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別世界の道化師  作者: あかひな
三章
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第三十八幕 道化師と神槍

祝100万PV!!

「ごふっ」


 あれ? 俺チートだよな? と一瞬は考えた。だが、更に考えると強い状態の時でも痛覚や傷は出来た。つまり……。


(能力で身体能力は強化できても、皮膚の硬さとかは変わってる訳じゃないのか……)


 どこか冷静に、そして客観的に自分を見つめながら喉から溢れ出る液体を感じていた。

 今まで散々チート能力で遊んでたからな。細かいところまでの把握も、ろくにしないし……自信過剰過ぎたか。こんなんじゃあ《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》に叱られちまうな。

 俺が致命傷を負ってしまった事で《神具の宴(シングノウタゲ)》の効果も切れてしまったようで、遠くにある神具から順にどんどん消えていくのが見える。が、手の中にある《投げ撃ち殺す雷の槌(ミョルニル)》と《一投回帰の槍(グングニル)》。そしていつの間にか手元に戻って来ていた《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》は無事のようだが。


(それにしても魔力の消費が激し過ぎる。この際余分な神具は消して一つに集中させたほうがまだ効率的だろうな)


 そう感じた俺は手に持っていた《投げ撃ち殺す雷の槌(ミョルニル)》と《一投回帰の槍(グングニル)》を離し、《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》だけを手にとる。案の定魔力の供給が絶たれた《投げ撃ち殺す雷の槌(ミョルニル)》と《一投回帰の槍(グングニル)》はその場から消える。


『だから言ったでしょう、使い手(マスター)。自身の能力を過剰評価し過ぎた結果がこれです。無駄に体力を擦り減らしたではないですか』


 あーはいはいそうですねー。ついさっきまでは真面目に話を聞くつもりだったのにいざ聞こうとなったら聞く気が失せた。なんでだろう?


『この話もろくに聞いていないのかも知れませんが……。そう考えるとため息がでますね』


 いや、ため息をつく口が無いだろうが。今更だが、この神具は人間くさ過ぎだろ。他のを知ってる訳じゃあ無いが。


『それにしても……いつまで狸寝入りを決め込むつもりですか? いい加減に起きて下さい。そうでないと、今度こそ仕留められますよ』


(あー……はいはい狸寝入りね。――って、狸寝入り? そんな訳無い。確かに喉をやられて生暖かい液体が……)


 試しに起き上がって手の平で喉を撫でてみる。


「……なんだよ。ちゃんと血ついてるじゃねえか。全く、《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》め、驚かすなって」

「馬鹿な……。確かにかまいたちで切ったはずだ!」


 俺が《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》にそう言う(・・)とそれを聞いていたらしい『アレ』は声を震わせて叫ぶ。


「そーそー。確かに俺は喉を……って、なんで俺は喋れてるんだ?」


 普通、喉を切られたら喋れないよな?まさか俺が普通じゃないという訳では……いや、普通じゃないか。しかし、なんで喉が元通りになってるんだ?


『だから言ったではありませんか。いつまで狸寝入りを決め込むのだと……。確かに、使い手(マスター)は不老不死でもなんでもない魔力、体力その他諸々がすごいただの人間ですが……』

「いや、それだけすごいならただのとは言わないからな」

『話の腰を折らないで下さい。こほん、使い手(マスター)は確かに不老不死ではなく最強を願った為に不老不死にはなりませんでしたが……しかしながら、肉体の基礎的な所――筋力や自然治癒力等――はどん引きするほど上がっています』


 ……いつから人間止めてたんだ俺。いくら直接的な外見の変化が無いって言ってもここまでいくと人外だろ。なんかへこむなぁ……。まあ、今回はそれのおかげで助かったんだし良しとするけどさ。


「さあ、第二回戦といくか」

使い手(マスター)、慢心は――』

「分かってる。もう、慢心なんてしないって」


 一回俺感覚では死んでるからな。それの原因を知った上でまだそれを続けるなんて、馬鹿な真似はしない。


「くっ……。この化け物め」

「悪かったな、俺も自分が化け物なんて知らなかったし、そのせいで気分は最悪だ」

使い手(マスター)。なに長話をしているんですか? またやられますよ』

「あーもう。口煩いな。少しは静かにしてられないのか」

『先程言う事をしっかり聞くとおっしゃられたのは使い手(マスター)です。第一――』

「あーあーキコエナイナー」

「……何なのだこいつは」


 と、俺と《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》で口喧嘩紛いの事をしていると、それを何にもせずに眺めていた『アレ』は声だけでも分かるほど呆れたように呟く。あれ? この状況って痛い人なのか?


使い手(マスター)痛い人ではなく、空気を読めない人かと』

「そんな細かい解説いらないって……」

「何なのかはよく分からんが……」


 『アレ』はそう言って深呼吸をして一息つき――


「同族の仇、とらせてもらう」


 ――素人の俺でも肌に感じる程の殺気を撒き散らす。


「――っ!」

『落ち着いて下さい、使い手(マスター)。『アレ』が使用するのは魔法です。高濃度の魔力を身に纏って下さい』


 《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》が、さっきとは打って変わって凛とした声で俺の脳内に戦い方を教える。もちろん、その間相手も何もしない訳が無く、手の平に視認が出来る程高純度の茶色の球を精製している。


使い手(マスター)の魔力は現在、著しく減少しています。今の程度の魔力の壁などアレでは、たやすくとはいかないまでも破られてしまいます』

「回りくどい!」

『失礼致しました。簡潔に申し上げますと――避けて下さい』


 《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》がそう言った直後、『アレ』の姿を見ることすら難しい程の大量の魔力弾が俺に向かって飛び、弾幕となって襲い掛かる。これ、なんて無理ゲー?


「うぉぉぉ!」


 始めの内は服位は被弾してもいい覚悟で、全力で避けに回る。だが、終盤に向かうにつれ、弾幕の密度は一層濃くなっていき最終的には茶色のカーテンが目の前から迫り来る。


「ちょっ! 無理ぃぃぃ!」

『落ち着いて下さい、使い手(マスター)。茶は土の色。火に相反し打ち消し合うのは水であり、同じく土に相反する属性は風で――』

「風だな!?」


 《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》からの回りくどい講義を聞いた俺は直ぐさま後ろに下がり、パッと思い付いた風属性の魔法を放つ。


「《大嵐(サイクロン)》!」


 呪文を唱えた直後、俺の手から小型の渦巻く風が発生したと思ったら巨大な嵐に成長し、土の魔力弾幕に向かって突っ込んで行き弾幕を飲み込む。


 ――が、弾幕は嵐を通過しそのまま俺に向かって来る。


「はぁ!? どういう事だ《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》!」

『だから落ち着いて下さいと言ったはずです。土に相反するのは風であり、尚且つ純粋な魔力を打ち消すのは魔力のみです』

「そういう事は――」

『己の説明を勝手に切り上げたのは使い手(マスター)です』


 俺は心の中で毒づき、今度こそ弾幕を消す為に風属性の魔力弾を高速で精製する。あまりに焦っていた為に若干魔力量の調整をミスった気がするが、贅沢は言ってられない。弾が出来たと同時に、弾幕の俺が当たりそうな部分を中心に、マシンガンの様に風の魔力弾を乱射する。


「おらぁぁぁ!」


 若干、過剰に練り込んでしまった魔力も、今の弱体化した俺にはちょうどよかったようで、ピッタリ相殺とまではいかないが、俺に当たりそうな土の魔力弾は、余裕で避けられる程度に打ち消した。


「弾幕突破!」

『気を抜かないで下さい。第2波来ます』

「えっ」


 数々の弾幕を乗り越え、というか避け最大の難関だった土のカーテンを乗り越えたその向こうには、俺の急所に向かって飛んでくる一本の矢。

 今から避けようにも、前に進む体は止まらず、飛んでくる矢も止まらない。ならどうするかなんて答えは一つ――


 ――掴むしか無いだろ。


「ふ、この程度の矢。掴めぬとでも思ったか!」


 俺は頭に向かって直行してくる矢に向かって手を伸ばし――




 スカッ




 ――掴み損ねた。


「あ、終わったわ」


 グッバイ、俺の人生。


使い手(マスター)、《役立たずな時計(ジャンククロック)・スロー》を』


 おお、その手があったか。


「《役立たずな時計(ジャンククロック)・スロー》」


 俺は枯渇しそうな魔力を振り絞り、魔法を発動させる。

 止まって見えるほど遅くなった矢を前に進みながら回避し、《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》を片手に『アレ』に突っ込む。

 間に合うか間に合わないかの、ギリギリの魔力しか残っていない俺には、次の手などは無い。つまり、この一撃で相手を戦闘不能にしなければ俺は今度こそ……。


使い手(マスター)、心配なさらずに。己の名に賭けて使い手(マスター)を天へ向かわせるような事は致しません』


 恐怖感を感じたのであろう《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》に言われ、平静を取り戻し、何故分かったのだろうと思ったが、その疑問はすぐに晴れた。

 情けないことに《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》を持つ手が震えていた。武者震いだと、ごまかす事が出来ないほどに。これでは簡単に分かる。持たれている《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》なら尚更だ。

 他人からもらった能力の上にあぐらをかき、鍛練を怠った結果一度やられ、2度目のチャンスを迎えた今でさえ、やられた恐怖感で体が震え、強がる事さえままならない。本当に、情けないことこの上無い。だが……。


「だからって、死ぬわけにはいかないんだよぉぉぉ!」


 俺がそう叫び、《生き意思を持つ槍(ブリューナク)》を突き出そうと腕を引いた瞬間、遂に魔力が限界になり、《役立たずな時計(ジャンククロック)》が解ける。腕を引いている事に気付いた『アレ』は、ローブの中に腕を突っ込み、ローブごと俺を切り裂こうと短剣を振るう。


そして……。





どうも、神薙です。


まえがきでも記述した通り……。


なんと、100万PVを超えました!!

未だに夢じゃないかと思っていますよ。だって、100万ですよ!?


 もともとの初めには

(どうせランキングにも皆が見ないようなずーっと下で、悪評が1つや2つあるぐらいだろうなー)

と、考えていましたが、今では――二次創作作品が移ったとはいえ――ジャンル内ランキングの140位前後です! 全く予想だにもしていなかった事態なので、皆様にも何とお礼を言ったらいいか……。


 とにかく、今回のようになれたのは私の力だけでなく、さまざまな方々の協力があったからです。こんな文でも読んでくださる皆様と、さまざまな誤字脱字を指摘していただいた方々、並びに、この未熟者にご指導していただいた皆様のおかげです。本当にありがとうございます!!



追記

更新が滞ってしまい申し訳ありません。最近、CADの検定の講習を受けに行っているため、とてつもなく遅いですが、できるだけ皆様に楽しんでいただけるように書くため、遅くなってしまうことを、どうかご理解ください。

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