第二十一幕 道化師と盗賊
「しかし、暇だな〜」
「しょうがないですよ。それに、もう少しで着くんですからそれくらい我慢して下さい」
「……リックって可愛い顔してるよな」
瞬間、馬車の中の温度が一気に下がったのを肌で感じた。マウは俺を睨み付けてくるし、ミーラは硬直し、レニーは軽蔑としか取れないような視線を送ってくる。
「な、何を言ってるんですか!? 僕は男の子ですよ!?」
「ああ。男の娘だろ?分かってるし、冗談だ」
「……なんか今、若干違う気がしたんですが。まあ、分かってるならいいですけど」
………とりあえず、この馬車内の絶対零度並の温度はどうにかならないのか。いくらなんでも、街までのあと数時間、この空気の中で余裕ではいられないし。
「眠くもないしな〜」
「あれだけ寝れば眠く無いよね」
俺が一人呟くと、マウがそれに反応して言葉を続ける。その姿が余りにも可愛かったので、マウを隣に呼び頭を撫でる。相変わらず撫で心地がいいな。マウも喜んでくれるしいいことだな。……他の人からの視線は痛いが。
そうして、のんびりと街までの時間を満喫していると、ドサリと何かが落ちるような音がして、急に馬車が速度を落とし始め、止まってしまった。
「どうしたんだろうな?」
「馬が疲れたのかも知れませんね。ちょっと、従者の人に聞いてきます」
リックはそう言うと、馬車の前の方に出ていってしまった。すると、レニーが難しい顔をする。
「どうかした?」
「いえ。ただ、さっき休んでいたばかりなのに馬が疲れるのが早いと思いまして……」
「そういえばそうだな。普通に移動してた割には早い」
「様子を見てきましょうか?」
「いや、俺が行ってくる。中で待っててくれ。警戒は怠るなよ」
「分かりました」
俺はレニーにそう告げ、リックが出た反対側から馬車を降りる。この時、既に俺の頭の中には嫌な予想が浮かんでいて、きっと当たるだろうという確信があった。
「あ〜、やっぱりか」
そこには、案の定明らかにゴロツキといった風貌の奴らが大人数。少なくとも20人以上と、そいつらに捕まってさるぐつわを噛まされているリックがいた。
「ん〜! んぐぐ〜〜〜!」
「いや、何言ってるのか分かったらさるぐつわの意味無いだろ」
「おいおい、静かにしてくれよ。あんまりうるさいと静かにさせなけりゃならないだろ。こっちゃ商品に傷を付けたくねぇんだからよ」
「んぐん!?」
これじゃあらちがあかないな。リックには悪いけど、ちょっと心を読ませてもらうか。
「こいつは女みてぇな顔してるからな。変態貴族に高く売れるだろ」
大勢いる盗賊の中の一人、めんどくさいから盗賊Aでいいか。盗賊Aがギャハハハとしゃくに触る笑い方をしながら、大声で笑う。
「んぐぐんぐぐぐんん!(僕のどこが女の子みたいなんだよ!)」
「あー。確かにな」
「んぐぐぐん!? (緋焔さん!?)」
「なんだ? にぃちゃんはそういう趣味か? 金出せば売ってやるぜ」
「んんんんんんん! (嫌だぁぁぁぁぁぁ!)」
「……そんなわけ無いだろ。リックもそこまで嫌がられると、流石に傷付くぞ」
「……てめぇ、なんでそこのガキの言ってることが分かるんだ」
あ……調子にのってやり過ぎたな。まさかばれるとは思ってなかったんだけど。というか、明らかに今のがボスだよな。なんか一人だけ雰囲気的な物が違うし。
「まあまあ、細かい事はいいじゃないですか。それより、リックを返してもらえますか? 早く街に行きたいんですよ」
「この状況でそんな事を言えるとはたいしたボウズだな。どうだ? うちに来ないか?」
「前にもそんな感じの事を言われたよ。断ったけど」
あえて壊滅に近い状態まで追い込んだ事は言わない。というか、言ったら余計にめんどくさい事になりそうだ。
「そうか。なら、商品になってもらうとするか」
ボスはそう言うと、静かに身の丈程はあろうかという、巨大な斧を構える。
「んぐぐん! んぐんぐんぐぐぐんぐ! (緋焔さん! こいつら魔法封じを使います!)」
俺は静かに、一枚のコインを創造する。
「リック、4分待ってろ」
「んぐ! (はい!)」
「嘗められたもんだな!」
ボスは言うのと同時に地面を蹴り、俺との距離を縮めようとする。
「対象を除く敵全員を気絶」
俺がそう言うとボスを除く盗賊全員が、地面に倒れ込み痙攣を起こして釣り上げられた魚のように地面の上を跳ねているいる。てか、気持ち悪いなこの光景。
それを見たボスは駆けていた速度を早める。恐らく、俺を魔法使いとでも思ったんだろうが残念ながらハズレって事で。
「《創造、木刀》」
俺は右手に木刀を創りだし構える。もちろん、ただの木刀じゃない。壊れる事が無いようにそういう木刀を創ったし、俺の魔力を通わせる事が出来て、大破しないようにしてある特別製。人殺しをしないようにするには最適だ。
俺はリミッターを1パーセントよりも少なく解放し、身体能力を特別な人間レベルに設定する。……毎度毎度これじゃあめんどくさいな。今後はずっとこのレベルにしておくか。
「おらぁぁぁあ!」
ボスは叫びながら、俺に向かって斧を叩き付けるように振り下ろす。俺はそれが当たらないように、軌道上に木刀を構える。が……。
「――っ! 《転移》!」
木刀に斧が当たる直前、俺は瞬間移動を使い、ボスから大きく距離をとる。行き場を失った斧は勢いをそのままに地面に刃を向ける。
「ちっ」
ボスは舌打ちをしながら地面に突き刺さった斧を引き抜く。が、刃を喰らった地面が尋常では無かった。刃の部分を喰らった場所は、1メートル程裂け、周りはそこを中心とし爆発が起こったのかと思うほど土が吹き飛んでいる。あのまま木刀で受けていたら、間違いなく力負けをして俺が潰されていただろう。
「ホントに人間かよ。いくらなんでも、力がおかしいって」
「それだけが取り柄なんでな!」
取り柄なんてレベルじゃないだろと心の中で毒づきながら、体のレベルを1割まで引き上げ、斧を木刀で受け止める。すると、さっきまでは受け止める事すらかなわなかったのに、びくともしなくなる。というか、何かが触った感触すらしない。ボスも止められた事に驚いたのか、表情を隠せていない。
俺はその隙を突き、斧を弾き飛ばそうと斧を受け止めている木刀を思いっきり振るう。
ガギンッ
………やべ、やり過ぎた。
俺の目は耐え切れなかった斧が鉄屑となって砕け散る姿を、確実に捉えていて、もはや気のせいとも言えなかった。
「「・・・・・」」
その光景を捉えていたのは俺だけじゃなかったらしく、目の前の盗賊団のボスと、その向こうにいるリックまでも呆然としていた。お願いだから、そんな目で見ないで欲しい。あと、若干中二病を発症しそうな自分が嫌だ。
とりあえず、その隙に俺はリックの少し前に瞬間移動し、ボスとリックとの中間点に立つようにする。ついでに、周りにいた盗賊団の下っ端達はボスの後ろ側に、倒れた後のドミノみたいになるように転移させた。
「おーい」
俺は呆然と前を向いたままのボスを覚醒させるべく呼び掛ける。すると、ボスは錆び付いたロボットのようにゆっくりと体ごとこちらを向く。
「《拘束》」
俺はこちらを向いたボスを、立ったままになるように拘束する。鉄製の鎖じゃあ、引き千切られる心配があるため、オリハルコン製にしてあります。
「危ないから、動くなよ?」
「何を――」
ボスが何をする気だと言い終わる前に、戦闘前に創り出してずっと持っていたコインを軽く上に弾く。
「喰らえぇぇぇえ!」
上に飛んだコインは重力に従って落下してくる。俺はそれを打ち出す。打ち出されたそれは、轟音を引き連れて地面を引き裂き数十メートル先で自然消滅した。
作者「やっと、執筆ペースが戻って来ました」
エセ「まあ、一日一話っている人もいるぐらいやから、まだまだやねんけどな」
作者「さて、今回は戦闘描写がありました。もはや、笑ってしまうほど下手くそでした。精進します」
エセ「無視かい!」
作者「うるさいなぁ…。消すよ?物語から」
エセ「ホントにすまんかったわ」
作者「しょうがないなあ…」
エセ「ホンマすまんかったわ」
作者「当分出番無しで許すよ」
エセ「おn
作者は、ご意見・ご感想、誤字脱字報告などなど、お待ちしています!




