってこんな気軽に渡して良いものなのだろうか?なんか心配になってきた。あとで委員長のお父さんに聞いてみるかな。


「リン、がんばった!」

「カカーカ!」


 ソージと話しているとリンとシロが駆け寄ってきた。

 2人の活躍はディエスから聞いている。

 アジトの原型はかろうじて保っていたが、内部の通路は倒壊寸前なレベルまで斬り裂かれており、敵が保管していた武装や車両は元の形が分からないほどグシャグシャに丸められていたらしい。

 お陰で、現場に駆けつけた応援部隊の人たちは大混乱だったそうだが、全部ディエスがやりましたという事で無理矢理話を収めたそうだ。

 これは、褒めて良いことなのか……?


「リン、がんばった!たてもの、くずれなかった!」

「カカーカ!カーカ!」

「……リンもシロも、よく頑張ったな」


 そう言いながら2人の頭を撫でてあげる。

 だって、2人の褒めて欲しそうなキラキラした目を見たら、そりゃ無理だよね。というか俺何もやってないから何も言えないもん。

 今日は目一杯褒めてあげよう。


『ご主人様ー!なんかニアっちが急に変になった!』

『変になった?』


 リンとシロの頭を撫で回していると、ウルが不穏なことを言いながらニアを抱えて飛んできた。

 ニアが震えてる。いや、焦っているのか。なんだ?どうしたんだ?


『マママ、マスター……チョット、イイデスカ?』

『いいけど、ニアがそんなに焦るなんて珍しいな。いったいどうしたんだ?』

『マスターノオ母様カラメールガ来テオリマシテ、不穏ナタイトルナノデ、動揺シテシマイマシタ……』

『母さんからのメール?わかった、取り敢えず見せてくれ』


 スマホ形態のニアを操作してメールを開いて見てみるとーーーーーー




差出人:母さん

件名:お父さんと離婚するかもしれません。

本文:

 慣れない土地での高校生活大変なのに、急にこんな連絡してごめんね。

 でも、とても大切な話だから報告させていただきました。


 件名にもある通り、お父さんと離婚するかもしれません。

 お父さんに隠し子が居ることが分かって、今は話し合いの最中です。

 こうくんにも関わる話だから、できれば家族みんなで顔を合わせて話し合いたいと思っています。

 近いうちに帰って来れますか?

 難しいようなら休みを合わせて私達が札幌の家に行きます。





ーーーーーーえっ?離婚?



「更新復活おめでとう」や「ワンピースのネタバレ……w」などなど、皆さんからの温かい感想がとても励みになっております!

本当にありがとうございますm(_ _)m


マメな人間ではないので全員へ返信コメントを書けておりませんが、しっかりと全て読ませていただいておりますm(_ _)m

今後ともよろしくお願いいたします!m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
お父さんボッコボコになってそうです リンちゃんみたら溜飲が下がりそう 娘が欲しかったとか言って!
あっ戸籍改竄…
[良い点] 隠し子…?あっ...(察し)……い、一体誰のことだろうなぁ(棒)
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