第十四幕 道化師と家族
15万PV、2万ユニーク達成!
端的に説明すると、目の前にはさっきまで俺を殺そうと息を巻いていた人達が一人残らず倒れていた。
「何故?」
上を見るとアドレーも、手摺りに捕まってギリギリ立っていられるくらいだった。
「フィアとマウは!?」
俺は気が付くと同時にフィアとマウの方を向く。
結解は解けていたが、二人は無事で呆然としていた。
「フィア、マウ! 大丈夫か!?」
俺は二人に駆け寄り、軽く体を揺すった。
すると、二人ははっとして目を覚ました。
「緋焔……?」
フィアはまだ頭がぼんやりとしているのか、俺に言った。
「そうだよ。というか、何があったんだよ? 集中してたらいつの間にかあいつら倒れてるし、結解は解けてるし」
すると、フィアは訝しむように俺を見て言った。
「あんた……ホントに緋焔?」
「はあ?」
「魔力の量が明らかに違う。ついさっきまでは普通くらいだったのに……。今は限りが感じられないわよ」
……あれのせいだな。
「んじゃ、証明してやるよ」
「証明?」
「フィアは家の戸棚に大量のお菓子を隠してる」
「フィア……私はお菓子我慢してたのに……」
「マウ、違うのよ?」
うん。やっぱり、ただ証明するんじゃ面白くないもんな。
「フィアは俺が手の甲に軽く、キスしただけで真っ赤になって気絶した」
「あ、あれは……!」
「………」
フィアは真っ赤になって弁解しようとしている。……マウはなんか怖いオーラ纏ってる。
「後は……」
「ああ、もうストップ! 確かに緋焔だって!」
「分かればいいんだよ」
俺はマウを抱き寄せて頭を撫でる。
「この頭の撫で方はヒエンだね」
「頭の撫で方で判別出来るの?」
「うん」
そこまで撫でた覚えは無いけどな……。
「っと、本題から逸れるところだった」
「あ」
あ。って……忘れてたな。
「で、なんで?」
「なんでも何も……。あんたがいきなり物凄い量の魔力を体から放出したからよ」
「……そんなにいっぱい?」
「普通の魔術師が一生かけて使う量の20〜30倍くらい」
「………」
「ヒエンすご〜い」
20〜30倍って……しかも一生かけて使う量の?
ぶっちゃけ全身から冷や汗ダラダラだよ?マウがなぜか嬉しそうにくっついてくるけど、その無邪気さを分けてほしい。
「そ、そんなになるもの何だな」
「普通はありえないわよ。一日で使える限界ギリギリを圧縮した魔力を当てて、やっと拳で殴るのと同じくらい」
「…………」
もう、ヤッチマッタとしか言えない。
「さらにそれを全方向に放出。もろに喰らった人達が心配なくらいよ」
「でも、一応全員死んではいないんだよな……?」
フィアは倒れてる人達を軽く見渡すと、ため息をついた。
「全員無事。アドレーに至っては気絶すらしてないじゃない。大口叩くだけあるわ」
確かにアドレーは立つのにやっとみたいだったが、気絶はしていなかった。
俺はその事を確認するとアドレーの近くに瞬間移動する。
「ははは。緋焔君か。完敗だ」
「アドレー。約束は果たしてもらうぞ」
アドレーは手摺りを背もたれにして座り込んだ。
「ああ。約束は果たそう。今後君達に危害は加えない」
「ああ」
俺がそう答えるとアドレーは驚いた顔をした。
「なんで驚いてるんだ?」
「ワシは……このような生業故に安易には信用されることは少ないのでな」
俺は、心の中でそんなことかとつぶやき言った。
「ある程度は信頼してる。けど、他人をそれ以上は信頼しない」
「………」
「けど、お前は元傭兵だろ? だったら、上手の相手とのあり方ぐらい知ってるだろ」
俺がそう言うと、アドレーはクックックと喉を鳴らして笑った。
「いやはや、そこまで見抜かれるとは思わなかった」
「他の奴ら全員倒れてるって言うのに、お前だけ倒れなかったんだからそれぐらい分かるって」
「そうだな。ワシも随分ともうろくしたものだ」
「知らないよ。そんなこと」
俺はどうでもいいことを受け流しそろそろ帰ろうかと踵を返す。
「帰るのか?」
「もう用事は済んだし、眠いし」
「カイとキリは、ワシの命令とは別で動いていた。君を慕ったのもワシとは関係ない」
「で?」
「よろしく頼むよ」
「できる限りは」
俺は言い終わると同時に、マウとフィアの後ろに瞬間移動し、ばれないように、ゆっくりと近づく。
「わっ!」
「「きゃぁぁぁ!!」」
俺はそのまま二人の肩に手を置く。マウは、しっぽでゆっくりと探ってから振り返り、フィアに至っては振り返ると同時に人の顔ぐらいの大きさの火球を放ってきた。
まあ、避けたけど。
「ヒエンか……」
マウは若干涙目で俺と分かった瞬間しっぽが垂れ下がった。うん。やっぱり、マウの涙目は可愛い。
(ロリコンですー)
(うるさい)
フィアは……こちらは涙目で若干震えている。
「あー……ごめんフィア。やりすぎた?」
「この……」
「へ?」
「馬鹿ぁぁぁ!」
フィアが叫んだ瞬間、俺の足元から周りの酸素を一気に消費しながら火柱が立ちあがった。
俺は、炎に呑まれる前に二人を掴み家に瞬間移動する。
「ふー。ギリギリセーフ」
「フィアもいくらなんでも危ないよ」
マウに諭されたフィアは黙るしかなく、俯いて黙ってしまう。
「ごめん、フィア」
俺はそう言いながらフィアを抱きしめる。………あれ?なんで?
「馬鹿ぁぁぁ!」
ゴスッ
薄れ行く意識の中、マウが呆れた顔をしていたのは間違いであってほしい・・・・・。
目が覚めた時、俺は自分の部屋のベッドにいた。でも、帰って来てからの記憶があやふやなのは何故だろう。…………うん。思い出せない。
とりあえず、俺は朝食をとろうとマウとフィアの部屋に向かい、ノックをしてみる。
「おはよう〜って、いないし・・・」
フィア達は部屋にいない。俺はキッチンの方にいるのかと思い、キッチンに向かう。
そこで二人は笑いながら楽しそうに朝食を作っていた。今朝食を作ってるという事は俺はいつもより、早く起きたんだな。
「おはよ〜」
「あ、ヒエン。おはよう」
「おはよう」
上から順に俺、マウ、フィアといった順番で挨拶をする。………今更だけど、握手が通じなかったのに他が通じるのは何故?
そんな事を考えながら椅子に座り、朝食の準備をするフィア達を眺める。
マウは思ったより手際がいい。こっちで野菜を水にさらす間にフライパン(形が同じだからいいか)で、目玉焼きを作りながら、更にもう一方でドレッシングを作っているが、そつがなく見ていて料理が上手いという事がよく分かる。
フィアは、その横で魔法で炎を使ってフライパンに火を付けている。
「緋焔も見てないで手伝ってよ」
「手伝うって何を?」
「えっと、お皿出して」
「了解」
俺は皿を棚からテーブルに瞬間移動させる。
と、ここで大事な事を思い出した。
「フィア、魔法教えてくれるんじゃなかったの?」
「あー。アドレーのせいですっかり忘れてた。でも、なんでもできるんだから魔法なんて習わなくてもいいんじゃない?」
「いや、この能力は目立つからな。出来るだけ魔法にしたいんだ」
実際、創造とかの魔法も目立つんだが……。まあ、一応魔法だからいいだろ。
「ふーん」
俺がそう言うと、フィアは納得したのかしてないのかよくわからないような生返事をする。
「ふーんって……。聞いたのはフィアだろうが」
「教えないわよ」
「すみませんでした」
瞬時に額を地面につける俺。体が強化されたおかげで余計に早い。
「分かればいいのよ。緋焔、今日は用事無いわよね」
「ああ。特に無し」
「じゃあ、朝ごはんが終わったら外で特訓ね」
「は〜い」
何故マウが返事するんだ?
「私も出来たら一緒に特訓してもらうからだよ」
「……あれ? 今俺喋らなかったよな?」
「顔に出てたもん」
今後気をつけようと心に誓った瞬間だった。
――――――――――――――
「ファンネル隊長! 王都騎士団準備完了致しました!」
「分かった。そのまま待機だ」
「はっ!」
本来、王都騎士団はわざわざ部隊を率いての行動はしない。ましてや、何十人もの人数を引き連れて村を尋ねるなど例外中の例外。
しかし、その例外は起こった。
昨夜、ウィルという村の外れの館近くで膨大な量の魔力が放出された。普通の魔法を使う者が放出できる量ではない。
その原因究明。そして――ありえないが――人間がそれを行ったのなら害の有無を確認した後、王都まで連行しろとの、王直属の命令だった。
「スティラ」
「は〜い? 呼びましたか隊長?」
呼びかけに答えたのはこののほほんとした雰囲気を纏った緑色の髪をした女性。
「……お前はもう少し副隊長としての威厳とか無いのか」
実力、容姿共に悪くないのだがこの雰囲気のせいでイマイチ実力を感じられない。
「無理ですね〜。で、私を連れて行くんですか?」
「ああ。お前なら魔力探知も出来るだろう」
「これだけ大きいと隊長でも分かると思いますけどね〜」
「まあな……」
俺は一応魔法は使えるが、あくまでも補助にしか使わない。スティラは反対に魔法を主とした戦闘を行うので、俺よりも魔法に特化している。
「捜索を開始する! 同行するメンバーは、俺、副隊長と、ラフェスタ、リックだ! その他は要請があるまでは待機」
俺は部隊の全員に聞こえるように声を出し、待機させる。
「我が家名にかけて全力を尽くさせていただきます!」
「えっと、右に同じく全力を尽くさせていただきまひゅっ!」
……答えた順に言うと、先に答えたのがラフェスタ。
金髪、女性の中では少し高い背をしていて剣のみを扱うが、その腕は一級に近いものがある。
いつも毅然とした態度で騎士道を重んじる。当然というか、浮いた話は一つも聞かず、最近は両親に婚約を迫られているとかなんとか。
後に言い最後に噛んでしまったのがリック。
茶髪で、男にしては少し低めの背をしている。先程ので分かるように、内気というか他人と接するのが少し苦手ではあるが、机上の空論と言われたとある魔法を個人で完成させた実力者でもある。
性格はこんなのではあるが、騎士団の高位魔法隊に属し小隊を任せられる程で、部下からの人望はとても厚い。
「今回は捜索となっているが、お前達も分かるように殆ど場所は判明している」
「してるんだよ〜」
「…………」
「は、はいっ!」
ラフェスタもリックも、いい加減スティラには慣れているので、反応は薄い。
「恐らく、今回は戦闘になると思う。リックは後方からの援護攻撃、支援をしてもらう。
ラフェスタはリックの支援だ。相手が相手だ。無茶はするな」
「はい」
「分かりました」
俺は二人に主な作戦を伝える。
「隊長、私には~?」
「副隊長は主に魔法を使用しながらの接近戦を頼む」
「了解ですよ~」
「せっかくの王直属の命令だ。手を抜くなよ」
「「「はい!」」」
作者「まず、お詫びを・・・」
エセ「どうかしたん?」
作者「いや、とても中途半端なところで終っているから・・・」
エセ「今さらやないか」
作者「それを言われるとキツイ・・・」
エセ「やろ?」
作者「さて、前回に続き次回予告です」
エセ「出番は?」
作者「無い」
エセ「・・・orz」
作者「次回は緋焔が魔法を覚えます。ただし、それだけで終わる確率が・・・」
エセ「ダメやん」
作者「うるさーい!次回も、作者の汚い文章を理解できる理解力を持ってお待ちください。お願いします」
作者は、常に皆さまからの意見、感想などをお待ちしています。