表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別世界の道化師  作者: あかひな
四章
68/94

第六十六幕 道化師と終息

「じゃあ、色々と世話かけたな」

「いえ、そもそもの原因が俺なんで」

「はぁ? ……まあ、神使様だしな。余計な詮索はしねぇよ」


 俺はセリアさんの優しげな笑みを苦笑いで返すと、聖堂で必死に治療を続けている今代聖女ことアリスに顔を向ける。彼女はそれはもう泣きそうなというか半泣きの表情で、必死に治療を続けている。

 事の顛末は酷く簡単だった。今から数代ほど前の聖女の時代から、血縁を断たせないためにいた分家が、本来の聖女を押しのけて自らの事を聖女と呼び出したのだ。その代の聖女もここで反論すればよかったのだが、かなり適当な人であったようで、ちょうどいいという理由で隠居。そして、あの洞窟に入ったそうだ。しかしながら、本来の聖女がいるのに分家の血が効力を発揮するはずもなく、文字通りお飾りの聖女となってしまい、それを隠すために表舞台に立たなくなったそうな。

 そして、隠居した聖女が自らの体を解明していくうちに、日の下でしか使えないという条件をクリア。結果、こっそり抜け出して城下で愛する人を見つけて子を成して今でも血が続いていたらしい。


「セリア様ー! 手伝ってくださいよー!」

「馬鹿言うなよ。ウチの方法で治療できる人間なんて瀕死の重傷者ぐらいだっつーの」

「そ、そんなぁ……」


 アリスも、今ではすっかり丸くなり……というわけではない。今は人前なので中二病は身を潜めているが、親しい人だけとなると再発する。しかも、そのカテゴリには藍雛が含まれた事により、成り行きで俺も含まれてしまったらしい。マジ勘弁。


「あ、神使様は治療できますよね?」

「自分でやるって言ったんだから頑張りなよ」

「うぅ~!」


 そもそも、俺はもっと早く帰る予定だったのに、いつの間にかセリアさんの口車にのせられて、あれから二日間も滞在する羽目になった。その間、声明をあげさせる為に《創造》で色々準備したり崩壊気味だった軍の再教育という名の調教をセリアさんが出来る限り行っていたり、それに伴う戦闘訓練をしたり、それで壊れてしまった城の一部を調教された兵士達と修繕したりと、色々大変だった。

 セリアさんの調教の賜物だろうか、なぜだか兵士がセリアさんを一番とする聖女至上主義になっていたのと、裏では聖女様に笑顔でなじられ隊という不穏な組織が出来ていた。いろんな意味で濃い集団だったと思う。

 ただ、どうしても改善できなかった兵士達は国外追放という処遇になっていたのが気にかかる。今後はしっかりと訓練された軍隊がいるとはいえ、少々の心配は拭えない。

 まあ、それだけでも十分予想外だったのに、これ以上遅くなるだなんて冗談じゃない。スイ達の方も、フィルマの心労が心配だ。


「じゃあ、なにかあれば連絡して下さい。これを渡しますから」


 俺はそう言って《ジッパー》の中から連絡用携帯を渡して、使い方を説明する。説明している最中のセリアさんは、とても興味深そうに携帯をいじくり回していて、途中で俺の説明がいらなくなっている有様だった。適応力はんぱねぇ……。


「ふむふむ。随分と便利な代物だな。これは複製してもいいのかい?」

「出来ないように解体したら壊れる魔法をかけてあるので、無理ですね」

「そうか……まあ、技術革新はウチらの子孫の世代に任せるか」

「若いんじゃなかったんですか?」

「それはそれ、これはこれだ」


 セリアさんは苦笑いをしながらも俺のこめかみにこぶしを当ててくる。ただの拳だから大丈夫、とか思うだろ? これ、吹き飛ぶんだぜ? いろいろと。


「……まあ、何かあったら、出来る限り助けにはなるんで」

「おう、色々とありがとうな。きちんと建て直すことが出来たら、改めて招待するぜ」

「まあ、その時は皆連れてきますよ。大人数になると思うんで」

「おう、構わねぇよ。今の時代がどうなってるのかも気になるしな」

「さて、これ以上長居したらまた捕まりそうなんで、帰りますね」

「達者でな」

「あ、ありがとうございました!」


 二人の見送りの言葉を聴きながら、また城を破壊してしまわないように飛び上がり、スイやフィルマたちが待つ方へと飛ぶのであった。



―――――


「白い翼とは、随分とおあつらえ向きだな?」

「見てる暇なんてありませんよ! というか、いくら見とれる程白くても醜かったりしたら意味がありませんよ?」


 分かってないねぇ。形よりも、そいつの心の美しさを見るべきだろうが。


「さて、近衛。今日までに治さなきゃならない患者はあとどのくらいだ?」

「はい、残り千人と三十になります。その内五百は自力での療養が出来るまでに回復するよう、神使様の秘薬を投薬いたしました」

「だとさ。半分も減らしてくれた近衛に感謝して、さっさと皆を救いな」

「うぅ~……はい」


 アリスも、さっきから文句は言ってるが、治療の手は止まってないし。やっぱり神使様達の魔法が効いてるんだろうな。《創造》に《破壊》……ね。ウチらの時代にも使えるやつがいなかった魔法を、どうして神使様が使えるのか気になるところではあるな。……いや、いなかった訳ではないか。アイツを、あのガキを数に数えたくはないが。


「近衛、今日の鍛練はキツイ奴にするっつっとけ」

「御意」


 ま、頭を悩ますなんて性にあわないしな。こういう時は体を動かすに限るぜ。

 定期更新に戻りつつある。


 話が複雑になってきていますが、いたるところに伏線が張られています。

百話になるくらいを目処に終わらせようと思っているので、皆様もう少しだけお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ