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別世界の道化師  作者: あかひな
二章
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第二十七幕 道化師と風龍

「伝説ねえ……」


 今現在、俺と藍雛はカトレアが言っていた龍が多く目撃されているというポイントに向かって空を飛んでいる。

ド○えもんのように竹トンボもどきで飛んでいるわけでは無く、羽を生やして飛んでいる。生やしてとは言っても、直接くっついているわけでは無く、体から少しだけ離れた辺りに根本がある。

 その羽というのが、やたらと個性的なのだ。まず、俺の羽は一点のシミや黒さすらない純白の羽だ。しかし、その形状というのが天使のような羽ではなく、一般的に想像される悪魔の羽なのだ。しかも、黒や赤ではなく真っ白。

その羽が対になった状態で4組も俺の背中に生えている。

 俺はただ、藍雛の飛んで行った方が早いんじゃないか、という意見に基づいてただ羽を創造しただけなのに……不思議だ。


「どちらにしろ、龍が見られるのだからいいじゃない。上手くいったらペットにでもしましょう」


 隣で、この世界においてかなり高い位置にいる龍をペットにするとのたまっている藍雛の羽は、俺とは反対に真っ黒で他の色が全く見受けられない。

形状も、俺とは正反対で藍雛の羽はまさしく天使の羽のようなのだが、色が色なので天使と言うよりは、堕天使とか烏を彷彿とさせる。ちなみに、俺と同じく藍雛の羽も対になっていて7組生えている。


「……大きかったら飼えないだろ。そんな事より、フィアとマウを置いていってよかったのか?」

「いいでしょう。今回は危険があるかも知れないのだから。もしも、マウやフィアの体に傷でも付いたら、この世界を壊してしまうかもしれないし」

「……やりそうで怖いな」


 それ以前に、龍を相手にして危険があるかもしれないって言うのがな……。いや、間違ってはいないがつくづく人外だな。




 ……と、まあそんな会話をしながら飛び続けて一時間程。

 カトレアが言っていたポイントに到着したみたいなので、俺達は地面に降りて羽を消す。

 辺りは草原になっていて、所々に木が生えてはいるものの見通しがよく、障害物という障害物も存在しない。


「……何も無いな」

「確か、カトレアは天龍の巣と言っていたわね。名前通りなら、やっぱり空かしら」


 試しに俺達は空を見上げるが、雲が浮いているだけで他には何も無い。


「無いな。案外、地中だったり―――」


 と、俺がそこまで言った所で藍雛がいきなりリミッターを解除する。




Side 藍雛――――――――――


 空を飛んで着いた場所は、所々に木が生えているだけの草原で、隠れられるような場所も無かった。


「……何も無いな」

「確か、カトレアは天龍の巣と言っていたわね。名前通りなら、やっぱり空かしら」


 そう思った我達は、空を見上げてみるが雲以外は何も無かった。






 あくまでも、『雲』以外だけれど。






 我は能力を制限しているリミッターを、世界を破壊しない程度に解放する。同時に、周りの空間がギシギシと悲鳴をあげ、軋むが関係は無い。


「藍雛!」


 我は制止する緋焔を無視し、空を覆っているのかと見間違うほど大きな雲に向かって、直径5メートルほどの円形の光線を放つ。同時に、周りの地面は衝撃で軽くえぐれ、大気は震える。

 光線は雲に向かって一直線に進み、雲を貫き、天をも貫く。


 ……はずだった。


 雲に向かって行った光線は、確かに雲に直撃した。しかし、出来たのはせいぜい雲を吹き飛ばす程度。そして、その吹き飛ばされた雲の中からは今までは雲に隠れて見えなかった、空に浮かぶ巨大な大地が姿を現した。



Side out――――――――――



 いやいやいや、どこの天空の城だよ。雲の中にある空飛ぶ大陸とか一体なんなんだ?


「やっぱり、あっていたわね。さあ緋焔、行きましょうか?」

「……聞くだけ無駄だと思うが、どこに?」


 俺がそう聞くと、藍雛はいつも通りの見た目天使中身魔王の笑顔を浮かべる。


「もちろん、あの大陸よ」

「カトレアは天龍の巣とか言ってなかったか?」

「言っていたわね」

「実は偽物だったとか」

「我の魔法を弾いたのを見たでしょう」

「装備を整えよう」

「なんでも創れるじゃない」

「お願いだから止めない?」


 俺がそう言うと、藍雛はニコニコと笑ったまま考えるそぶりをしてから、俺の方を笑顔で見つめてこう言った。


「嫌よ」


 俺はこの時、魂の芯にとある事を刻み込んだ。

 藍雛は、魔王なんかじゃない。魔神すらも軽く超越してしまうような、悪魔なのだと。と、まあそれを刻み込んだ所で、俺はあの大陸に行く前に一つだけ確認したい事があった。


「一つだけ、確認しないか」

「あら、何かしら?」

「出来るだけ、相手を殺さないようにしよう」


 まだ俺には生き物を殺したことが無い。ある程度の生き物なら殺すはずのこの世界でもだ。そして、そんな感覚は味わいたくない。もちろん、藍雛達も同じだ。


「いいわよ。ただ、相手が必要以上にやってきたら、その時は……」

「分かった」


  藍雛に確認を取った所で、俺は能力のリミッターをある程度解除し羽を創りだし、慣らすように一度だけ羽ばたく。それと同時に、1キロ程先の木が倒れたような気がするが、きっと木のせいだろう。羽の調子はいいみたいだ。隣では、藍雛も同じように羽の調子を確かめ終わったところらしく、俺と同じタイミングでこっちを向く。


「準備はいいな」

「ええ」


 俺達はそれだけ言うと、大陸に向かって飛び上がる。地面がどんどん離れていく光景は、何度見ても不思議なものがある。

 飛ぶ速度はかなり早く、最初は掌程の大きさに見えていた大陸は段々と大きくなっていく。そして、あと少しで大陸に着く。その時、俺と藍雛の間をそよ風程の風が通り抜ける。

 そよ風はそのまま地面に向かって行ったらしく、当たった辺りの地面が吹き飛び、クレーターになる。


「あら、手厚い歓迎ね」


 クレーターの方を向いていた俺は、そう言った藍雛の視線の先を見る。

 そこには20匹程の羽の生えた緑色の龍――というよりドラゴンに近いな――がまるで、俺達を大陸にたどり着かせないための守護のように飛んでいた。


「言葉は通じるのかしらね?」

「さあ? マンガやゲームだとどっちもいるけどな」


 俺達が穏便に事を済まそうと、会話でもしてみようかと話していると一番先頭にいる、この中で最も色の濃いドラゴンが爆音のような咆哮をする。それによって、大気が震える。

 普通の人ならこれを間近で聞いただけで、吹き飛ぶのではないかと思う程だ。……まあ、俺達には関係ないが。そんな事より、この咆哮はどう考えても……。


「帰れって言う意「臨戦体制ね」・・・もうやだこの世界」


 帰れって言う意味でいいじゃないか。もうさっさと帰って、マウの頭を撫でたいんだよ。しかし、隣にいる藍雛は嬉々とした表情で、その上、キラキラした純粋な眼差しで俺を見つめてくる。


「でもな……」


 俺が少し言い淀むと、藍雛は軽くため息を付く。


「はぁ。しょうがないわね。我が一人でやるから、緋焔は見ていてちょうだい」

「あ、藍雛?」


 藍雛はそう言うと、一人でドラゴンに近付いていく。

 待っていてって言われてもな……。行かないなんて俺のゴミにも等しいプライドが許さないし……しょうがない、着いていくか。

 俺はしょうがないから、嫌々、本当に嫌々ではあるが藍雛に着いて行った。

 藍雛はドラゴンと数メートル程離れた辺りで止まったので、俺も横に並ぶ。


「さて、そこを通してくれないかしらね?」

「グオォォォォォ!」

「そう。……交渉決裂ね。《言葉の重み(ミエザルボウリョク)》を知りなさい」


 藍雛がそう言うと、ドラゴン達はそれに反応したように次々と咆哮をあげる。


「五月蝿いわね。とりあえず、《黙りなさい》」


 藍雛がそう言った瞬間、口を開き咆哮しているはずのドラゴンから咆哮が消える。ドラゴン達も、それに気付き、慌てるものが出て来るが、先頭のドラゴンが藍雛に向かって、一際大きく羽ばたく。

 直後、ヒュンという風を切る音がしたと思った瞬間に藍雛の髪の毛が揺れ、一本の糸のような細いものが風に舞う。

 藍雛はそれを手にとり、大きくため息をつく。


「あらあら、自慢の髪が切れてしまったわ。大事な髪だったのに・・・」


 藍雛はそう言って、やれやれと首を振るがそれをした、先頭の龍は疲弊が目に見える程弱っている。

それを見た藍雛はニッコリと笑いながら、殺気にも近い何かを放ちながら言った。


「お疲れのようね? 我達も行きたいし、《案内しなさい》」


 藍雛がそう言うと、ドラゴン達は俺達を案内するように先導して大陸へと向かっていく。


「……チート」

「お褒めにあずかり光栄ね」

「……褒めて無いって」


 俺は最近溜まり始めたストレスを少しでも吐き出すためにため息をついて、ドラゴンを観察しようとそちらを向く。そこには、血走った眼でこちらを向くドラゴン達がいた。

 というか、この世界の生き物はどうしてみんながみんな、こんなに凄い眼力をしてるんだ。ぶっちゃけ下手なホラー映画とかよりも怖いんだが。そして藍雛さん、俺の腕に腕を絡ませているのは何故ですか。


「怖〜い☆」

「嘘を吐くな。あと、せめて星を隠す努力をしろ。星がうざったい」

「ひどいわね、こんなに可愛い女の子が腕を絡ませているのだから、少しはいい反応をしないのかしら?」

「しないな」

「……即答はさすがに傷付くのだけれど」

「傷付け」


 俺が俺に遠慮するわけ無いだろ。少しでもストレス発散しないとやってられん。


「……ばか」

「なにか言ったか?」

「いえ。ただ、使えない上に女の子の扱いも知らないなんて最低と言っただけよ」

「……」


 藍雛はそう言うと、絡めていた腕をスルリと抜いて少しペースを上げて、ドラゴンを触りまくって観察を始めた。




 ……聞こえてるって。呟いたら藍雛にも聞こえるから、口には出さないけどな。





作者「どうも、神薙です」

エセ「今回もまともな戦闘にならんかったな」

作者「今回はさすがにやり過ぎたかなーって反省してる」

エセ「してなかったら俺がどついとるところや」

作者「・・・気をつけます。あと、頑張ります」


作者はご意見、ご感想、誤字脱字報告などなど、常時お待ちしています。

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