71話「目の下のクマ凄い」
長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。
だいぶ期間が空いてしまったので、補足としてキャラ説明を少々。
◯ロイド
花園紅の専属護衛。護衛の中でもトップクラスの実力を持つ精鋭部隊の1人。バイト面接時に幸助の実力を測ろうとして即座に気絶させられたが、ちゃんと強い。幸助がぶっ飛んでるだけ。
◯初老黒服さん
ロイドと同じ精鋭部隊の1人。すすきのの一等地に立つ高級キャバクラの警護主任。一時的に幸助の教育係を担当。幸助の放ったおそろしく速いアッパーカットが見えるくらいの実力。相当強い。
「結城さん、おはようございます……」
「おはようソージ。大丈夫か?目の下のクマ凄いぞ」
「大丈夫です……これぐらいで弱音吐いてちゃ、強くはなれないんで」
今日は土曜で学校は休みなため、朝からソージと待ち合わせをして一緒に出勤している。
バイトを始めてからすでに10日が経ち、俺もソージもだいぶ仕事には慣れてきた。
ソージも俺と同じくバイト初日からその実力を認められ、通常のバイトとは違う配属先で活躍している。今は紅さんの親友で、『グレートアルティメットやよい』さんという名前も見た目も濃いめの経営者さんのところで働いているようだ。
「はぁ……」
「やよいさんのところ、だいぶキツそうだな」
第一印象は軍隊の教官のような容姿をしたやよいさんだが、心は女性でありその部下の方々も同じ思いを持った人達が多い。
そして、物言いはぶっきらぼうだが根は真面目で実力のあるソージは、やよいさんと部下の方々からとても気に入られており、それに関する業務以外の気疲れが溜まっているようだ。
「根はみんな良い人たちなんすけどね……俺が厄介な客追い払うと、感謝のハグとか言いながら体弄ってくるのはマジでやめてほしいっす。あと、やよいさんからは暇な時間に軍用格闘術教えてもらってるんすけど、隙があると寝技に持ち込まれて体弄られるのも、やめて欲しいっすね」
「それは……大変だな」
それでも、やよいさんとの訓練は別の意味で追い込まれるため、上達速度が速くなるのはありがたいらしい。
ソージも苦労しているんだな。
「そういえば、軍用格闘術って事はやよいさんやっぱり軍人だったんだな」
「多分そうです。どこで習ったかは教えてくれないんすけど、やよいさんプロ並みの軍用格闘術使えるんですよ。寝技だけならディエスより強いかもしれないです。他にも、銃弾躱す訓練とか言いながらヌルヌルの液体入った水鉄砲でひたすら狙われ続けたり、銃はただの速い槍とか言いながら振動する変な棒でクソ速い突き連打されるのは精神的にもキツいっすけど、めちゃくちゃ為にはなるんすよね……」
「おお……」
やよいさんの格闘術には興味があるけど、体弄られてまで学ぶ覚悟はないな。あとでソージに教えてもらおう。
そんなことを話しているうちに紅さんの経営するオフィスビルへ到着した。
「おはようございまーす」
「おはようございます。ん?」
仕事前に集まる待機室へ行くと、すでに護衛の人達が全員揃っていた。その中心には紅さんと異様なほど真面目な表情で待機しているディエスもいる。なにやらただならぬ雰囲気だ。
「あの、何かあったんですか?」
「おはよう2人とも。ちょうど良かったわ。これから重要な話し合いをする予定だったの」
重要な話し合い?いつも仕事前は10分ほどのミーティングが行われるのだがそれとは違うようだ。やはり何かあったみたいだな。
「リサが、攫われたわ」
「「!!?」」
冷静な態度でそう告げた紅さんの言葉に、俺とソージは驚愕を示す。
護衛の人達や職員の方々はすでに知っていたようで驚いている人は誰もいない。悔しそうな表情で俯いている人や怒りで表情の硬い人ばかりだ。
「犯人は蛭害の部下のトウジョウという男の可能性が高いわ。リサにつけていた護衛の1人が一瞬だけ姿を見たらしいの」
「護衛がいるタイミングで攫われたんですか?」
「そうよ。護衛につけていた5人は精鋭部隊なのだけど、全員気絶させられていたわ。そのトウジョウという男たった1人にね」
紅さんに雇われている護衛の方々はとても優秀だ。その中でも、ロイドさんや初老黒服さんクラスの精鋭部隊は何か特殊能力でも使っているのかと思うくらい強い。
習得能力があるので負けることは無いが、神様に強化してもらった身体能力だけではおそらく勝てない。それほどに熟練した戦闘技術を持っているのだ。
ちなみに、現場には銃撃痕や爆薬の跡も残っていたそうだが気絶させられた全員は軽傷らしく命に別状はないそうだ。奇跡だな。
「そのトウジョウとかいうやつ、異能者ですかね?ただの人間だとしたら化け物っすよ」
「まだ分からないな。情報が少なすぎる。というか、銃撃あったのに軽傷で済んだ護衛の人たちも化け物だな」
「たしかにそうっすね」
小声で問いかけてくるソージにそう答えた。
異能者でも術師でもない普通の人間だとしたら互いにとんでもない強さだ。目的はやはり、すすきのの覇権か?だとすれば人質は大切にする筈だけど悠長な事は言ってられないな。リサ先輩が心配だ。
「紅さん、蛭害のところに向かわせて欲しいっす。すぐにリサさん救出してくるんで」
「ダメよディエス。リサが蛭害のところにいるかも分からないし、そもそも蛭害が何処にいるかもまだ判明していないわ」
早朝に事件が起こってから、リサ先輩の居場所どころか蛭害の潜伏場所もまだ発見できていないらしい。
「大丈夫っす。蛭害の経営している店片っ端から潰してくんで」
「ダメだディエス。そんな事をすれば蛭害がどんな手に出てくるかわからない」
「じゃあこのまま待てって言うんすか!!」
「ちょっ、ディエス落ち着けって!」
ロイドさんに掴みかかる勢いで迫ろうとしていたディエスを俺とソージが止める。
流石に掴みかかる気は無かったようだが、凄い気迫だ。気楽そうな顔をしている普段のディエスからは想像もつかないほど真剣な表情で悔しさをあらわにしている。
「ディエス落ち着けって、そんな事をすれば逆にリサ先輩が危険だ。状況が悪くなるだけだぞ」
「だが、くっ……」
ディエスは浮浪者として生活しているところをリサ先輩に見つけてもらい、今の生活を手に入れた。
この生活を与えてくれた紅さんときっかけを与えてくれたリサ先輩に大恩を感じているようで、護衛の腕を見込んでくれたリサ先輩を守れなかった事に誰よりも責任を感じているらしい。
『とりあえずニア、ハッキング仕掛けてもいいから何とかしてリサ先輩を探してくれ。できるか?』
『可能デス。ソレデハ市内ノ監視カメラニハッキングヲ行イマス』
霊力糸を通してニアにそう指示を出した。カメラのないところに連れていかれたら厄介だが、ニアなら痕跡くらいは見つけられるだろう。
「ん?あれは結城くん家の黒猫くんではないかい?」
「え?」
初老黒服さんにそう言われて扉の方を見ると、クロが部屋の中に入ってきていた。あれ?シロとリンはどうしたんだ?
というか、俺より先に出発してた筈だからすでにビルの別室にいるものだと思っていた。
『すまん。リンが攫われた』
『えっ?』
霊力糸を通してクロがそう報告してきた。
リサ先輩に続いてリンも攫われるって……どうゆうこと?札幌物騒すぎない?
何度も何度も、何の報告もなく更新を中断してしまい本当に申し訳ございませんでした。
現実の忙しさから解放されたので、更新を再開します!
今後作品の更新に関わる問題が起きた際は活動報告に書かせていただきますので、暇な時にでも気にしていただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします!