18話『幼女の服/尻尾がニュルニュル』
キャラクター紹介ではなく、申し訳ありません。おまけとして書いていたのですが、長くなったので幕間として上げました。
楽しんでいただけると幸いです。
「本日は、婦人服店へみんなでお買い物に行こうと思います」
「なぜ、婦人服店へ?」
クロの疑問はもっともだ。
理由は、幼女の服を買うためである。
今は俺の服を着せているが、さすがにサイズが合わない。ダボダボだ。召喚時に着ていた白装束はあるのだが、それ一着では今後困るだろう。
「なので、服を買いに行こうと思います」
「了解した」
「カー!」
「……!」
みんな納得してくれたらしい。
ちなみに、下調べは既に終えている。
ウチから100メートルほど先にある婦人服店には、なぜか子供服も置いてあるのだ。そして、店長は無口なので、ダボダボ服の幼女を連れていっても必要以上に絡まれる心配はない。試着もご自由にし放題だ。
「よし、接続!」
「カー!」
霊力糸によってカラスと繋がり、視界を共有する。ふむふむ、周辺にウチの高校の生徒はいないようだな。
「カー」
「地面の振動を超音波で確認したが、建物の影にも学生は居ない。と言っておるぞ」
「振動?超音波?なにその機能!?」
そんな技まで持っていたのか。というか、クロはカラスの言葉が分かるんだな。
まぁいっか、それよりも今は服だ服。
「そういえば、なぜ隠れる必要があるのだ?高校の生徒がいようと、堂々としていれば良いのではないか?」
「クロは知らないだろうけど……俺、ちょっと前まで有名人だったんだよ」
凶悪犯を捕まえたスーパー高校生としてな。
「その噂が、最近やっと落ち着いてきたんだ。だから、できるだけ目立ちたくないんだよ」
あと、水上さんに見られたら、仮面の術師だっていうのもバレるしな。
「なるほど。そういう事ならば、是非とも協力しよう。カラスの通訳は任せてくれ」
おお!頼もしい!
その後は、寄り道したがる幼女さんを飴玉で誘導しつつ、無事に婦人服店まで辿り着いたのだったーーー
「……さて、帰るか」
「……うむ」
ーーー定休日だったけどな。
「あらあら、幸助くんじゃない」
「あ、イサさん」
家に戻る途中、隣の家に住むイサばあちゃんに会った。祖父母の幼馴染だった方だ。
「あら、可愛い娘だねぇ。でも、服がダボダボねぇ」
「この娘の服を買いに行ったんですけど、服屋さん閉まってたんですよ」
話を服の方へ逸らす。
「あらぁ〜。お下がりでよければ、いるかい?」
「えっ?」
「孫娘の服がねぇ。余ってるのよぉ」
えっ?
「いつか処分しようと思ってるんだけど、面倒でねぇ。貰って使ってくれるなら、服も喜ぶと思うのよぉ」
「是非ともいただきます!」
服のサイズもピッタリだ!
こうして、幼女さん用の服が無事に手に入ったのだった。しかも、俺の服より種類が多い。
「……!……!!」
大喜びの幼女さんは、ダンボール数個分の衣服を夜遅くまで漁っていた。
◇
「ただいま帰った」
扉を開け、クロが猫の集会から帰ってきた。
「おう、おかえり……って、あれ?今、どうやって扉開けたんだ!?」
「どうって、こうだが?」
黒い尻尾がニュルニュルと伸びてドアノブに絡みつき、扉を開けた。
なにその技、怖っ。
「それ、誰かに見られたりしてないよな?」
「もちろんだ。人目は気にしている」
まぁ、気にしてるなら……ん?まてよ?
「カラス!ちょっと来てくれ!」
呼ぶと、居間の引き戸を嘴で器用に開け、カラスがパタパタと歩いてきた。引き戸は……まぁいいか。
ちなみに、幼女さんはおコタでおねむだ。
「カラス、玄関の扉開けられるか?」
「カー!」
自信に満ちた鳴き声を響かせながら、カラスは羽ばたいた。そして、片足でドアノブに着地し、体重移動を駆使して簡単に扉を開けた。
「ありがとう。戻っていいぞ」
「カー!」
ドヤ顔でひと鳴きした後、カラスは居間へ戻っていった。
カラスもたまに外出していたが、こうやって出ていたのか。
「うん、猫用の入り口を付けよう。そうすれば、カラスも通れるだろ」
「いや、無くても儂らは大丈夫だぞ?」
「いや、付けます」
気を付けてるって言っても、万が一見られたら絶対騒がれるだろ。何と言おうと、入り口は付けます!
Amaz◯nを駆使し、必要な道具を揃え、Y◯uTubeを駆使し、必要以上のリフォーム技術を習得。
親からはこの家を好きにしていいと言われているので、遠慮なく改造させてもらった。
幼女さんにちょちょいと斬ってもらい、購入した扉を設置すると、無事に入り口は完成した。
「ふむ、悪くないな」
「カー!」
「だろ?」
注文から完成まで、全行程(工程)2日。工具合わせて3000円の出費となった。
次回がキャラクター紹介。その次こそが、第2章です。