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第6章 2

2.


 「よし、皆揃ったな」遠夜は皆を見まわして言う。

 「やるべきことは頭に入ってると思うから、とりあえず先に言っとく。

 皆、今日までこんな滅茶苦茶な計画に付き合ってくれてありがとう。

 そしてこれからもよろしく。

 絶対に成功させて、宇宙に行くぞ!」


 7人で手を重ね合わせ「FIGHT!」と小声で叫ぶ。


 行政地区アドミニストレーションセクションの目の前に来ると、監視カメラが作動しだす前に真人が撃ち抜こうとして「大丈夫、もう止めてある」と遠夜が言った。

 「だからこれ、手で開けないといけないんだよね」と言って、皆を自動ドアを手で引っ張って両側に開けて、また閉める。

 

 「なんでこんなこと…すごく疲れるぞ」啓司が息を弾ませ文句を言う。

 「お前普段デスクワークしかしてないからだよ。

 さて、この中はさすがに電源落としてないんで。悠美、貴彦、頼んだ」

 「OK」


 悠美は貴彦と手をつないで、皆が通る時だけ廊下の監視カメラを無力化させながら突き進んでいく。

 「これ、後で見ても何も映ってないんだよね」真人が囁いた。

 

 「そろそろ、監視ロボットが巡回してくるな」遠夜が言って、悠美以外の6人はレイ・ガンを起動した。

 「監視ロボットには赤外線カメラが搭載されてる。気をつけろ」宇航が言った。


 監視ロボットは白色なので、薄暗がりのなかでやたら目立った。

 何でこんな色にしたんだろう…皆は思いながら、真人が前に出てロボットの動力源を過たずに撃ち抜きロボットは停止した。

 すかさず、恭香がロボットのカメラをインク弾で潰す。

 

 「おっなんだそれ、面白いなあ」真人が恭香にインク弾を分けてもらっている。

 それから3台の監視ロボットをやり過ごしたり停止させたりして、かなり奥まで入り込んだ。


 「さてこれからだ。悠美、そろそろだね?」遠夜が悠美に訊く。

 貴彦が集中している悠美の代わりに「うん。あと右折、左折で二手に分かれるよ」と答えた。

 自然と、別れたあとの3人・4人のグループになる。


 その時、遠くから人の足音や声が聞こえてきた。

 気づかれた!

 真人は「悠美、もういいよ。あと少しだから壊す」と言って、矢継ぎ早にかなり遠くまで監視カメラを撃ち抜いていった。

 「真人の視力凄い…」悠美が感心する。

 「遠視気味なんだよね元々。恭香に、俺のアイシールドには暗視機能も付けてもらったし」

 「えーなんだそれ、いいなあ」遠夜が文句を言う。


 「皆、恭香のイヤーカフはセットしたな?」遠夜が訊いて、皆が頷き音量を調節した。

 「ここで二手に分かれる。幸運を祈る」


 皆は一度がっちりと拳を握り合って左右それぞれに分かれた。

 

 右には、コンピュータルーム。

 遠夜・啓司・悠美・宇航が急ぎ足に進んでいく。


 「啓司って銃の腕前はどうなの?」遠夜が訊く。

 「一緒にVRもやったことないし知らなかったんだよね」

 啓司はしばらく無言だったがやがて「あまり期待しないでもらいたい」と言った。

 やっぱりね…

 遠夜は秘かにため息をつく。ゲーム嫌いだからかなと思ったけど、違ったんだ。


 予想に反して、宇航の射撃の腕前は最高だった。

 「すげえ!宇航、真人といい勝負だよ!」遠夜は興奮する。

 「私もゲームは好きでねえ。本当によく遊んでたよ」笑って宇航は言う。

 ああそんな気がする。悠美は思った。

 宇航が的を狙うときの表情、いたずら坊主のままだわ。


 監視カメラを壊し続けていると、監視ロボットの数が増えてきた。

 壁に埋め込まれた銃も作動し始める。


 「走るぞ!」と遠夜が言い、壁の銃を撃ち抜きながら走り出した。

 銃弾が徐々に数を増して皆の防弾スーツに衝撃が感じられるようになってきたころ、コンピュータルームの前に着いた。

 

  遠夜は「離れて!」と言って、足から別の銃を引き抜いた。

 「熱線銃?!」啓司が驚いて言う。

 「以前にここから逃げる時、扉の素材を見たんだ。樹脂製だった。レーザーガンと熱線銃でいけるだろう。毒ガスが出るから、皆口元シールドして」遠夜は言って「援護頼む」と言いざまに熱線銃の出力を最大にして扉を焼く。


 ドアのロックをどう解除するのかと思っていた啓司は、思い切り拍子抜けした。

 遠夜らしい…物理的にぶっ壊すか。

 見ると皆の顔も苦笑している。

 

 見た目は小さく華奢な熱線銃の威力はすさまじく、あっという間にドアは溶けた。

 中はさすがに耐火構造のようで、少し焦げたくらいのようだ。

 

 溶けた樹脂に気を付けながら中に入り込むと…太一が銃を構え、戦闘ロボットが並んでいた。

 げっと遠夜が呟く。


 「太一さん…用意が良いね?」遠夜が愛想良く言う。

 「お前らの不穏な動きは察知してたんだよ。俺は隆一のようにお前に甘くないんでね。

 隆一ときたら、本当に遠夜のことが可愛くて仕方ないみたいだった。

 遠夜が成人するまではここにいたいと言って、ものすごい無理してたんだ。

 だからお前がホストコンピュータに入り込んだ時に成人を1年早めると言ったのもそういう理由からだ」


 遠夜は宇航を背にかばうように移動して「…そうだったんだ…隆一さん、なんで死んじゃったの?本当に病気だったの?」と訊いた。

 「どういう意味だ?」太一がぴくりと反応する。いいぞ…遠夜は更に挑発する。

 「太一さんって、優秀すぎる隆一さんが邪魔っぽかったし。隆一さんがあまりにも長寿だったら、ずっとNO.2のままだもんね?」

 「俺が…隆一に何かしたと?」太一は遠夜をにらみつけて銃を構え直す。

 「嫌だなあ、そこまでは言ってないよ。太一さん良い人だもんね」

  

 「何だと?」と言ったところで、太一の身体からがくっと力が抜けた。

 「何を…」呟いて気を失って床に倒れこむ。

 すかさず遠夜と宇航、啓司でカメラを壊して回り、悠美は廊下以外の出入り口のロックを壊して出入りできなくする。

 

 「ほんと凄い腕だね、宇航」遠夜がスパコンのキーボードに触れ、ものすごいスピードで計画通りにシステムをダウンさせながら言う。

 「何したの?」悠美と啓司が、太一をロープでぐるぐる巻きにしながら訊いた。

 「麻酔銃を撃ったんですよ」と宇航は掌サイズの麻酔銃を一瞬かざして見せる。

 「射程距離が足りるかギリギリだったんですが…やり直しはできないし」

 宇航も遠夜と並んでモニターを凝視しながら、地下大都市トウキョウ、コウシュウ、ロンドン、シカゴ、ブラジリアの5大都市の中枢をダウンさせていく。


 「しかし、自分で準備したロープで縛られる羽目になるとは…可哀相なヤツ」啓司が太一を見下ろして言った。

 「太一はあたしたちを殺そうとは思ってなかったのね。戦闘ロボットにも命令は出してないみたいだし。すぐに無力化できた」悠美も膝をついたまま言った。

 

 中央セントラルの事務局の方のドアの外からはどんどんと激しく叩いている音がする。

 「太一!どうした?!」「何があった!」と怒鳴る声もする。

 監視カメラも動かず、中で何が起きているか判らない状態で突入もできないようで、遠夜と宇航は思っていたよりも時間をかけて、地下大都市が機能するのに最低限必要なライン以外のシステムをすべてダウンさせることができた。


 「よし。こっちはOKだ」遠夜は最後に、今朝部屋で書いたプログラムを時間指定で起動させると呟いた。

 「私の方も大丈夫ですよ」宇航が答える。


 ようやく扉の外からは、扉を物理的に壊す音が聞こえてきた。

 遠夜が今朝、機能停止の信号を送った戦闘ロボットも多数あったので、使える戦闘ロボットはすべて太一がここに揃えたらしく、銃で細々と壊しているようだ。

 ご苦労さん。皆は思った。


 「行くぞ。格納庫だ」遠夜が言って、また溶けた扉から出て元来た道を戻り始めた。

 監視カメラもすべてシステムダウンさせてので、堂々と走る。

 

 「あっちはどうなってる?」遠夜は恭香の作ったイヤーカフに向かって「そっちはどうだ?」と訊くが、返事がない。

 「何かあったかな…」宇航は心配そうに言う。

 「貴彦の精神波はキャッチできるわ。だけど…すごく焦ってる。良くない感じよ」

 悠美が言った。


 「人工子宮に行こう」遠夜が決断し、先ほど左右に分かれた廊下をまっすぐに人工子宮が置いてある部屋へ向かって、皆で走っていった。


 


 


 

 



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