新しい日常 幕間
下の娘から「紹介したい人がいる」と連絡がきて、本当に驚いた。まさかこんな日が来るなんて。
二人いる娘のうち、下の子はどちらかというと生真面目で、思い込むと頑固。だけど夢見がちなところもあって、人に期待されるとそれに応えられずにいられない子。
永さん──悠希にとっての父親が中学の時事故で亡くなり、それからひどく塞ぎ込んで、その時期にまた運の悪いことにあの子に原因の無いことでクラスメイトとの関係が拗れ、以前よりさらにアニメやゲームなどの世界にのめり込むようになった。
別にのめり込むこと自体は全然悪いことではない。絵を描いたり、何かを作ってみたり、夢中になれるものがあることで心のバランスを保っていたのだと思う。
そんな青春期を越えてあの子は、表向きには明るく当たり障りなく、でも深い関係を築くのは苦手な様子のままだった。
大学にあがってからはバイトも増やし、自由になるお金を全部趣味につぎ込んでいるのではと呆れたりしたが、オタク趣味を話す友人もいるようでとても楽しそうに過ごせているなと安堵していた。
数ヶ月前、帰ってきた悠希の様子がなんだかおかしいことに気がついた。その上身体には大きな傷痕までこさえて、血の気が引いて何があったのか問いただしたら『異世界に召喚されていた』なんて言うものだから、目が飛び出そうに驚いた。私の担当しているものにもそういう異世界系の話がたくさんあるけれど、まさかそんな、現実にそんなことが起きるなんて。
でも、その大型動物にでも引っかかれたり齧られたかに見える傷は、どう見てもこの現代社会では簡単につくものではない。去年家族で温泉に行ったときには絶対になかった、その古傷のような痕を見たら信じるしかなかった。
そんな傷ができるなんてとても怖い思いをしてきたんじゃないかと心配したが、同時に大事にしたい思い出もできたようだ。悠希は異世界であったことをほとんど話してはくれなかった。まあ身体も大丈夫そうだし、話したくなったらそのうちに教えてくれるかもしれないな。
そんな風に思っていたら。悠希からの「近い将来結婚したい人がいる、紹介したい」の報である。しかも、それが、件の異世界から追っかけて来たんだというんだから!!
悠希が異世界でどんな冒険をしてきたのか、どうして彼がこちらに来ることができたのか、疑問は尽きないけれど、わざわざ別の世界にまで来てくれたんだもの。あの子を大事にしてくれる人であるのを願うばかりだ。
──ピンポーン
玄関のチャイムが待ち望んだ来訪を告げる。
さて、どんな子が私の義理の息子になるのかしら。
わくわくしながらドアを開いた。




