3、ひかる鎌
笑っていた
どうして僕の周りには
感情表現の乏しい人格者しか居ないのだろうか
偏狭 トモエは、いつもふてくされていたし
三日月ヶ丘 青目高は、しゃべらないし
今日来た鍋頭は、心を顔に出さず、ただ、笑って、居た
僕だって、同じなのかもしれない
毎日、暇に、暇に、生きている
こんなことでもない限り、感情を表に出さないだろう
それは仕事柄なのか
それとも、もともといつの間にか、そうなるしかなかったのか
どちらにしても、僕だって、みんなと同じだったってことだ
・・いや、あいつ、そうだ、目の前の通子なら、あいつは・・・
そう思って、前を見た
相変わらず、こちらを見ていた
そうだ、彼女も、いつの間にか、落ち着いていたのだ
落ち着いて
「なあ、どうしてこんなことしたんだ」
僕は、奴に言っているにもかかわらず
通子は、先輩を手に持って
笑っている
何故か僕は、先輩に少し嫉妬しているようにも思えたが
「あなたがつまらなそうだったから」
そう言う言葉に、押し黙った、感情が、消えた
「つまらない・・?」
「面白かったでしょ」
「君は、自首したいかい」
僕は彼女を見て言う
守ろうとか
逃がそうとか
そう言う言葉とか
感情ではなく
僕の口から
そんな言葉が出ていた
「あなたに殺してほしいな」
彼女は、良く切れそうな、それで居て、上手く出来なければ、酷い事になりそうな輝る良く輝る鎌を、僕に木の取っ手の方を差し出した
「僕はどうすれば良い、この後どうすれば良い」
それは、僕が殺した後なのか
殺すかどうするかそれを、彼女に、聞いたのか
「大丈夫、血液が、抜けた死体に、別の血液を、まぶせば、それは、この世に存在しても、しなくても
どちらでもない死体となる、頭のない死体は、血を抜かれた後、別の血を、触れさせると、全く別のDNA構造に、なる
ノー・ネック・チキン・マジック、古くから、頭を、切られた、鶏肉を他の鳥と一緒に置いたあために、肉屋で発見された事実
しかし、それを人間でやろうなんて、誰も思わないでしょうね」
「ちょっと待て、もし殺すとして、何処にその血があるんだい」
「あなた、ここを見て頂戴、血しかないわ」
あたりは、ペンキ塗りに失敗したように、真っ赤である
「それじゃあ」
「でも、私は、あなたが良いわ」
「・・・本当に死にたいのかい」
「・・・ねえ、どうして三日月が丘さんは、鍋を食べたと思う」
「・・わからない」
「早いのね」
「・・・君は知っているのかい」
「鍋頭さんが、あなたの事を疑っていたのよ、二重人格者じゃないかって」
「どうして君がそれを知っているのだ」
彼女は、重いものを持つのに疲れたように、先輩を、机に置いてから
「すべて、青目高さんが、私に教えてくれたわ、あなたがいるせいで、数多くの人が、死ぬ
だから、あなたを、何者かが、殺そうとするって」
「そんな、それじゃあ、鍋頭が、僕を、殺そうとしたって言うのか」
「ええ、あの鍋には、睡眠薬が入っていた」
おかしいのでは無いだろうか
それでは、青目高先輩は、僕を庇うために、食べたと言うのか
それは、一億人の人を救う事よりも、僕を守った事ぐらい信じがたい
そんなバカなことをするくらいなら、あの先輩なら、鍋を、蹴っ飛ばせばいいではないか
「あなたは本当に馬鹿ね、ほんとうに
あなたは、もう、殺されることが、確定しているのよ
そのソフトを、あなたのファイルを、消すために、あそこに居る必要があった」
「それじゃあ、トモエさんや先輩、それ以外の人を殺す理由は」
「始めは、あなたの為だった
でも、それがいけなかった
あなたを殺すために、国が動き出した」
「そんな馬鹿な」
「あなたは、数億人を殺してしまう
それも自分ではなく
周りの人を、使って」
「・・・じゃあ、この派出所の皆は」
「ええ、死んでしまった、あなたを守るために」
「君は、死にたいのかい」
「いいえ、でも、私は強すぎるもの」
「・・・君が僕を殺せば、君は数億人を殺さなくても大丈夫なんじゃ」
「できると思う」
彼女は、僕を見た
これはすべて嘘である
僕は、何となく予想していた
人の死体は、頭が無くなれば、他のDNAと交ると別物になる
有り得ない
先輩が、僕を守る
有り得ない
トモエさんが、殺される
有り得ない
すべてに置いて、僕はとある仮説を立てた
それは、誰かが、彼女を、そそのかしたのではないかと言うことだ
彼女は、実にいい性格をしている
であるからにして
騙されやすいと言っても過言ではない
自分で言うのもなんであるが
実に何であるが
彼女は、僕に惚れているのかもしれない
だとしたら
何かしてしまうかもしれない
それこそ、僕のために・・・
「なあ、あのお茶の名前は、何なんだ」
すると彼女は、南丸と言った
「南丸」
それはよく知る緑茶だ
しかし知っている味ではない
どう言う事だ
ウミガメのスープみたいなことだったのか
彼は、二重人格者だ
ある時は、殺人者であり
ある時は警官であった
私は彼の殺人をいかに隠すかを
生涯の務めとしていた
正直、殺すよりも隠す方が大変だ
トモエさんを殺すよりも
隠す方が大変だった
正直隠せてなどいないのかもしれない
いや、隠さないからこそ隠していると言うべきだ
それもこれも全て
彼のためだ
彼のために
後輩は、馬鹿である
馬鹿だと気が付かないほどに馬鹿だ
苦手だと言う事に、気が付かず苦しむ
自分がひまだと言う事に気が付かない
自分が異常だと気が付かない
妹の幸せの為であれば
俺は、何でもするだろう
いつ、SFになったのか