第七幕 道化師と笑顔と女神
明けましておめでとうございます!
更新遅れてしまってすみませんでした。
えー、今現在俺は依頼主のごついおっさんと向き合っています。
「……わざわざ何の用だ。その様子だと、獲物はギルドに持って行ったんだろ」
「はい。もう、報酬ももらいました」
「じゃあ尚更だ。……俺に何の用がある」
「その前にひとつ確認を……。貴方の名前はガルクさんでよろしいですね」
「……なんで知っている」
うわ、めっちゃ目見開いてる……。怖いです、とても。
まあ、それは置いといてそろそろ本題に……。
「これ、貴方のですね?……いえ、正確には貴方の親族の方の物といった方がいいでしょうか」
「……っ!」
ちょっ!怖っ!さっきの五割増しくらい目見開いてます。
俺、ホラー映画嫌いなんだよ。
「どうぞ」
俺は、ネックレスを震えているガルクさんの手に乗せる。
「これを……どこで……」
「俺が、討伐したハウンドウルフの腹の中からです」
「腹の……中……」
しばらくの間はガルクさんが、ネックレスを握りしめ、目からは大粒の涙を零していた。
そして、しばらくするとガルクさんは静かに語り始めた。
「俺は元々、ギルドの依頼で生計を立てていたんだ。
ある日家に帰ったら、家の中は血まみれで……そこには妻と……娘が……」
最後の方は言葉になっていなかった。
「……ありがとうな、兄ちゃん」
「緋焔です。霧城 緋焔」
「……ありがとう。いくら礼を言っても言い切れん」
「気にしないでください。俺はただ、落し物を持ち主に返しただけですから」
俺は、にっこりと笑いそう言った。
「とは言ってもな……。そうだ!」
ガルクさんは俺にそこで待っているように伝え、家の中に駆け込んでいった。
しばらくして、布に巻かれた棒のようなものを持ってきて、俺に渡した。
「これは……?」
「俺が、昔使っていた剣だ。もう、使うことは無いと思って納屋の奥にしまいこんでいたが、手入れはしっかりしてある。受け取ってくれ」
「でも……。いえ、ありがたく使わせて頂きます」
俺がそう答えると、ガルクさんはにっこりと笑いこう言った。
「受けてくれたのがお前でよかった」
「いえ、見つかったのはただの偶然ですから」
「偶然でもなんでも……俺には犯人さえ見つけることは出来なかった……」
「……見てもよろしいですか?」
「ああ」
俺が巻いてあった布を慎重にほどくと、中からは短剣……とまではいかないが、短めの剣が出てきた。
刀身の根元辺りには何やら、言葉が掘られていたが、生憎俺には読めなかった。
しばらく俺たちは、世間話をしたり、剣の大まかな扱い方をガルクさんに教わっているうちに、日が暮れてしまった。
「もうこんな時間ですか。そろそろ、おいとまさせていただきます」
「なんだ、泊っていけばいいじゃねえか」
「いえ、一応居候の身なので」
「そうか……。縁があったら、また頼むな」
「ええ。こちらこそ」
俺は、フィアとマウの怒りを少しでも静めるために、ダッシュで帰った。
「疲れたー!」
俺は、ぐったりとベッドに倒れ込んだ。このモフモフ加減がなんとも……。
全速力で帰った俺は、案の定、二人から一時間弱の説教を受けるハメになった。
その上、晩御飯がスープのみって……。
「あ……駄目だ……。眠気……が……」
俺の意識は、まどろみの中へ沈んでいった……。
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…………あれ?
「ここどこだ?」
気が付くと俺がいたのは周囲が。いや、俺以外は真っ白な場所だった。
「……夢だな」
だってこんな所現実にあるわけ無いし。
「ピンポーン! 大正解。ここはあなたの夢の中でーす!」
……幻聴ですね。
早く夢覚めないかなー。
「幻聴とは酷いですね。私はちゃんといますよー」
気のせいだね。目をつぶってるから見えないけど、目の前から声が聞こえるなんて気のせい。
「ちゃんと目を開けて下さいー」
嫌です。
「仕方無いですねー。えっと、確か包丁がここらへんに……」
「分かったから!目開けるからストップ!」
俺が目を開けると目の前には、金髪少女が立っていた。
包丁をにぎりしめて。
「あ、やっと目を開けてくれましたねー。もうちょっとで、まぶたが無くなっちゃうところでしたー」
「………」
何なのかな、この子は。
手に持っている包丁がキラキラしているよ。
「えっと、君はだ……」
「はじめまして。神様ですー」
…………………………………はい?
「だからー、神様ですー!」
あれー?おかしいなー。白い粉なんて吸ってないのに、幻聴が聞こえるよー。
「分かりました。そこまで信じないなら、何か凄いことします」
金髪少女(自称:神様)はそういうと、両手を目一杯突き出して、むむーとうなっている。
……和む。
「たあぁ!」
俺が和んでいた時に金髪少女が耳がキーンとなるほど大声で叫ぶ。……が、何も起こらない。
「何にも起こらないね」
「ふふーん。あなたには分からないでしょう」
「いや、分からないも何も…」
「実は! 今ので、あなたの身長が1センチ伸びました!」
「……はぁ?」
いや、1センチとか言われてもそんな微妙な……。
「ふふふー。信じてませんねー」
「はい。全く」
俺は一秒もしない内に答える。これを即答と言う。
「うぅ……、そこまではっきり言われると悲しいですー。じゃあ……はい。身長を測るやつ」
と、どこからともなくそれを取り出す。てか、どこから出したし。
「名前ぐらい覚えておきましょうね」
俺はそのまま、身長を測る。……自分で読めない。
「あ、読んであげます。えっと……175センチ」
「一応伸びた……かな」
「そうでしょう。これで私が神様だって、分かりましたかー?」
ぶっちゃけ、信じられないのと半々だけど……。
「凄いですね! 本物の神様なんて!」
「てい!」
いきなり出て来た木の棒で殴られました。
めっちゃ痛い。……タンコブ出来てないかな。
「半々なんて考えてるのに、よくそんな演技が出来ますねー」
………あれ?俺って思ったこと口に出てた?
「出てませんよー」
ん〜……?口に出てないなら何で……そういえば、さっきから俺が思ったことを見通したような事ばかりだ……。
「もしかして……」
「やっと分かったですかー」
「俺は思ったことが顔に出るタイプなんじゃ……」
「いつまでボケ倒す気ですかー!」
金髪少女が叫んだのと、ほぼ同時。
鉄タライが降って来た。
「痛ってー!!」
いつの時代のコントですか。
めちゃくちゃ痛い。……頭へこんでないかな。
「天罰ですー。心を読んだり、何にも無いところから物を出したりしたのに全然信じてくれないですー」
「いや……。信じてない訳じゃないんだけど」
「分かってます。半々なんですよねー」
……またか。のぞき見なんて趣味の悪い。
「趣味じゃないですー。……って、そうじゃないですー! 用事があってきたのにすっかり忘れてたですー!」
「用事?」
「そうですー。あなたが別の世界に行ったら理由の話ですー」
「聞かせてもらいましょうか」
「はい、実はですねー。間違えちゃいました」
………………………………はいはいワロスワロス。
「ワロスじゃないです。本当ですー。本気と書いてマジと読みますー」
「うん、で? 君は俺と誰かを間違えて他の世界に飛ばしちゃったのかな?」
「はい! ホントはバッタを飛ばすつもりだったんですけど、間違えてあなたを飛ばしちゃいましたー」
さて、どうしてくれようか。
「ひうっ!」
「じゃあ、あの頭痛は何だったのかな? めちゃくちゃ痛かったんだけど」
「あ、多分流れに敏感だったんじゃないですかー?」
「流れに敏感?」
何の流れ何だよ。ドラ○ンボールじゃあるまいし。
「そんな感じですー。人によって魔力と呼んだり、氣と呼んだり、マナと呼んだり。
呼び方は様々ですが同じですー」
「ふーん。で? 帰る方法はあるの?」
「ありますよー。というか、神様の力がある人なら誰でも行き帰りできる上に力を持ってる人にくっついてれば、何処へでも行けますよー」
……今、帰せと言ったら帰してもらえるのかな。
「はい。夢から覚めれば帰れますよー」
「そう……」
「それじゃあ、善は急げですー! 夢から覚めてもらいます」
「は?」
金髪少女はそう言うと、どこから出したのか分からない数トンありそうなハンマーを振りかぶり……。
俺をぶっ叩いた。
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「ぎゃあぁぁぁぁ!」
俺は叫びながら跳び起きる。……他から見たら変な人何だろうなー。
「こ、ここは天国?」
周りをよく見てみると、そこはいつもの寝室だった。
「………はぁ」
全く、俺としたことがあんな夢を見るなんて……。
と、寝起きで回らない頭を覚醒させていると廊下からどたばたと走り回る音が聞こえた。
「なんなの今の叫び声は?!」
「ヒエン大丈夫?!」
ドアが壊れるほどの勢いで開くと、フィアとマウが部屋に駆け込んで来た。
「おはよう。悪い、嫌な夢を見て叫んじゃったんだ。気にしなくていいぞ」
あれは嫌な夢の部類だよな。うん。
しかし、二人は部屋から出ていかずにむしろ、俺に汚物を見るような視線を浴びせてくる。
そんなに見られたら照れる…ごめんなさい。
「ま、まだ何か御用でしょうか」
「ねえ、マウ」
「なあに、フィア?」
「緋焔のベッドに何か乗ってるように見えるのは気のせい?」
「ああ、フィアにも見えるんだ。幻覚じゃないんだ」
……ベッドの上?
俺がゆっくりと横を向くと…。
そこには神様こと、金髪少女が布団をかぶって気持ち良さそうに寝息を立てていた。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
今回は更新遅れてすみませんでした。
次回からは頑張ります。
作者は相変わらず、感想、意見などをお待ちしています。