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別世界の道化師  作者: あかひな
二章
33/94

第三十一幕 道化師と最高龍種

「……おぉ」

「……予想通りというか……。予想以上ね」


 スイも、人化には成功したようで、俺達の目の前にはスイが立っていた。


「……パパ?」


 俺に対してパパというスイの姿は予想通り可愛い姿で、予想以上に可愛い姿だった。

 見た目としては大体14、5歳くらいだろうか。

 髪は肩の辺りで切り揃えられていて、根本は白く、毛先に行くほど水色になっていくというグラデーションになっている。見るだけでも髪はサラサラである事が分かるほど、綺麗な髪をしている。

  女の子の服がイマイチよく分からなかったので、ポンチョのような物を着せているので細かい体つきはよく分からないが、服から伸びる細く、雪のように白い肌をした手足を見れば綺麗な体つきをしている事は容易に想像出来る。そして、俺はとある一部分がおかしい事に気が付いてしまった。

 それはポンチョを着ていてもなお、年齢に――あくまでも外見年齢だが――に不相応と言うことが、その事に疎い俺でもハッキリと分かった。そして、ついつい藍雛の方をちらっと見た。否、見てしまった。

 藍雛も、俺の片割れとは思えないほど美しい。四肢もすらっとしているし、へこむべき所は他と比べて見れば一目瞭然なほどのくびれを描いている。しかし、……言うのはかなりはばかられるが、出るべき箇所がほとんどと言っていいほど出ていない。

 それに比べてスイは、その部分の自己主張がとても強い。俺は余り詳しくないので言い難いが、恐らくDはあるだろう。何とは言わない、紳士だからな。

ちなみに、紳士は紳士でも変態という名の紳士ではないと信じている。男はみんな変態だ、何て言う奴がいるが俺は違うと断言出来るだろう。いや、断言したい。……多分。……きっと。


 閑話休題。


 何故こんな話になってしまったか、という疑問はこの際忘れて、本来の目的を果たす為に頭を切り替える。


「よし、準備も出来たしそろそろ――」


 俺は脳の回転と共にフリーズしていた体を覚醒させ、藍雛達の方へ向ける。


「ママ?」

「スイ、我の事はお姉ちゃんと呼びなさい」

「お姉ちゃん……?」

「そうよ、スイ。偉いわね」


 藍雛はそう言うとスイの頭を優しく撫でる。スイは気持ち良さそうに目を細めている。何て言うか……和むな。


「それとね、パパもパパじゃなくて、お兄ちゃんと呼んだ方が喜ぶわ」

「ホント?」

「ええ、ホントよ。お姉ちゃんが保証するわ」


 …………………。

 緊急事態発生!緊急事態発生!藍雛は一体何を教え込んでるんだよ!スイも信じるな、頼むから!妹とか置いて来たアレだけで十分だから!

 と、俺が脳内で第一級緊急事態の対処に追われていると、スイが藍雛の方から俺の方に歩いてくる。そして、俺を見上げる形で目の前で立ち止まる。ふっ、いくら上目づかいになったとしても、俺の理性が陥落するなどということは――


「……お兄ちゃん」

「スイは可愛いな」


 気が付いたら、スイを抱きしめて頭を撫でていた。

 もうしょうがないよね。陥落もするよそりゃあ。けしかけた藍雛も予想外だったのか、若干顔が引きつってる。俺は、抱きしめたスイをそのままに気を取り直すように咳払いを一つする。


「さて、準備をしようか。藍雛はスイの服を創ってやってくれ。俺は黒龍の方の服を創るから」

「わ、分かったわ」


 そういえば、黒龍と白龍空気だったな。話の流れで思い出したけど、あのままだったら忘れてたんじゃないかと思う。

 と、そんな俺をよそ目に藍雛はいつの間にか腕の中にいたスイを連れてどこかに行ってしまったようで、少なくとも俺の視界の中にはいない。俺はいなくなったスイの感覚を惜しみながら、黒龍に向き直る。


「さてと……。黒龍は人化と龍化がすぐに出来るように練習しとけ。慣れないだろうから」

「時間が無いのでは無かったのか?」


 黒龍の隣の白龍が不思議そうに聞いてくる。


「まあ、確かに普通にやったら時間が足りないだろうが……」

「「だろうが?」」


 俺は黒龍の周りの空間を隔離し、空間内に黒龍しかいないようにする。


「時間は……1時間が60分で1日が24だから……1440で……5分で1日で十分か。だから……288か《倍速、288》」


 俺は空間内の時間を288倍に設定し実行する。それを見ていた白龍が、不思議そうに俺を見てくる。


「何をしたのだ?」

「空間内の時間の早さを288倍にした。あの空間の中なら、5分で一日を過ごす。食べ物と水は十分に入れといたから大丈夫だろ」

「……厳しいの」

「慣れるのには1日でいいだろ。魔法を使うのとそう変わらないはずだから、難しくは無いさ」


 俺は空間から視線を逸らし、その場に椅子とテーブルと急須を創造して、椅子に腰掛ける。ついでにジッパーを開き、中からマイ湯飲みと緑茶の茶葉を取り出す。


「白龍も座るか?」

「うむ。頼もう」


 俺は白龍の分の椅子と湯飲みを創造して、俺と白龍の湯飲みに魔法で水を集めて火の魔法を使って沸騰させる。水がお湯になったのを見計らって、急須に茶葉とお湯を入れる。

 緑茶はこうして入れるのがいいらしいが、紅茶ではこうするのはあまり良くないらしい。確か茶葉が開かないからだったと思ったな。

 と、俺が考え込んでいるとちょうどいいくらいにお茶が出来たようなので、それぞれの湯飲みにお茶を注ぐ。


「出来上がりっと。茶菓子は……羊羹があったな」


 俺は再度ジッパーの中に手を突っ込み、中から包丁と羊羹。それとフォークを取り出す。業務用の1キロ羊羹なので量は中々だ。まあ、白龍と一緒ならすぐに終わるだろうけど。それを切り分けて皿を創造して、それぞれの皿に乗せる。


「はいよ。冷めない内に飲んでみろ」

「いただこう」


 白龍はそう言って湯飲みを手にとるしげしげと眺めたり、匂いを嗅いだりして見ながら恐る恐るといった感じで湯飲みに口をつける。俺はその様子をニヤニヤと眺めながら羊羹と共にお茶を飲む。うん、やっぱり美味いな。


「………」

「どうだ?」

「渋いな」


 まあ、初めて飲んだならそんな反応だろうな。俺は納得して、二口目の羊羹を口に放り込む。


「だが、美味い。渋い中にも微妙な甘さがあってとても良い。この黒い物も甘くてよいな」

「……下手なリポーターなんかよりも評価が上手いな。グルメリポーターなんかになればいいんじゃないか?」

「り、りぽーた? 済まぬ、我には分からぬ」


 まあ、そりゃそうだろうな。むしろ知ってたら怖い。


「話は変わるけど、白龍の一人称も我なんだな」

「うむ、他にも多数の呼び方はあるが、やはりこれが一番慣れている」

「……藍雛と被るな」

「……我も気にしておったのだ。これが原因でいつ怒らせるのかとひやひやしている」


 白龍は思ったよりも気が小さいんだな。まあ、藍雛が相手ならしょうがないんだがな。


「まあ、そのくらいじゃあ怒らないだろ。……それより、藍雛達遅いな」

「確かに、そろそろ10程経つだろう」

「創造自体に時間はかからないしな……何より、これ以上は黒龍がまずい」

「十分な食料では無かったのか?」

「1日で十分でも、それで4日はきついだろ」


 龍に人間と同じ定義でいいのか少し迷ったが、どちらにしろ俺はその定義しか知らないんだからしょうがないと自己完結し、藍雛の魔力反応のある所に転移する。


「藍雛ー。時間無いからそろそろ……」

「お姉ちゃん、まだー? お兄ちゃんが待ってると思うよ」

「ちょっとだけ待ってちょうだいね。もう少しで10着目の服が出来るから」


 スイが暇そうに椅子にもたれ掛かっている横で、服を創造しては破壊する藍雛。それとハンガーラックに5着ほどのゴスロリ服と普通の服が数着掛かっていた。


「………」

「あ、お兄ちゃん!」


 俺があまりの事態に絶句していると、それに気が付いたスイが約5メートルの距離を一瞬で詰めて飛び付いてくる。俺は、それを優しく受け止めようと大きく手を広げ――


「おぶっ!」


 ――スイを受け止めた瞬間に体への衝撃と共に吹き飛んだ。


「あら、緋焔。よく飛んだわね」


 藍雛のそんなのんきな声にすら反応出来ずに壁に直撃する。ぶつかった壁の俺の周囲が陥没し、上からガラガラと壁だったものが落ちてくる所を見ると、相当な衝撃だったのだろう。体のリミッターを4割程解除した俺ですら、微妙な痛みを感じる。

 まあ、それほど痛いというわけではないが。せいぜい冗談で腹を叩かれた程度だろう。

 それより、周囲には崩れた壁が落ちているんだが、一つとして俺に当たっていない。なんでかなー、と疑問に思っていたが、スイが俺の腹の辺りにくっついたまま心配そうに見上げている所を見ると、スイが空間でも弄っているんだろう。

 生まれて間もないのに、もう魔法を使えるとは流石世界最高種だな。


「お兄ちゃん、ごめんなさい」


 俺が半分驚き半分苦笑いという意味不明な表情で下を向くとスイが目に涙を溜めながら謝罪の言葉を口にする。まあ、そんな事をしなくても許したけどな、何と言ってもスイだし。


「大丈夫だよ、スイ。俺は元気だから。それにしても、もう魔法を使えるなんてすごいな」

「うん!スイ、お兄ちゃんとお姉ちゃんのために頑張ったよ!」

「スイはすごいわね。とってもすごいわ」


 藍雛はそう言ってスイの頭を撫でる。その表情は幸せそのもので、今すぐ死んでも構わないとか言い出しそうだ。……藍雛なら死んでも生き返りそうだが。というか、いつの間に距離を詰めたんだ?今のは距離を0にした訳でもなさそうだし、時間を止めた訳でもないだろう。一体どんな身体能力をしてるんだか……。


「緋焔、口に出ているわよ」

「どこから?」

「最初からよ」

「……悪い」

「分かっているならいいわよ」


 藍雛はそう言うと踵を返して歩き出してしまう。


「どこ行くんだよ?」

「……緋焔、何の為に黒龍とスイを人化させたのよ」


 ……あれだな、スイがあまりにも可愛くてど忘れしてしまった。大丈夫、今思い出した。


「黒龍達も待っているでしょう。早く行きましょう」

「おう」

「お出かけだね」




 しかしまだ何か忘れてる気がするんだよな……。何だったっけ?





作者「どうも、神薙です」

エセ「タフナや」

作者「えーと、今回は作者の妄想が100%オーバーです。むしろオーバーキルです」

エセ「こんだけやらかしたらなあ……オーバーもいいとこやろ」

作者「ちょっとやりすぎた感が無いわけでもない。だが反省はしていない」

エセ「反省しろやw」

作者「どうでもよくないけど、スイを美幼女にするか美少女にするかで滅茶苦茶迷った。今でもあってたのか分からん」

エセ「……で、次回は?」

作者「なんと、まだ一文字も書いてないんだなこれが」

エセ「……もう作者というか人としてどうなんや」

作者「とっくに末期を超えて転生済みですが?」

エセ「……こんなのに考えられた俺はなんなんや」


作者は、ご意見、ご感想、誤字脱字報告などなど常時お待ちしています。

感想くれたら狂喜乱舞して頑張ります。

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