第二十四幕 道化師の過去
ちょっとブラックな話になります。
「肉体がある状態で会うのは初めてですー?」
「そうね。何回も会っていたから大して変わらないけれど」
今現在、俺の目の前では自称神と俺と同姓の謎の少女が談笑しているという、意味不明な現象が起きている。
てか、色々と説明してくれるんじゃないのか。
「さて、ミリアン。そろそろ説明してあげないと、緋焔達が呆然としているわよ」
「そうですー? でも・・・」
ミリアンはそう言うと、表情を陰らせながら俺を見る。一体なんなんだ。
「分かってるわよ。必要なら我が破壊するわ」
「・・・分かったです。緋焔、フィア、マウ。あなた達にはとある記憶を見てもらうです」
ミリアンはそう言うと、手に三つの球体のようなものを浮かべる。
「記憶って、俺の?」
「・・・・・」
俺はミリアンにそう聞いたのだが、何故か藍雛が悲痛な表情をしながら目を背ける。
「黙って見なさい」
ミリアンは真面目な表情と口調でそう言うと、球体を俺達の頭に押し込んだ。すると、頭をおもいっきり殴られたような感覚と共に、意識が落ちていく。
――――――――――――――
ここは小学校?
皆と遊ぶの楽しいな。
でも、鬼ごっこで走るのめんどくさいなぁ・・・。あ、そうだ。鬼が来たら雄太くんに身代わりになってもらおう。
え?何で怒るの?僕が助かったんだからいいじゃないか。
ヒカル君も早紀ちゃんも、なんで無視するの?太一君も涼太君も何で僕を叩くの?いつも仲良くサッカーやってるのになんでいじめるの?嫌いなの?なんでそう言ってくれないの?皆、何で僕を見て笑うの?なんて言ってるか聞こえなくても、分かるんだよ?ほら、また哂った。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデなんでナンデなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?
ソウカ、僕ハイラナインダネ。
ジャア、バイバイダネ?
この場所からたった一歩。
たった一歩踏み出すだけでいい。いつも通り歩くだけ。
なのに体が言うことを聞かない。なぜだろう。
こんなにもそうすることを望んでいるのに、体が、生物としての本能がそれを拒絶している。
今は体の所有権は僕ではなくなっていた。その時だった。
少し強めの風が吹いた。
暗い。狭い。痛い。何も見えない。
どうして僕はここにいるのだろう。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして・・・。
――――――――――――――
「っ! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あら、意外と早く終わったわね」
何なんだ、あの最悪な記憶は。腹の底に真っ黒くてドロドロとしたものが渦巻く感覚まであるし・・・。
「どう? 記憶の感想は?」
「最悪だよ。って、マウ達は?」
「途中で耐えられなくて起きたから寝かせて記憶を消したです。やっぱり、女の子にはきつかったみたいですー」
「それでは、我が女の子ではないみたいじゃあないみたいじゃない」
二人は、笑いながら楽しそうに会話をしているが、俺はとてもそこに入る元気は無い。
「そう言えば、緋焔」
「なんだよ・・・」
「あの記憶が誰のものか聞いたわよね」
「・・・聞いたな。そう言えば」
ぶっちゃけ、聞く元気もないし、もうどうでもいいだが・・・。
「あれは、我と緋焔の記憶よ。正確には我の記憶だけれど」
「そんなわけあるかよ!!」
気がつけば、大声で怒鳴っていた・・・。
Side 藍雛―――――――――
「嘘といわれてもね・・・。真実は変えられないのよ?例えそれがいくら残酷な結果であっても」
「そんなわけない!だって俺は―――」
「小学校5年以前の記憶がない・・・でしょう?知ってるわよ。今からそれを踏まえて説明しようというのに・・・せっかちは嫌われるわよ」
まったく、ホントにせっかちで困るわね。まあ、緋焔だし許すけれど・・・。
「緋焔、あなたは記憶が無いにもかかわらず、どうして違和感無く霧城の姓を名乗っているのかしらね?」
「それは・・・」
「竜哉さんや、美奈さんが優しかったから? それもあるわよね」
「・・・・・」
すると、緋焔は黙り込む。どちらかというと、反論したいけれど証拠が見当たらなくて反論出来ないと言ったところかしらね。・・・まあ、我としては好都合だけれど。
「ねえ、緋焔。記憶の間に鏡を見たシーンがあったはずよ。その時、顔を見たんじゃないかしら」
すると、緋焔はあからさまに驚愕の表情を浮かべ、取り乱す。それこそ、見ていて痛々しい程に。
「見てない! 俺は知らない!」
「嘘をついても無駄よ。あれは我と緋焔の記憶なのだから」
「嘘だ!!俺にはあんな記憶は無い!」
「幼い頃の記憶が無いあなたがいくら言っても、説得力はないわね」
「うるさい! 俺は―――」
「いい加減にしなさい!」
しょうがないわよね?いくら我の片割れで、我が世界一寛容だと言っても限度はあるもの。
「さっきから聞いていれば現実逃避ばかり・・・。そんなに我と同一人物であるのが嫌かしら? それとも、最も嫌な記憶を呼び起こされたのが嫌なのかしら?」
「・・・・・」
「なら、いい事を教えてあげましょう。あれはあなたであってあなたでは無いのよ」
我がそう言うと、緋焔がゆっくりと顔を上げこちらを向く。
「俺じゃ・・・無い?」
食いつく所はそこなのね。若干、苛立つのは・・・まあ、我慢してあげましょう。
「そうね・・・。それじゃあ、一から説明してあげましょうか。ミリアンも、他人のフリなんてしていないで手伝いなさい。あなたも一枚噛んでいるのだから」
「むー。せっかく、楽が出来ると思ったのに残念ですー」
楽なんてさせる訳無いじゃない。なんで、我だけが面倒な思いをしなくてはならないのよ。
「さて、元々はその体は我のものだったのよ」
「ちょっとストップ」
我が事情を説明しようと最初の一言を言い出した所、早速出鼻をくじかれる。
「それじゃあ、俺は最初は女だったって事か?」
「そんな訳無いじゃない。気持ち悪い」
「気持ち悪いって・・・」
気持ち悪いものは気持ち悪いのだからしょうがないじゃない。
「話が逸れてしまったわね。続けるわよ。昔の我は横暴で自己中心的だった為に、あんな目にあってしまったのよ」
「・・・・・」
「そして、記憶の最後の通り、我は自ら絶とうとしたわ。しかし、人間が思ったより頑丈で死ねなかったのよ。その時ね、ミリアンに初めて会ったのは」
我は余りにも錯乱していて、あまり記憶には残っていないけれど。
「そうですー。あの時のあなたの余りにも純粋な願いを見て、ちょっとだけ面白いそうだったから、めんどくさい仕事を放棄―――じゃなくて、ちょっとだけ抜け出して・・・でもなくて・・・」
「ミリアン、どんどん深みにはまっていくわよ」
全く、元々ない神様の威厳が、カケラも無くなってしまうじゃない。ゼロどころかマイナスじゃないかしら。
「とにかく、私はそれに惹かれて行ってみたら、一人の人間が死にそうになっていたですー。で、せっかくだしお願いを聞いてみたら、助けてって言ってたですー」
あの時はそんな事を言っていたのね。全く覚えていないわ。
「そう言ったすぐ後に、体を残して精神が崩壊しちゃったんですー。まあ、願いを聞いて何にもしないほど私も鬼畜じゃないから、助けてあげたですー」
「いやいや、お前、俺に何度刃物を向けて殺そうとしたことか・・・。しかも、理由テキトーだし」
「ちっ」
「舌打ち!? 神様ともあろう奴が舌打ち!?」
まあ、今のは緋焔が悪かったわね。舌打ちをするミリアンもよくないけれど。
「まあ、それでも、知りもしない相手の人格を含めた精神なんて創り直せなかったので、時間をかけてじっくり直す事にして、その間に代わりの精神を創ったですー」
「それが・・・俺」
緋焔はとっても分かりやすく落ち込んでいる。いえ、落ち込むというよりは、ショックを受けているのかしらね。まさか、自分が仮の精神とはおもわなかったのでしょう。けれど・・・。
「ミリアン、一つ言い忘れているわよ」
「うー・・・。ただし、私はここでミスをしたんですー」
「ミス?」
「仮の精神を間違えて定着させてしまったですー。だから、回復させる事は出来たけれど肉体に定着させることが出来なかったんですー」
「そのせいで、我は肉体の中に残っている人格だけになってしまったのよ。まあ、丁度いいことに緋焔が能力を手に入れたから、出てきたのよ」
作者「おはようございますこんにちわこんばんわ。神薙です」
エセ「ついに出たんや」
作者「まあね。この話がまだ公開されて無い時から出る予定だったキャラだし、出せてよかったよ」
エセ「元々はどの辺で出す予定だったんや?」
作者「15幕くらいかな」
エセ「めちゃくちゃズレとるやないか!」
作者「うん。すべてはファンネルが悪い。まあ、結果出たんだしオッケーじゃないかな」
エセ「・・・知らん」
作者は、ご意見ご感想、誤字脱字報告などなど、皆さまからの声を常時お待ちしています。・・・てか、くれたらもっと頑張りまs(殴