第二十八幕 道化師と龍種
更新遅くなってすみません
古代、世界は多数の国に別れ、今もその伝統を受け継いでいる国は多数存在している。そして、その多数ある国々は――今日こそ違うものがあるが――王制である。そして、王制である国は必ずと言っていいほど城が存在していて、その城には、王のみが座る事を許される玉座というものが存在している。
さて、何故俺がここまで語りと言う名の現実逃避をしているのかと言うと、それは俺の横で脚を組み、悠々と辺りを見回し悦に入っている俺の片割れである藍雛が原因である。
「こういうのも結構いいわね。見ていて楽しいものがあるわ」
「・・・・・仕返しがないか不安だな」
そうやり取りを交わす俺達の眼前には、赤、青、緑、茶のいろとりどりの龍達と、それらの先頭に白と黒の龍が一匹ずつ。ほぼ全員が玉座に座している俺と藍雛、そして俺の膝の上に乗っている空のような青と白をした龍に向かってひざまづいている。
「・・・なあ、藍雛」
「何かしら?」
「2つしか無いはずの胃の穴が6つになりそうなんだが」
「そう。ストレスって怖いわね」
・・・何故、俺が多数の龍達と藍雛によって胃に穴を開けられそうになっているのか。
それを知るには、少し時間をさかのぼらなければならない。
――――――――――――――
「はぁ、歓迎は嬉しいのだけれど、程度を考えてもらわないと疲れてしまうわね」
そう言う俺達は、既に天龍の巣に到着していた。そう、到着はしていたのだが・・・。
「・・・俺は胃が痛い」
その俺達の目の前には赤、青、茶の色の龍達が、今にも飛び掛かりズタズタに引き裂いてやると言わんばかりのプレッシャーを放ちながら俺達を取り囲んでいる。
ちなみに緑の龍達は着いた瞬間に倒れてしまったので、取りあえず回復させようと別の空間を創り、《治癒》効果のある部屋を創り出して、その中に押し込んでおいた。
「あら、《治癒》を使えば治るのではないの?」
「・・・・・」
俺は藍雛に皮肉を言うのを諦め、一人でも状況を打破しようと思考を巡らせる。
とりあえず、攻撃されるのは嫌だから相手の動きを封じて、次には・・・まあ、どうにかなるよな。
「待て!」
俺が動きを止めようと、対龍専用に特別に俺の魔力を結晶化させた鎖で龍達を束縛しようとした瞬間。
龍達の向こうから若めのおっさんのような感じの声が聞こえてくる。
その声が聞こえた途端、周りで殺気を振り撒いていた龍達は静まり返り、俺達の元へ続く一本の道を作っている。てか、今のは俺に言ったのかな?
まあ、結果的には龍達が静かになったから助かったけど。
「ちっ」
しかし、片割れの女王様はそれが気に食わなかったみたいで、横で苦い顔をしながら舌打ちをしている。それにしても、こんな表情でも絵になるんだから不思議だ。本当に俺から生まれたのか非常に気になるな。
とまあ、状況が緩んだせいで全く関係無いことを考えていた間に、龍達の作った道から真っ白な龍と真っ黒な龍が、対を成して歩いてくる。
そんな事にテンプレを感じながら、警戒をMAXにしていると横から藍雛に腕を突かれる。
(ちょっとは警戒を隠しなさい。ピリピリしすぎで大気が震えているわよ)
(あー・・・。了解。ていうか、藍雛は念話できたのか)
(あなたのコピーみたいなものよ。出来ない方がかえって不思議ね)
(・・・分かった)
とりあえず、藍雛に言われた通りに警戒を隠して周りの龍達の殺気を解く。すると、ちょうどいいタイミングで白黒の龍が俺達の前に到着する。
それにしても、近くで見るとでかいな。20メートルはあるんじゃないか?
「突然の来訪、済まないわね。あなたたちは言葉は通じるのかしら?」
「もちろんだ」
どうやら、さっき言葉を話したのは白黒の内の白い方らしい。声も口調もさっきのように、妙に重いというか、そんな感じがする。
とはいっても、他と比べての話で、俺からすれば重みなんて紙切れ程にも感じない。
「それはよかったわ。では、この島で最も権限がある者の所に連れていってもらえるかしら?」
「それは無理だね」
白い龍の隣にいた黒い龍が藍雛の頼みをバッサリと切る。てか、黒龍は軽いな。白いのがどれだけ歳くってるのかは知らないけど、絶対黒龍の方が若いだろ。
・・・話が逸れた。黒龍のその台詞を聞いた藍雛は、ため息をつく。
「あなたたちも本能を持った生物でしょう。なら・・・」
藍雛はそう言うのと一呼吸置いて、辺りの空間を何やら弄ってからリミッターを完全に開放する。すると、辺りの普通の龍達は怯えるように、一匹残らず後ずさる。
後ずさったのはあくまでも、普通の龍達で、黒龍と白龍は少し驚いたような反応をするが、後ろの龍達に気付かれないように、必死に隠している。・・・まあ、正面にいる俺達にはまる見えな訳だが。
それを見た藍雛はリミッターをかけ直し、ニッコリと笑って言う。
「これで言うことを聞いてくれるわね?」
藍雛がそう言うと、黒龍と白龍は苦虫を噛み潰してじっくり味わったような表情をし、固まってしまう。まあ、生物の本能上、圧倒的強者にやられたら・・・と考えると、黒龍と白龍の行動はしょうがないだろう。
てか、そんな事して道を塞いだら、行けるものも行けなくなる気が・・・。
「・・・無理だよ」
藍雛が少しだけ、黒龍達に近付くと、黒龍が俯きながら呟く。
「無理とはどういう事かしらね?」
まさか、この状況下で会わせないという事は無いだろう。藍雛と龍達はそれほどに差があった。
「生まれていないものにどう会わせろと言うのだ」
「生まれてないってどういう事だよ?」
すると、黒龍と白龍は着いてこいとでも言うように龍達の道の中を通っていく。龍達も道を閉じないという事は、通れという事だろう。
「・・・どうする?」
「行くに決まっているじゃない」
俺達は一言ずつそう言うと、龍達の道を歩いていく。
2匹に着いて行くと、巨大な鳥の巣のようなものの前に連れて来られた。大きさは、大体、縦横4メートルに高さ1メートルくらいだろうか。その中央には高さ1メートルくらいの、ニワトリの卵のような真っ白い卵が置かれている。
「・・・これが?」
「天龍なのかしら?」
「我等は時空龍と呼んでいる。神以外の生物で唯一、自然に時空の魔法が使える故に」
「で、なんで卵なんだ?」
俺がそう言うと、黒龍は急に大量の――もちろん、通常の感覚でだ――魔力を塊にしてそれを卵にぶつける。が、卵はそれを喰らってもびくともしない。それどころか、魔力を吸収してしまう。
「時空龍の卵をかえすのには、膨大な量の魔力が必要なんだ。それこそ、この大陸の龍達全部でも足りないくらいの膨大な魔力が」
「本来なら、時空龍の親がその魔力を与えるのだが、先代の時空龍は突如として行方不明となってしまったのだ」
「なるほどな。それで卵がかえせずに、この大陸の王が不在な訳か」
俺がそう言うと、黒龍は頷くが、白龍は何やら苦々しい表情を浮かべている。
「どうしたのかしら?」
「いや、なんでも「隠し事は出来ないわよ」・・・話そう」
白龍はそう言うと、大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと口を開く。
「この大陸は、特殊な魔法石によって形成されている。そのため、魔力が尽きてはただの地面に過ぎぬ」
「そのための魔力は代々の時空龍が供給していたんだ。それだけで、500年は保っていられたからね」
なるほど、どうしてただの大陸が浮かんでいられたのか不思議だったが、そういう事だったのか。と、納得した所で一つ、疑問と共に嫌な予感が浮かんでくる。
「今、何年目だ?」
「・・・今年で498年目だ」
あと、2年・・・長いように感じるが、今までの数百年間も親が帰らなかった事を考えると、希望は限りなく薄いだろう。
と、俺が考えていると、今まで何やら考えていた藍雛が嬉々とした表情顔を上げる。
・・・さて、嫌な予感しかしないんだが。
「魔力を与えるのは、必ずしも時空龍でなければいけないのかしら?」
「無理では無いが・・・、そんな魔力量を持つ者など―――」
「分かったわ。さあ、新しい生命の誕生といきましょうか、緋焔?」
「・・・What?」
意味が分からない・・・と、言いたい所だが、生憎俺には意味が分かってしまっている。流石元同一人物というだけあって、恐らく藍雛も同じ事を考えているのだろう。
「ふざけている場合ではないのよ? この大陸はあと2年もすれば落ちてしまうわ。これまで、龍達が見られなかったのも、恐らくはこの大陸のおかげよ。・・・龍達を絶滅させるなんて事はしないわよね?」
心の底からNOと言いたい。が、藍雛の表情と、龍達の必死な表情を見ると、そんな事を言ってはいられない。
「・・・分かったよ」
藍雛が言い出しっぺなんだし、藍雛にやらせたいと 思うんだがまあ、まず間違いなくやらないだろう。というか、俺にやらせるだろう。俺は早々に諦めるという選択肢しかないのか・・・。
「はぁ・・・で、どうするんだ」
「卵の殻に直接魔力を送ればよい」
白龍はそう言うと手本を見せるように、卵に魔力の塊を押し付ける。まあ、相変わらず反応は無いが。
「さあ緋焔、頼んだわよ」
藍雛はいつの間にか出したテーブルと椅子に座って紅茶を飲んでいる。・・・藍雛はまだいい。慣れた。だがしかし、なんで黒龍も藍雛に薦められるがままに、一緒に紅茶を飲んでいるんだ?しかも、黒龍の手にちょうどいいサイズのティーカップまで用意されてるし・・・。
「・・・始めるぞ」
よく考えたら、相手をするだけ無駄だな。うん。さっさと終わらせよう。
そう決めた俺は、鳥の巣の中に入り卵に手の平をそえる。そして―――
―――魔力を一気に卵に送り出す。
作者「どうも、神薙です」
エセ「タフナや」
作者「更新遅れちゃってホントにすみません。中間テストだったり赤点ギリギリだったりして全然執筆が進まなかったんです。マジですみません」
エセ「バカやな」
作者「お前には言われたくない。とにかく、頑張りますよ」
エセ「んじゃ、次回予告かいな?」
作者「次回も今回に引き続き回想です。――感想とかもらえると頑張るカモナー・・・ごめんなさい」
作者は、ご意見、ご感想、誤字脱字報告などなど、常時お待ちしています。