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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第三章「魔術編」
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54話「3対3」




「あっぶな。状況はよくわからないけど、ギリギリだったみたいだね」

「結城さん!」

「結城さんなのです!?」


 アウルちゃんと潤奈ちゃんを守るように『三重結界』で骸骨巨人と龍の攻撃を受け止めたのだが、本当に間一髪だった。

 ニアがうまく制御してくれたお陰でいつもの『三重結界』が発動できたのだが、1枚目が砕かれて2枚目にヒビが入っている。連撃を防ぐのは無理だな。

 

「それにしても、本当にどういう状況?委員長がいるのはわかるけど、なんでソージ達まで……っていうかみんな無事なのか?」

『バイタル正常。眠ッテイルダケノヨウデス』

『おお、ありがとニア』


 ニアの診断結果なら間違い無いだろう。ソージ達が参戦している理由は分からないが、状況的に目の前の黒ドレスと戦って眠らされた感じだろうな。レクリエーションに参加しているみんなが呆然としている原因も、おそらくこの黒ドレスだろう。精神干渉系の能力だとしたら、厄介だな。


「あなたは、結城幸助ね」

「えっ、はい。そうですけど……」


 黒ドレスさんが急に話しかけてきた。はじめましてだと思ったのだが、会ったことあったっけ?こんな黒ドレス着た知り合いは居ない気がするのだが……。


「あなたには本当に感謝しているわ。私の計画を邪魔してくれたお陰で、これほどの力を私は手に入れられたのだから。お礼に、あなたにも安らかな眠りをプレゼントするわね『眠りなさい』」

「「結城さん!」」


 2人が絶望的な表情で俺を見ている。

 なにかとてつもない攻撃が来るのかもしれない。いつでも三重結界を発動できるように全力で備えておく。


「あら?」

「「えっ……?」」

「え、なに?」


 アウルちゃんと潤奈ちゃんだけでなく、黒ドレスも不思議そうな顔をしている。


「耳が遠いのかしら?『平伏しなさい』!」

「いや、聞こえてますし、いやですけど……」


 平伏するとかどんなプレイだよ。さっきまで戦闘があったからか、地面は濡れてグシャグシャになっている。尚更嫌だ。


「私の命令が、効かない……?」

「いや、知らない人の命令なんて普通聞かないでしょ」


 黒ドレスが何故かパニックに陥っているので、今のうちに気絶している委員長達の安全確保をしておこう。


「『玩具』。人形達、これを委員長達に貼ったあと一か所に集めてくれ。」


 『玩具』によって作り出した土人形に隠し持っていた『身代り札』を渡し、委員長達に貼ってもらいながらアウルちゃんと潤奈ちゃんの近くに集めてもらう。


「念のために2人もこれ貼っておいて」

「これは、何なのです?」

「これ、身代り札じゃないですか!!」


 アウルちゃんは知らないようなので、説明は潤奈ちゃんに任せよう。

 家から持ってきた『身代り札』は11枚。委員長達4人と不良達4人、アウルちゃん潤奈ちゃんの2人と俺の分でちょうど無くなった。ニアとウルには常に持たせているため問題ないだろう。

 見つかったら滝川にいじられると思って少なめに持ってきたのが失敗だったな。


「まぁいいか、これで心置きなく戦える」


 みんなを囲うように三重結界を張り、目の前の黒ドレスに集中する。

 土人形達も結界の中だ。万が一結界が破られた時には、土人形達に委員長達を守ってもらう。


「命令が効かないなら仕方ないわね。龍王、黄金巨兵(ゴーガン)、彼を倒しなさい」

「『溶解』!『三重結界』!」


 『溶解』の異能で骸骨巨人の足下を溶かして体勢を崩し、『三重結界』で龍の突進を防いだ。


「初撃はなんとか凌げたな」

「術者ヲ倒セレバ楽デスガ、コノ状況デハ先ニ巨人ト龍ヲ倒ス必要ガアリソウデスネ」

「大丈夫大丈夫!3対3だし、なんとかなるよ!」


 3対3て、俺とニアとウルVS黒ドレスと龍と巨人か。

 見た目の戦力差とんでもないな。


「あ、こっちも同じ術で龍とか出せばいいのか」


 『無上・黄金巨兵グレイテスト・ゴーガン』はすでに習得しているし、『無上・龍王顕現』は今習得した。


「詠唱詠唱……うおっ!」

「ご主人様ナイス回避!」


 詠唱しようと思ったら木の槍が飛んできて中断させられた。

 ウルを通せば札や詠唱を省略して術を使えるのだが、『無上』と付くこの2つの術だけは別らしい。

 早口でも2分くらいかかる。隙が大きすぎるな。


「諦めよう、『玩具』!」

「僕モサポートシマス」


 骸骨巨人に匹敵する大きさの土人形を2体作り、ニアが霊力糸を接続する。


「一瞬でこんなに巨大なゴーレムを、凄いのです」

「まるで大怪獣バトルね」


 どちらかというとロボットバトルっぽいな。

 ニアの操作技術は凄いが、土人形の表面が徐々に削られている。耐久力と破壊力は龍と骸骨巨人の方が格段に上らしい。長くは保たなそうだ。


「ニア、どれくらい時間稼げる?」

「申シ訳ゴザイマセン。保ッテ数分トイッタ所デス」

「充分だ。『散炎弾』!」


 ウルのお陰で腕と足に術式を書かなくても散炎弾さんは発動できるのだ。

 散炎弾さんだけはニアに頼らずとも威力の調整がきく。足裏で発動した『散炎弾』によって、高速で黒ドレスへと接近する。


「彼を拘束しなさい!」

「『炎焼燃壁』『炎焼燃壁』!『散炎弾』『散炎弾』!」


 周囲から迫り来る枝の槍や蔦の鞭を炎の壁で防ぎ、地中から飛び出してくる土壁や石の礫は散炎弾さんで迎撃しつつ躱す。


「くっ、龍王!黄金巨兵(ゴーガン)!」

「サセマセン!」


 龍と巨人が俺に狙いを定めるが、ニアの操る巨大土人形のタックルで森の奥へと消えていった。


「わ、『私に従いなさい』!」

「嫌だ!」


 黒ドレスの眼前まで接近し、拳を握りしめる。拳を躱そうと体を逸らしているが、そんな素人回避じゃ俺の目は振り切れない!

 狙うは顎下。撫でるように、振り抜く!


「男女平等拳!」


 決まった!と思ったのだが……あれ?なんだこの感触?ゴムタイヤ?

 見ると、俺の拳は見えない何かに止められ、黒ドレスの顎下へは届いていない。


「今の命令はあなたへではないわ。周囲の空気へ命令したの」

「空気の壁ってことか、強すぎない?」


 そう呟いた直後。暴風に吹き飛ばされ、委員長達を守るために張った三重結界へと叩きつけられた。

 痛い。体よりもウルが掴んでいる髪の部分が一番痛い。

 

「ご主人様、大丈夫?」

「ああ、身代り札のお陰で怪我はすぐに治った。ウルとニアは大丈夫か?」

「私はご主人様の髪掴んでたから平気ー!何本か抜けちゃったけど……」

「こいつ……」

「マスター、ボクモ無事デス。シカシ、土人形ハ破壊サレテシマイマシタ」

「マジか」

 

 ドシドシと地面を揺らしながら、龍と骸骨巨人が戻ってきた。

 これで振り出しか。いや、手の内を晒した上に身代り札も発動したから、状況は少し悪くなったな。


「結城さん、私が時間を稼ぐのです。その隙にみんなを抱えて逃げて欲しいのです」

「アウルだけ残しては行けないわ。私も残ります。それに、本来この戦いは私とアウルが対処するべき戦いです。なので、ここからは私たちに任せてください」

「うーん……2人には勝てる算段はあるの?」

「無いですけど、時間は稼いで見せます!」

「魔力も少しだけ回復したのです、ただではやられないのです!」


 三重結界の中からアウルちゃんと潤奈ちゃんが熱く語りかけてくるが、それはちょっと許可できない。

 というか、2人にそこまでの覚悟を決めさせてしまうとは……反省だな。


「2人ともごめんね。大丈夫、本気でいくから」


 不安を与えるような戦い方はもうやめよう。さっさと終わりにしてレクリエーションの続きをしなければ。


「ニア、ウル、あれをやろう」

「了解デス」

「ふっふっふ、切り札だね!」


 俺が形をイメージし、ウルが自然界から莫大な魔力を集め、ニアがそれを制御する。

 先ほどの練習では3分くらいしか形を保てなかったが、それだけあれば充分だろう。


「龍王!黄金巨兵(ゴーガン)!彼を止めなさい!」


 何かを察した黒ドレスが慌てて命令を下している。察しがいいな。だが、少し遅い。

 龍の尾と巨人の拳が迫る中、俺は手元に現れた小刀をゆっくりと振るう。


「『神の小刀(カムイマキリ)』」


 切っ先が尾と拳を掠めた瞬間、龍と骸骨巨人は粉々に砕け散り、霧散した。


 

 

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