第7章 8
8.
講堂には7人と、芽衣が残った。
「うぉー終わった…疲れた~」遠夜が椅子の背に仰向けにへたり込む。
「お疲れさん、よく頑張ったな」真人がねぎらった。
「どうなることかと思ったけど、上手くいって良かった」芽衣が宇航の後ろから抱きついて言った。
「隆一と正孝のお陰だ」宇航が芽衣の腕を優しく叩きながら言う。
「正孝さんってどんな人?」へたったまま遠夜が訊いた。
「うーん。職人気質の頑固な人。あんまし協調性はないわ。
手先が器用なαクラスにいる人で、自分を恃むところが篤いって感じ」
恭香が評する。
「そうそう。だからこの計画に乗るって聞いたとき驚いた。
そういうキャラクターじゃないと思ってたから」
悠美が言い添える。
「志望動機、凄かったけどな。驚いた。
遠夜もけちょんけちょんに貶されてたし」
真人がちょっと傷ついたように言う。
啓司は「まあ、遠夜の評価はあんなもんだよ。小さいころ、ほんっと悪ガキだったし」と嘆いて、遠夜は「うん、あんなもんだよ、トウキョウの大人から見たら」ケロッと言う。
どんなガキだったんだ…真人は呆れて遠夜を見た。
遠夜は、真人の視線に気づいてにやっと笑う。
「この計画も、俺がリーダーじゃなかったら、もっと人が集まってたかもな」
「さて…いよいよこれからだな。
レクリエーションと休日の話から始めるか」
遠夜が言って、皆は「そうだね」と頷いた。
「同時進行で、食料の自給自足の段取りを考えて少しずつでも実行していかなきゃな。
それから船のメンテナンス」
啓司が考えながら言う。
「メンテナンスと言えば、隆一がいてくれて、本当に助かるよ。
居なかったら、皆交代で夜間の操縦当番だ。
毎日普通に寝られて生活できて、コクピットを離れられるって凄いことだよ」
宇航が有り難い、と首を振る。
「ふうん。そうか。
隆一さんも役に立ってんだ」
遠夜が薄く笑って言った。
恭香が「遠夜、素直じゃないわね~」と遠夜の頬をつつく。
遠夜は恭香の手を取って、自分の頬にあてた。
「俺も少しは素直にならなきゃなあ…」
「隆一さんのさっきの演説凄かったなぁ。
よく聞いたらすごく良いこと、感動的なこと言ってるのに、ちっともそう聞こえなかった」真人が笑う。
「隆一は、とにかく口が悪いからね…
損してる部分もあると思うよ」悠美は考えながら評した。
啓司が頷いて言った。
「俺たちのこと、あんなふうに見ててくれてたんだな。
でっかい声で聴くのが苦痛なくらいだったけど、俺らをちゃんと認めて、かつ敬意を持ってくれてるみたいだった」
「正孝さんの援護射撃がとてもありがたかった。
中立的というより、どちらかといえば俺たちに反感持ってたみたいなのに、きちんと評価してくれた。
年の功で皆の気持ちをまとめて、俺たちに沿わせてくれたから。嬉しかったね」
貴彦が微笑んで言い、悠美が貴彦に寄り添って「そうね。本当に」と呟いた。
「もうさぁ、啓司、俺たちも早く彼女つくろうぜ!」寄り添うカップル3組を見て真人が嘆息した。
「ああ…でも地下大都市より全然数が少ないぞ」啓司も嘆く。
「え~、地下大都市で作っとけば良かったって話?20代くらいまでの若い女性いないの?」
「うーん、いないわけじゃないけど」啓司はタブレット端末で乗船者のリストを呼び出し、二人は熱心に覗き込んでいる。
他の6人は笑って「いい人いると良いね~」とからかった。
「なんだよその、上から目線!感じ悪う~」真人が恨めしそうに睨む。
遠夜は立ち上がって、恭香の肩を抱いて呟くように言葉を漏らす。
「啓司と貴彦と俺がいて、恭香と知り合って宇航を紹介してくれて、真人が地下大都市に来て悠美マジックでおとなしくなって。
特筆すべきことは何もない、別になんてことない関係だったはずなのに、こんなふうに7人で地下大都市をぶっ壊して、オーカミ医師がオペして隆一さんがサイボーグになってくれて、芽衣も合流して宇宙へ来ちゃったんだなぁ…」
「不思議な縁だよな。信じたことはないけれど、神様っているのかなと思うよ。
正孝さんが言った通り、俺は反体制的で異端児で、いつ廃棄になってもおかしくなかった。
そんな人間を信用してここまで来てくれてありがとう。
隆一さんも!聞いてんだろ?」遠夜は上を向いて呼ばわる。
『そんなでかい声で言わなくたって聞こえてるよ』隆一の声が響く。
あなたが言いますか…皆、心の中で突っ込んだ。
遠夜は小さく笑って続ける。
「まだこれから、きついこと辛いこと悲しいこといろいろあると思う。
でも俺たちなら力を合わせて絶対に乗り越えていける。
最期の時まで、一緒に。楽しくやっていこう」
8人は円陣を組み、手を重ね合わせた。
皆で笑って顔を見合わせ、せーの、で声を合わせる。
「FIGHT!」




