1〜15歳の誕生日〜
ーある年の元旦
パタパタ、コンコン。
「神様! 」
走る音とドアをノックする音。
結われた黒髪と袖を揺らし、凛は走る。
「何じゃ、凛。入ってよいぞ」
ガチャ。
凛はドアを開けて部屋に入った。
「失礼します。月猫と太陽犬の子供が生まれましたことをご報告致します」
笑顔を輝かせ、凛はとても嬉しそうだった。
「おぉ! 生まれたか!!」
神様も目を輝かせている。
「はい! 先程そのように連絡がございました!」
「凛、報告ご苦労。祝いを持っていかなければならぬな」
「はいっ!! 」
凛は満面の笑みで返事をした。
「うむっ! 何がよいかのぉ…?」
「神様、もう一つご報告がございます」
「……? 」
神様は、キョトンとした顔をしている。
「月猫の方は姫、太陽犬の方は王子にございます」
「もしや……? 」
「はい。そのもしやでございます。特別種が生まれたようです」
「おぉ!!特別変異の子供たちか!」
神様は驚いていた。
「神様、お聞きしたいことがございます」
「何じゃ……? 」
「私、文献やお話は聞いたことがあるのですが……。特別種の子供たちとは何がどう違うのでしょう……? 」
凛は不思議そうに首をかしげている。
「凛が実際に会うのは、はじめてだったかのぉ? よし、じゃあ聞け凛よ」
「はい、神様」
「月猫と太陽犬は対となる存在じゃ。普通、月猫には雄が太陽犬には雌が生まれるようになっておる。
しかし不意にそうではなく突然変異として逆の性別が生まれてくることがある。それが特別種と呼ばれるのじゃ。
この子たちは、幼いながらも成人に匹敵する、またはそれ以上の力を持っておる。そして特殊能力などもな。どんなものかは、調べてみないとわからぬ。
でも言えることは、その子供たちはわしすら持てぬ恩恵さえも預かる貴重な存在いわば、神子じゃ。さあ凛、いくぞ」
「どこにですか!? 」
「決まっておるじゃろう?子供たちのところじゃ。子供たちの能力を調べるぞ。凛、手伝え」
「はいっ!!」
神様と凛は生まれて間もない子供たちのもとへ向かった。
ーそれから月日はたち…。
「ふわぁ〜。よく寝たましたぁ〜。今日も清々しい朝が来てくれたようですね。おはようございます。じぃ! あれ? じぃがいない……? どうしたのですかね……? 」
とりあえず、顔を洗おうと思い、起き上がって洗面所に行こうとしていると……
「桜姫様。おはようございます。お目覚めになられましたね。早くこちらにお召替えくださいませ。メイド様方よろしくお願いしますぞ」
とじぃはそれだけ言って何処かへ行ってしまった。
私は
「1人で準備できるので下がっていいですよ」
そう言ったのですが、メイド長に
「これは王様の命でもあります故、それはできません。それでは即急に準備いたします」
と言われてしまい…。結局メイドさん達に手伝わせてしまいました…。
今日で15歳になるというのに恥ずかしいです…。
私は桜というものです。猫なのですが、月猫という特別な種族です。王族の猫で、私は猫界の姫をしております。
今日1月1日は、私の誕生日なのです。月猫の15歳の誕生日は人生の中で大切な日の一つです(太陽犬もそうです)。
理由は月猫(太陽犬)は15歳になると成人とされます。誕生日は成人式をする日で、「人間界1年研修」の初日だからです。
そのため、さっきからじぃもメイドさんもとっても忙しそうなのです。
(はぅ……。今から1年間帰ってくることができないのですよね……)
原則として「人間界1年研修」では1年間ずっと人間界にいなくてはならないのです。
しかし、お父様とお母様は、王様・女王様としての仕事があるので、私が学校に行っている間は猫界に戻り、1日の仕事が終わったらお父様とお母様が帰ってくるという風に話し合いで決定しました。
家には基本、私と仲の良い「おんぷ」というメイドがいてくれてお手伝いをしてくれるそうです。
今までは、すごく楽しみにしていた「人間界1年研修」が、今ではとても不安です。
なぜ、今まで私は楽しみにしていたのか不思議でなりません…。
お待たせいたしました。前回プロローグのみを投稿したまま時間が経ってしまいました。これからも不定期に更新ですが、どうかよろしくお願いします。