第二十二幕 道化師とお姫様?
「すごい人ね」
「そうだな。ここまでの人混みは秋葉原以来だ」
「・・・? ヒエン、アキハバラって何?」
「俺の居た世界の街の名前だよ」
俺は隣で質問をするマウに、簡単に答える。
そんな俺達がいるのは、この国で三番目に栄えている街であり、俺達の目的地であったネイトという街だ。
流石、国で三番目に栄えているというだけあって、大通りはとても活気があり人でごった返している。
「姫様のいる城までは大体一時間くらいだ。面倒だから馬車で大通りを突っ切る」
「突っ切るって・・・そんな事して大丈夫なの?」
さらりと無茶苦茶な事を言い出すファンネルを諌めようとするフィア。
「大丈夫だ。大体、自分から轢かれにくる奴もいないだろ」
ファンネルはそう言うと手綱を握っている従者に、そのまま城に行く旨を伝える。
さて、時間もちょうどある事だし、回想を使って襲われてからの事を話そうと思う。回想って便利だな。
――――――――――――――
辺りは砂埃が舞い、俺の向いている方向の地面は一直線に数十メートル先までえぐれている。流石、ツンデレビリビリ中学生のレールガン。威力がハンパじゃないな。あ、もちろん、盗賊団には当ててないよ?ギリギリの所を通るように打ったから、50センチも差は無いけど。・・・まあ、それでも衝撃波で吹っ飛んでるのもいるみたいだけど、一応辺り一面に魔力でクッションを作り出したから大丈夫だとは思うけど。
「さてと」
俺は後ろで縛られているリックのさるぐつわをまず外してやる。さるぐつわといっても、ただ、口に布のような物を噛まされていただけなので、ナイフを創り、切ってやる。ついでに、後ろで気絶している盗賊団も一人残らず、オリハルコン製の鎖で縛り上げて置くのも忘れない。
「ひ、緋焔さん・・・」
リックはさるぐつわを外しても、まだ呆然としていて、俺の名前を言うのがやっとのようだった。
「お待たせ、リック」
「い、いえ。待ってはいませんでしたが」
「ならよかった。ほら、さっさと馬車に戻るぞ。皆が心配するからな」
「は、はい。じゃなくて、盗賊団はどうするんですか! って・・・皆縛られてる?」
「ああ。お前のさるぐつわを切ったついでに縛っといたから。ちょうど、他の隊の馬車も来た事だし、そのうちの一人に先に報告に行ってもらっておけばいいだろ」
「まあ、そうですけど・・・」
リックも不承不承ではあったが、なんとか納得してくれたらしく馬車に戻ろうとする俺に着いてくる。
・・・まあ、いない間に魔物とかに襲われても可哀相だし、一応、中にいる間は生命の心配が無くなる結界でも張っておくか。
それから、俺達は後続の騎士団を一時停止してもらい、ファンネルに許可をとったあとに騎士の一人を先に行って簡易報告をしてもらい、盗賊団は後から来る別の兵士に連行されるらしかった。ちなみに、なんかあの盗賊団とそのボスは指名手配されていたみたいで、後で報酬金をもらえるらしい。
リックも他の奴らもいらないらしかったので、俺が向こうに着いたらお手柄ごと報酬も貰う事になった。あれだな、こういうのを棚からぼたもちって言うんだよな。
――――――――――――――
まあ、そんなこんなで襲撃はあったが、その後は何があったというわけでも無く、多少の遅れはあったが無事に街に着く事が出来たわけだ。
そして、今に至る。
今、俺達は城の中に通されてお転婆姫に会うために廊下を歩いてるんだが・・・。
「ちょっと、ファンネル。まだお姫様の所まで着かないの?」
「あと10分もしないうちに着くから、もう少し我慢してくれ」
その距離が長すぎる。俺達は、回想を始めてからすぐに城に着き、それから謁見の間に向かっているのだが、既に歩き始めて数十分は経っている。外から見たときから、大きい城だとは思っていたが、実際に歩いているとかなり大きい。
「ふふっ。ヒエン、楽しそうだね」
俺が周りをキョロキョロと見ながら歩いていると、隣を歩いていたマウが俺を見てクスッと笑う。めちゃめちゃ可愛い。
今すぐ持ち帰りたい気分だが、俺は犯罪者になるつもりは無いので、早々に諦める。・・・いつか本当に連れて帰ろうという僅かな野望を胸に秘めて。
「城とかに入ったのは始めてだからな。いろいろ見てて楽しいよ。というか、そんなに変か?」
「全然、ヒエンらしくて、いいと思うよ」
マウがそう優しく微笑む。微笑んでくれるのは嬉しいんだが、すれ違うメイドさんや執事がチラチラと見てくる姿を見ると、ちょっと悲しくなる。
そんな風にマウの可愛さに癒されながら歩いていると、見たこともないほど大きく、豪華な装飾が施されている扉に到着する。
「この先が謁見の間だ。多分、姫様の身の安全の為に兵士が何人かいる筈だ」
「身の安全ね・・・。そんなことするつもりは毛頭ないんだけどな」
「まあ、諦めてくれ」
ファンネルはそう言うと、扉に手をかけてゆっくりと開ける。
「俺達は離れるから、後は自分達でどうにかしてくれ。・・・くれぐれも変な事はするなよ?」
ファンネルはそう言うとスティラを連れて、中に入っていってしまう。
「中へ」
俺達は近くにいた兵士に促されるままに、赤絨毯がひかれている室内に入る。
中はとても広く、学校の体育館の2倍か3倍くらいの大きさがある。天井からは一定間隔ごとにシャンデリアがあって、かなり豪華だ。豪華なんだが正直、すごく居心地が悪い。
「ヒエン、周りの人達が怖いよ」
マウがこう言うのも当然で、現在、俺達はファンネル達を除く室内の全員に、視姦のごとく凝視されまくっていて、その眼力がハンパないんだ。
どのくらいかというと、ジャイ○ント馬場とアント○オ猪木を眼力だけで同時に気絶させられそうな位凄い。まあ、実際出来るかは知らないけど。
「さて、緋焔と言ったかの」
しばらく硬直状態でいると、玉座に座っていた黒を基調としたドレスを身に纏ったマウくらいの女の子が口を開く。
間違いなくこいつがお姫様だよな。・・・何と言うか、ホントにテンプレだなぁ。
「おぬしが異常な魔力を有した者であるとして間違いはないな?」
「確かに、他の者よりは魔力を持ち合わせていますが」
「証拠は?」
「・・・証拠?」
俺は予想外の質問に眉をひそめる。
「そうじゃ。ファンネルの報告によれば、他を圧倒するほどの魔力を有しているというが、生憎、私には相手の魔力量を見ることができないのでな」
真実5割といった所だろう。多分、俺がどの程度戦力になるのかを見るという目的もあるんだろうな。
俺がなんと答えようか考えていると、俺の後ろにいたフィアが俺に耳打ちをする。
「緋焔、あの娘・・・」
「探りを入れてる・・・だろ?分かってる」
俺も他に聞こえないように、静かに答えるとフィアは静かに引き下がる。
「それで、どうなのじゃ?」
姫様が続きを促すがやっぱり、どうも裏に隠してる思惑がな・・・。
「どの程度の事までなら、よいのでしょうか?」
「・・・ほう? まるで出来ぬ事が無いような口ぶりだの?」
「その通りです」
俺がそう言うと、俺達以外の全員が一気にざわめく。中には、馬鹿にするような言葉も混ざっている。・・・さすがにちょっと腹立つな。頭だけ出して、体はコンクリートて固めるか。
「気が変わった。今、俺達の事を馬鹿にした兵士を抵抗出来ないようにする」
俺はそう言い終わると同時に、俺達の事を馬鹿にした兵士5人を頭だけ出してコンクリートで固める。もちろん、ただのコンクリートではない。魔法を無効化させる特別仕様だ。
「緋焔!」
「ファンネルはちょっと静かにしててくれ。・・・お前だってあいつらが何て言ったか、聞こえてなかった訳じゃないだろ?」
「・・・・・」
ファンネルが俺を止めようと声を荒げるが、俺がそういうと静かに引き下がる。が、外野はまだ口うるさく何かを言っている。まあ、聞く気は無いからあいつらの声だけ遮断してあるけど。
「緋焔」
その様子を何も言わずに見ていたお姫様が、口を開く。すると、さっきまでのうるささが無かったかのように静まり返る。
「おぬしに、我が国の兵士「断る」なぜじゃ!」
「何故? つまり、人殺しをしろって事だろ? 第一、この国に何の思い入れも無い」
一応、思い入れが全く無い訳じゃあないんだけどな。こっちのその意思をハッキリ伝えれば、考えてはくれるだろう。
「そこの二人を拘束すると言ってもかの?」
・・・・・拘束?フィアとマウを?
「次、ふざけた台詞言ってみろ。この城、崩すぞ」
「妾はふざけているつもりなど毛頭ない。この戦争で勝てる代わりに、二人が犠牲になるだけなら、それほど良い事は無い」
・・・・・ああ、もう要らないな。
俺はこの城の城壁を壊す。ただ、崩すだけでなく、城壁に使われていた岩は全て砂に変える。
音すら無く、城壁は原型とはほど遠い状態になる。
「緋焔!」
「うるさ――」
うるさい。そう言おうとしたが、それは叶わなかった。
フィアが背後から抱き着き、俺の集中は完全に霧散していったからだ。
理性が戻っていくのに比例していくように、俺の意識は闇に落ちていった。
作者「どうも、神薙です」
エセ「毎度お馴染みのタフナや」
作者「さて、今回はというと………特に言うことがなi(殴」
エセ「言うに事欠いて何も無いんかい!」
作者「まあ、描写が下手くそなのは毎度の事だし?」
エセ「そりゃそうやけどな…」
作者「今回はあとがきを早々に切り上げてさっさと次回の執筆に取り掛かるよ」
エセ「…もうええ」
作者「あ、後、次回、新キャラ出ます」
エセ「大事な事あるやないか!」
作者は、ご意見、ご感想、誤字脱字報告など、常時お待ちしています。