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別世界の道化師  作者: あかひな
序章
14/94

第十三幕 道化師の昇華

 ……体が動かない。

目が覚めた俺は、ゆっくりと目をあける。


「気分はいかがかね」


 初老の男の声。聞き覚えがあり、おそらく俺が最も嫌っている人物。


「アドレー!」


 俺は豪勢な食事用のテーブルの前にイスに座らされていた。しかし、体は鎖でつながれていた。

 横には、フィアが座らされていた。俺とは違い、鎖でつながれてはいないようだったが。

アドレーはその反対側で、ゆったりと食事をとっていた。


「客人を前にしてすまんね。つい先ほど帰ったばかりなのだよ」

「マウをどこにやった!」

「静かにしたまえ。そう騒がなくても……」


 アドレーは近くにいた召使いのような人に目配せすると、その人が人が数人入れそうな檻をカートで押してきた。

マウは、その中に鎖でつながれていた。


「ヒエン!」

「マウ! 大丈夫か!?」

「安心したまえ。いくら奴隷上がりの獣人だとしても客人には手荒な真似はせん」


 アドレーはいたってマイペースで、食事が終わり、食後のデザートを待っているようだった。


「アドレー。テメエ、フィアを怪我させて、マウを連れ去っていったい何がしたい!」


 すると、アドレーは両手を組み目を細めこう言った。


「端的に言おう。ワシは君が欲しい」

「俺が欲しい……?」


「そう。初めに会った時もワシは言ったが君に断られてしまって一時は諦めたのだよ。だがね……」


 アドレーはそう言いながら俺の後ろを見る。

俺もつられるように後ろを振り返る。そこには、カイさんとキリさんが立っていた。


「カイさん! キリさん!」


 俺は二人を見ながら叫んだ。だが、二人は視線を地面に落とした。


「そこの二人はワシの手の者の中でも中々でね。君はそれを難無く叩き伏せたという」

「だからか……」


 体が震える。









 悲しみではない。









 楽しいからでもない。









 純粋な憤怒。






 自分が欲しいものの為に関係の無い者に危害を加えたという、事実に対する怒り。


「では、再度勧誘しよう。ワシの元に来ないかね。今頷けばあれも、君も無事に帰す事ができる」


 俺は既に思考を放棄していた。憤怒に身を任せ、憤怒の落ち着くまで暴れるつもりだった。

だが……。


「ふざけんじゃ無いわよ!」


 いつの間にか目を覚ましていたフィアが吠えるように叫んだ。

体はまだ完全には動かないようだが、それでも、必死に動こうとしていた。


「緋焔も、マウも、私の家族なの! あんたの自由にできる物じゃないのよ!」


 今度は憤怒に飲まれなかった。フィアが先に叫ばなければ本能のおもむくままに、破壊していただろう。


 俺は周りに気付かれないように、鎖を《破壊》する。


「ふむ、確かに一理ある。が、ワシが交渉している相手は君ではない」

「焼けろ!」


 フィアは恐らく魔法を使うため叫ぶ。しかし……。


「なんで……炎が出ない……」

「この館は特別製なのだよ。せっかくの館を、魔法で壊されては堪らない」


 アドレーは、落ち着き淡々とした口調で言った。


「さて、ではもう一度問おう。緋焔君、ワシの元に来る気はないかね?」

「断る」

「そうか……残念だ」


 アドレーはマウがいる檻の近くにいる人に目配せをする。その人はマウに近づき、剣を振り上げる。


 ガキン


 剣は数メートル上の天井に突き刺さり、マウを切ろうとした人は気絶し、倒れている。


「ヒエン……」

「お待たせ、マウ」


 俺は檻に手をつき、檻を消滅させる。


「ふ、はははははは」


 アドレーは狂ったように笑い出す。


「なんだね、その力は? 見たことも無い! その力、手に入れる!」


 アドレーが指を鳴らすと部屋中の扉は開き、武器を手にした人々がなだれ込む。


「フィアのところに行くよ」

「う、うん」


 俺は震えるマウの手を優しく握り、フィアに向かい瞬間移動(テレポート)する。


「フィア、お待たせ」

「緋焔?! 向こうにいたんじゃ―――」


 フィアはそこまで言い、俺の横にマウがいることに気が付くと顔を綻ばせた。


「ふむ、やはりワシの知らない力を多く持っているようだな」


 いつの間にか落ち着きを取り戻したアドレーは呟いた。到底、他の人には聞こえない音量ではあったが。


「どうするの? マウは助けたし、帰るならこの人達をどうにかしないと」

「帰ろうと思えばすぐにでも、帰れるんだけどね……」


 ただ、ここまでやるとまた後で来そうだしな……。


「あ、そうだ」


 俺はフィアの手も握る。柔らかいなー。なんて、思いつつ痛くない程度にしっかりと握る。


「ちょっ! 緋焔?!」


 手を握られたフィアは真っ赤になっているが、気にしないようにして館の外に瞬間移動する。


 外から見ると館は騒がしく、中で大勢の人達が走り回っているのが分かる。


「……こんな事が出来るならさっさとやりなさいよ」

「……まあ、能力の使い方まだイマイチ分からないから」

「全く……」


 俺は久しぶりに心の底から楽しいやり取りをして、自然と顔が緩んでいた。すると、マウが握っていた手を引っ張ったのでそちらを向いた。


「何、マウ?」

「ヒエン、ありがとう」


 マウはそう言いながら俺を見上げるように見る。

 やはり怖かったのか、若干目が潤んでいて少しイケナイ気分になってしまいそうになるのを頑張って抑える。


 フィアが横で醜い物を見るような視線で、俺を見ているのは気のせいだと思う。


「マウは大切な家族なんだから、そんな事気にしないでいいんだよ。それに、まだ終わってないからね」

「え?」


 俺はマウとフィアを引き寄せると、自分達の周りにドーム状の結解を張る。バリアでも、結解でもどっちでもいいけど。

 俺は自分達から少し離れた所の地中で爆発を起こす。


 ズンッ


 地鳴りのような音が辺りに響き、地面が揺れる。

 俺達は結解を張っていたので大丈夫だが、辺りに砂埃が舞い上から石ころや当たったら大怪我のレベルの岩などが飛んでくる。


「ちょっと緋焔! 何やってるのよ!」

「何って、アドレーを呼び出しただけだよ」

「……何する気なの」

「あのアドレーの壊れようを見たでしょ。もう、やらないように恐怖を刻み込む」


 もう二度とフィアやマウをあんな目に合わせるわけにはいかない。


「ヒエン……」


 マウが心配そうな目で俺を見つめる。俺はその頭をそっと撫でる。


「二人はここで待ってて」


 俺はマウから手を離し、結解の壁から出る。

 一瞬自分で出られるのか心配だったけど、触れてみると水面を触ってるような感覚だった。体は簡単に通り抜け、壁はまるで石を投げられた水面のように波打っていた。


「こっちだ! 外から凄い音がしたぞ!」


 その声を合図にしたように、館の扉から大勢の武器を持った人が外に出る。さっきより人数が多い所を見ると、さっきまで武器を持っていなかった人達もいるんだろう。

 よく見るとカイさんや、キリさんも武器を持っていた。比較的後ろの方ではあるけれど。


「アドレー聞こえるか?」


 俺は叫んだ。


「ここにいる全員に勝ったら、俺は諦めろ!」


 なんか何人かが、大笑いしているがとりあえず無視。


「いいだろう」


 アドレーは館の二階にいた。バルコニーにでて、高見の見物を決め込むようだった。


「ボス! それはねぇぜ!」

「いくらこのガキが強くても数の暴力には勝てねぇ!」


 一番前の列にいる二人が吠えるように言った。


「……ワシが見込んだ者がその程度だと思うのか。慢心は隙を生むと、傭兵の時から言ってあったはずだ。せめて、勝ってからそのようなセリフを言うのだな」


 アドレーがそういうと、吠えた二人は舌打ちし武器を構え俺に向かい走り出した。

 後ろには出遅れた勇気ある者達が続く。

 俺は呼吸を整え、静かに能力(ちから)を使う。


「俺を最強に」


 ギィィィィィ!


 黒板を爪で引っ掻いたときに出る音に近い感じ。あんな感じだけれど、聞いたことの無い音が辺りに響いた。

 さらに、数秒後にはミシミシと言う軋むような音が360゜からする。


(…焔!…………か!…………が軋…………)


 ノイズが混じり過ぎ、誰の声かも判別出来ない。けど、この頭に響く感じは……。


(アホ神?)

(だ……が…………か!)


 今のは分かった気がする。誰がアホ神ですか!だな。

あまりにもノイズが酷いので、俺は前のようにクリアになるようにする。


(緋焔! 何をしたんです!)

(どうしたんだよ。今忙しいから後で……)

(世界が軋んでるですー! あなたは能力(ちから)を使って何をしたんです?!)


 世界が軋む……?


(どういう事?)

(あなたの存在が一気に昇華して、私まで抜いたです! 私の存在なんかでも世界を壊すには十分なのに、それ以上なら今あなたがいるだけで、世界が再生出来ない程に壊れるですー!)

(……つまり簡単に言うと?)

(あなたがチート過ぎでいるだけで世界が崩壊するです)

(……止める方法は?)

(身体中に巡る力があるのは分かるです?)


 俺は意識を集中させる。……あった。でも、身体から零れている。


(なんか、身体からはみ出て零れてるんだけど)

(まずはですね、その力を受け止めている器があるのは分かるです? その器が小さすぎて、力を受け止めきれていないのが原因なんですー。だから、その器をおもいっきり広げるですー)


 俺は、力を受け止めている器に意識を向けると、それを思いっきり広げる。………果てが感じられないほど広がった。広げすぎた感が無いわけじゃない。


(……調節ミスったですー? 私なんかより器が広い……ぐすっ)


 いや、泣けれてもね……。てか、神様より凄い人間って……。


(で、次は?)

(あ、はい。次はその器に蓋をするですー)

(……できんの?)

(大丈夫です! 原理は同じだからできるはずですー! ………多分)


 言われた通り、蓋をする。その時に俺がイメージした蓋は、鍋やらの蓋ではなく、風呂にするようなあんな感じの蓋だった。


(ん、出来たぞ)

(それでオッケーですー。あ、ちなみに今あなたが調節ミスって器広げすぎたり、蓋を変なのにしたせいで私を超えました)

(…………つまりそれは?)

(人間だけど人外ってことですかね。神様超える人間ってどういうことですか)

(ああー。最悪だ)

(あと、私を超えたせいで私のかけていた縛りも無くなりました。命だろうが死者蘇生だろうが関係ないですー)


 わお。俺ほんとに人間?


(とにかく、もう世界は大丈夫です。あと、教えられることはもうありません)

(教えられること?)

(あなたが強くなりすぎて、私でも知らない領域までいったですー!)

(なるほど、了解。いろいろありがとう)


 俺は思念を切る。










 さあ、本番だ。











作者「・・・なんかもうやっちまった感しか無い」

エセ「せやねー」

作者「日付またいで書いたからテンションが違いすぎた・・・」

エセ「・・・で、また次回のことは考えてないんかい」

作者「失礼な! いつまでも学習しない作者じゃありません!」

エセ「おおー。ちゃんと成長してるやん。で、次回は?」

作者「アドレー編の解決。新キャラも出るよ!」

エセ「おおー。楽しみやな。かわいこちゃんか?」

作者「それは次回のお楽しみ。それでは皆さん、作者のぐちゃぐちゃな文章を理解できる理解力を準備してお待ちください!」


作者は、感想、ご意見などをお待ちしています。

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