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別世界の道化師  作者: あかひな
四章
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第四十二幕 道化師と片割れと弱体化

「Bランク以上となると……俺達も含まれるのか」


 戦争。

 それは、俺達が異世界で暮らすと決めたときに一番避けたかった事態だ。よくよく考えれば、人員を集めるのには共通の通信網があり、尚且つ強さがあるギルドに最初に向かうのは当然の事か……。

 嫌だ嫌だと言っていたのに、いつの間にかど真ん中に入り込んでた訳か。

 俺が割と真剣に悩んでいると、レイアさんが今までの穏やかな表情とは打って変わって、凛とした表情になる。


「これは依頼ではなく、正式な招集です。

 他の三流冒険者とは違って、有能な上に、非常に気まぐれなあなた達がそう簡単に見つかるとは思えません。

 聞けば、先遣となった軍にはあなた達と親交が深い方もいるとか。どうか、祖国を護るため、力を貸していただけませんか?」


 恐らく、親交が深いっていうのはフィアの事だろう。

 ……はぁ。

 この世界に来てから、大事な事程思い通りにならないな……。いつかグレてやろうか。


「条件があります」

「……なんですか?」


 俺は半ば呆れ顔で言うが、それを聞くレイアさんはというと、真剣そのものといった表情で俺の答えを待つ。


「一つ目に俺達に部下を付けないこと、二つ目に俺達の仲間の戦闘する人以外の安全を保証すること、三つ目に俺達の言うことには従うこと。もちろん、無茶苦茶な事は言いません」


 俺はその三つの条件を挙げて、それを満たせないならギルドから脱退し依頼も受けない旨を伝える。

 もちろん、嫌な顔をされるのは分かりきっている。だが、その条件は絶対に守ってもらいたい。

 ぶっちゃけ、収入源が減るのは痛いが、龍から取れる物は非常に高価らしいし、それを商人か何かに売れば金にはなるだろう。

 冷たいかもしれないが、俺達は天龍の巣にいれば被害を受けることはないし、フィアも、こうなる事が分かっていて、それでも王都騎士団に入ったんだしな。もちろん、助けてといわれれば助けには入るが。


「分かりました。その条件を飲みましょう」


 レイアさんは仕方がないとでも言うように、首を振りながら答えるが、手には水晶のような球体、その周囲にはかすかな魔力が漂っているので、恐らく何かの魔道具だろう。

 魔道具とは、魔力をエネルギーとして通常の魔法に限りなく近い効果を発揮する道具で、魔力さえあれば、たとえその人に魔法を扱う技量がなくてもその効果を使うことができる。また、実際に魔法を使う人でも、専門外の魔法を使う際に補助などとして使うこともあるらしい。そして、これは全て白龍からの受け売りだ。

 恐らく、あの手に持っている魔道具を使ってどこかと通信をしたんだろう。なんだかんだで、いろいろと画策しているみたいだしな。まあ、何を考えてるかは分からないし、知る気もないけどな。


「分かりました。じゃあ、これを」


 俺はその場で携帯を創造し、レイアさんに手渡す。ちなみに、電話とメールしかできないお年寄り用の簡単な携帯だ。他の機能はいらないしな。


「これは?」

「俺を通信をとるための特殊な道具です。魔道具とは違って魔力は消費しませんし、あなた以外には使えません。というか、使えないようにしてあります。通信をとりたいときには、真ん中のボタンを押して少し待てば通信ができます」


 俺は、携帯に関する限りなく簡単な説明をする。その際、レイアさんがとても驚いた顔をしていたが、そこはあえてのスルー。反応するのが面倒だし。というか、よく考えたら携帯って明らかにオーバーテクノロジーだよな。この世界の技術と釣り合ってないし……。まあ、その為に分解されても大丈夫なように魔法をかけたんだけどな。

 ちなみに、かけた魔法の内容は、一つ目にレイアさん以外に使えないようにする。二つ目に、分解した瞬間に破壊される。この二つがあれば、技術が漏れる事は無いだろう。流石に、自分達で進歩しょうとするのは止めないしな。


「じゃあ、レイアさん。何かあったら連絡を下さい」


 俺はそう言って会議室を出る。




―――――



「あら、お帰りなさい。どうだったの?」


 俺が席に戻ると、藍雛達は紅茶とモンブランでのんびりとティータイムを楽しんでいた。周りでは、数人の男達が死屍累々といった様子で隣のテーブルに倒れ伏しているが、大方藍雛に迎撃されたんだろうと当たりを付け、華麗にスルー。座った瞬間に感じた嫉妬のオーラは、余りに使わなかったせいで弱体化してきた《破壊》で破壊する。

 それを見た藍雛が、やっぱりと言いながらこちらを向く。


「緋焔も《破壊》と《幻惑》が弱くなってるわね」

「『も』って事は、藍雛もか?」

「ええ、《創造》と《時空》はほとんど使えないわね」


 俺はこれを聞いて、黒龍ことコクの方を向く。


「コク、魔法は弱体化するのか?」

「基本的にはされた例は見られないよ。でも、緋焔と藍雛は極度の例外だからなぁ……」


 コクは天井に目をやり、思案を始める。数秒経ち、長くなるのかと考えた瞬間に目線を俺達に戻す。


「基本的に、魔法は一人一種類しか発現しないんだ。しかも、そういう人は歳をとっても、どちらかというと歳をとった方が魔法を上手く使うからかなり重宝されるみたい」

「待った。魔法は世界の法則の穴を使って使うんだよな。だったら、種類が決まるっていうのは変じゃないか?」


 俺は頭の中に思い付いた疑問を一瞬たりとも考えずに口にだす。すると、コクは顎に手を当て、また考え始める。


「うーん、魔法を使う為の事を穴って例えるなら、鍵穴って感じかな? で、使う魔術師は鍵を開ける人。そして、魔力が鍵。だから、使える魔法は限られるんだ。魔力は人によって質が違うからね。話が逸れるから適当にするけど、こんな感じ」


 コクはそう説明すると、いつの間にかいれてあった緑茶に口を付け、喉を潤して話を再開する。


「で、その重宝されるのと、どう関係があるかっていうとなんだけど。重宝される為には魔法を使い続けなきゃいけない。だから、上達することこそあれ、弱体化なんて起きない。でも……」


 コクはそこまで言って、一旦言葉を切り、俺と藍雛を交互に眺めてから言う。


「もしかしたら、魔法は能力じゃなくて、技術なのかもしれない」


 コクはそう言うと、自分の言うことは言い切ったとでも言うようにお茶を飲み始める。魔法は技術ね……。


「……」


 藍雛は藍雛で、自分だけ考えているみたいだし、全く……。

 と、気を抜いて椅子に深く座り込むと、スイとマウは話についていけなかったのか、もしくはついてくる気も無かったなかは知らないが、完全にダウンして疲れを見せている。

 それを見た俺はついクスッと笑ってしまう。


「さて、そろそろ帰るか。用事は済んだし、スイとマウも疲れてるみたいだしな」


 それを聞いた藍雛は、思考を中断してスイとマウの方を向き、俺と同じ様に笑う。


「そうね。考えるのは帰ってからでもいいのだし」

「というか、さっさと帰りたかったんだけど」


 誰のせいで遅くなったんだ、という言葉を飲み込み、代わりに黒龍にげんこつを一つ落としてから、全員の足元に魔法陣を展開する。


「忘れ物は無いよな? それじゃあ、飛ぶぞ」


 俺はそう言って確認をとるのと同時に、魔法陣に魔力を流す。




―――――



「ただいまー」

「うむ」


 俺達は到着して自室に向かう前に、リビングに向かう。その途中、キッチンに当たる所の前を通り過ぎようとすると、中で白龍がお茶を入れているので、挨拶をする。……あれ? ここって、異世界だよな?


「あら、白龍。ちょうどいいわ」


 藍雛はそう言うと、《ジッパー》を開き、片手を突っ込み何かを引っ張り出す。


「これ、お土産よ」

「うむ、ありがたい。ちょうど茶菓子を探していたのだ。どうやら切らしているみたいだが」


 白龍はそれを受け取ると、袋から取り出し、皿に取り出す。それをやりながらしみじみと呟く様子は、どこからどう見ても主婦のそれだ。


「ああ、それなら買ってきたわよ」


 藍雛は、またも中に腕を突っ込んで、中から、龍達が抱えていても不思議ではない程大きな袋を取り出す。一体、いつの間に買ってきたんだか……。


「おお、ありがたい。我もそろそろおぬしらの食事がとりたかったのだ」

「我もね。緋焔が依頼を済ませている間は何も食べていないし」

「スイも……」

「あー、よく考えたら俺もだ」


 いつの間にか食事がいらなくなってるのか、俺の体は。スイは龍だからとにかく……。と、意識したら急に腹が減って来た……。


「マウ、頼めるか?」

「うん! 任せてね」


 俺が空腹に耐え兼ねてマウに頼むと、今までぐてーっとしていたマウが、急に元気になり、棚から様々な調理器具を取り出し始める。今日は豪勢になりそうだな。


「さて、我達は邪魔にならないようにリビングにでも行っていましょうか」

「はーい!」

「僕はちょっと用事があるから、皆で食べてて」


 スイが元気よく返事する一方、コクの方はそう言い残すと、どこかに行ってしまう。


「黒龍のおじいちゃんどうしたのかな?」

「さあ……? どうしたのかしらね?」


 藍雛はそうは言っていながらも、全く気にした様子はなく、満面の笑みを浮かべながらスイを抱き抱えている。全く、羨ましゲフンゲフン。


「俺は部屋で本でも取ってくるよ」

「ああ、緋焔。ついでに、我の部屋からアニメのDVDでも持ってきてちょうだい」

「いいけど、何がいい?」

「そうねぇ……」


 藍雛はスイを抱き抱えたまま、ぐるぐると回りながら考えている。……なんだこのカオス。


「生徒会の○存で頼むわ」

「りょーかい」


 生徒会か……。あのアニメのラストのポーズは無かったな……。いや、十分面白かったけどな?

 俺はそんな事を考えながら、部屋に向かう。





作「どうも、お久しぶりです。作者こと神薙です」

タ「今回やっと3回目の登場となったタフナや! みんな、見とってくれたか?」

作「更新が止まること、約3週間……。ホントにすみませんでした。テスト1週間と数日に修学旅行数日、帰ったと同時に風邪で、さらにお見舞い(笑)のせいでそれをこじらせて、と……とにかく酷い目に合いまして、どうしても遅くなってしまいました……」

タ「……今年厄年やったか?」

作「いや、違うはず……。とにかく、すみませんでした。そしていつの間にか、PVが120万、ユニークももう少しで1万5000と、とにかくビックリな数字です」

タ「読んでくれとる皆さんに感謝やな」

作「そして、今回から戦争編です。書きたかったけど、書きたく無かったとこだけど、がんばります」


誤字脱字誤用、ご感想ご意見などなど、お待ちしています。

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