74話「なんだ…このプレッシャーは?」
今更ながらTwitterを始めました。
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ユーザー名: @animekasitai
アカウント名:タンサン
湯呑みに炭酸の被り物した変なキャラが浸かっているアイコンです。
「リンちゃん、心配しなくても大丈夫だからね。絶対にディエスが助けに来てくれるからっ」
「んー、わかったー」
逃げられないよう両手と両足を結ばれた状態で護送車の後部座席に寝かされている花園リサとリン。
リサはリンを不安にさせないよう気丈に振る舞いながら、車内で優しく声をかけ続けていた。そんな中、リンはこの状況下で静かに悩み続けていた。
(む〜、刀とられちゃったけど、このお姉さんがいるからとりかえせないし……でも返してもらいたい〜)
車を運転するトウジョウを睨みながらリンは考える。
(この子がいるから紐も車もかんたんにきれるけど……お姉さんにもこのおじさんにも見られちゃダメだし、見られちゃったらシロにきっとおこられちゃうし、どうしよう?)
車両の後方から追跡しているシロの霊力を感じ取ったリンは、もどかしい気持ちのまま自身がどう動けば良いのかをひたすらに考えていた。
普段から幸助とクロとシロに能力を一般人に見られてはいけないと言い付けられていたため、リンはその言いつけを守り身動きが取れない状況なのだ。
(ん〜、のうりょくが見られないようにこのお姉さんをたすけて、刀もかえしてもらえばいいから……あ!見られてないときにきればいいんだ!)
リンがこの子と呼ぶ存在を刀へ変化させ、縄を斬り、衝撃波でトウジョウを気絶させ、車を走行不能な程度に斬る。
約2秒弱で全ての工程を終えられると考えたリンは、トウジョウとリサが同時に自身から意識を逸らす瞬間を見逃さないよう、リサに気を配りつつ運転席にいるトウジョウを睨み続けるのだった。
◇
(なんだ……このプレッシャーは?)
トウジョウは謎の緊張を感じ、頬に一筋の汗を流しながら車を走らせていた。
(中東で敵の罠に掛かった時のような……一歩間違えれば命を落としかねない、追い詰められた時の感覚。プレッシャーの出所は、白い刀を持っていたこの少女か?いや、他の所からもプレッシャーを感じる。分からん、分からんが、気の抜けない状況なのは確かだな)
トウジョウは目の前の状況と一致していない自身の感覚に戸惑いながらも、冷静に状況を分析し続ける。
(くっ、またこの感覚か、一体どういう事だ?)
時折後部座席の様子を伺うと、まるでこちらの隙を伺うような視線を向け続ける白髪の少女と目が合う。その度に、戦地で死闘を繰り広げたエース級の兵士達と対峙したかのような妙な感覚に陥り、トウジョウの戸惑いは深まっていった。
(どう見てもただの子供、俺が本気を出すまでも無くひねり潰せる存在……の筈だが、なんだこの奇妙な感覚は、油断できん)
常人の域を超えているトウジョウの危機察知能力。今まで数多くの死線をこの能力でくぐり抜けてきたトウジョウは、自身の感覚に絶対の信頼を置いていた……だが、その信頼が揺らぐほどの状況に激しい動揺を感じていたのだった。
(まぁいい、考えても分からん事に時間を割く必要はない。やる事は変わらん。事が終わるまで花園リサを見張り、救出に来た花園紅の部下は制圧する。それだけだ)
そう考えたトウジョウはアクセルを踏む足に力を入れる。
「それにしても、今日は外が騒がしいな……」
上空を飛び交うカラスの群れを横目にそう呟きながら、トウジョウはアジトへと車を走らせるのだった。
◇
「カー……」
車からアジトの中へと運び込まれるリンと花園リサの姿を、シロは電柱に留まりながら不安げな表情で見つめていた。
「カカーカ……」
リンが心配だ……。そう呟くシロの真意はリンの身に何かが起きる事ではなく、リンが状況を打破するために取り返しのつかない事態を引き起こす可能性についての心配であった。
先の戦闘で敵の装備と実力を把握しているシロには、リンの状況が危険だとは思えなかったのである。
「カカー……?」
それよりも、リンと重なる謎の気配。その存在をシロは気にかけていた。
敵意は感じないが、幸助やクロに似た強大な気配。車の走行中にリンの側から突如として現れたその気配をシロは警戒していた。
「カカーカ……」
今は情報の収集に努めるしかないか……。
そう呟いたシロの声に反応し、周囲の街路樹や電線に留まっていたカラスが一斉に飛び立った。
空を黒く染めるほどのカラスの大群が、トウジョウが潜伏するアジトの周囲を飛び交う。
まるで、そこにいる者にこれから起こるであろう不吉を暗示するかのように。
前置きが長くなりすぎました。
次回から1人ずつ仕留め……解決していきます。