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別世界の道化師  作者: あかひな
序章
10/94

第九幕 道化師の一時帰省(上)

 えー、ただいま俺は……。


「緋焔どこ行ってたのよー!」


 藍に泣き付かれています。


「えーと、どこに行ってたかって言うと……」

「どこでもいいよ! なんで何にも言わないで行っちゃったの!?」

「いきなりだったから……」


 ホントにいきなりだし。


「それでも……私に言わないなんて……」

「……悪かったな」


 え?なんでこんな事になったか?

こういう時の回想だね。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「さてと……ちょっとフィアの所に行って来たいんだけど……」


 あいつ(神様)がいなくなってから、数十分の間はマウをなだめるのに必死だったがマウが落ち着いたのでフィアの所に誤解を解きに行こうと思ったのだが……。


「行きたくない……」

「フィア凄く怒ってたからね……」


 マウは目の回りが少し赤くなっているが、元気は取り戻したようだった。


「行ってくるしかないよな……」

「大丈夫だよ。フィアだってきっと許してくれるよ」

「だといいんだけどな……」


 俺はちょっと憂鬱気味にフィアの部屋に向かって行き、ドアの前に立ち深呼吸をした。


「よし!」


 俺は意を決し、フィアの部屋のドアをノックする。


 コンコン


 ……………………返事がない。


「フィア? 俺だけど……」

「………さっさと帰れば」


 ……とりつく島も無いな。


「入るぞ」

「……………」


 相変わらず返事は無いがとりあえず、断りは入れさせてもらったので入らせてもらう。


「何の用よ。帰るならさっさと帰ればいいじゃない」

「あー……その事何だけどさ」


 俺は俯いているフィアに近づき、近くにあった椅子に座らせてもらう。


「俺、一旦帰るよ」


 とりあえず、向こうの家族とかに事情を説明しないとならないし。


「そう、よかったじゃない。帰る方法が見つかって」


 ………………………ん〜?なんか、勘違いしてる気が……。


「フィア、なんか勘違いしてないか? 俺は事情を説明しに一旦帰るけど、終わったら帰ってくるぞ」

「え?」


 俺がそう伝えるとフィアは不思議そうな顔をこっちに向けた。


「だって、向こうは退屈だからな。家族とか友達に訳話したらこっちに来るよ」


 俺がそう話しおわるとフィアはプルプルと体を震わせはじめた。


「ふ……」

「ふ?」

「ふざけんなー! 私の心配はなんだったのよ!」


 いや、そんなこと言われても俺のせいじゃないし……。


「まあ、落ち着けって。帰ったら向こうのお菓子持ってきてあげるから」


 昨日、台所の戸棚から大量の甘味――つまり、お菓子が見つかったのだ。

 え?つまみ食いなんてしてないよ?


「………それなら……許してあげる」


 俺の予想通り、フィアは了承した。考え込む仕草をしたときはハラハラしてたけど。


「でも……」

「ん?」

「行き来の仕方分かるの?」


 ……考えてなかった。

すると、上から俺の脳天めがけてハードカバーサイズの本が落ちて来た。


「……何だコレ」


『神様マニュアル〜能力編〜』


「………」


 俺とフィアは、表紙を見なかった事にして表紙を開く。


『本書は神様の力を手に入れたが、使い方が分からない。という方の為の本です』


「……便利なんだか不便なんだか」

「これ、まるっきりあんたの事じゃない」


『まず、出来ることとしては基本的に何でも出来ます。

神様に不可能は無いのです』


「……こうして、あんなのが生まれるんだな」

「………」


『次に使い方ですが、想像しそれが現実に起こると考えれば実現します』


「どんだけご都合主義なんだよ……」

「なによご都合主義って?」

「あー……気にしないで」


『次に、世界移動です。

 ランダムでいい。どこでもいいという場合は今いる世界から別の世界に移動する『穴』または『扉』を想像します。

 行きたい世界が決まっている場合は、その世界に存在する人物、場所を思い浮かべながら『穴』、『扉』を作成してください』


 穴か扉か……。


「このページみたいね。早くやって見せてよ」

「言われなくてもやるよ」


 俺は元の世界のいろんな場所や人を思い浮かべた。

 家族、家、友達、学校。そして、藍。

思い出すだけで顔がにやけてしまうのが分かった。


「何、ニヤニヤしてるのよ」

「悪い、思い出し笑いだから気にすんな」


 フィアは少しだけ気持ち悪そうな顔をしたが、俺が答えると納得したようで微笑むように笑った。


「楽しかった?」


 それを聞かれた時、何故かチクリと胸が痛んだ。理由は分からない。

退屈な時の方が多かったが、友達と話している時はとても楽しかった。


「……退屈な時の方が多かったよ。だけど、バカな話しをしている時は楽しかった」

「ふーん。って、話が逸れちゃってる!」

「っと、そうでした」


 俺は再度向こうの世界の事を思い浮かべる。そして、本に載っていたように『扉』を創ると考える。

 すると、やたら豪華に装飾された『扉』が目の前に現れる。


「……これの向こうに」


 俺はゆっくりとドアノブに手をかけ、ドアノブを回す。

『扉』はゆっくりと開き、俺は真っ白な空間に向かって歩きだした。



――――――――――――――――――――


「気持ちわるっ!」


 俺は扉を通り、真っ白な空間に出たんだが……。

足がついてる感じも無いし、全部真っ白だから距離感も無い。


「どっち行くんだよ・・・」

「はいは〜い、あんたの行きたい世界はあっちやで〜」


 ………………………………………………………………………。


「ん? どうかしたん? 顔色悪いで」


 ………誰ですか、このオレンジ髪エセ関西弁は。


「ああ、紹介が遅うなったな。

 俺は中間地点の管理人をやっとるタフナってもんや。よろしく頼むな」


 タフナと名乗った男―――と言っても俺と同じくらいだけど―――はニッコリと笑い手を差し出した。


「あ、ああ。緋焔だ。よろしく」


 俺は差し出されたタフナの手を握った。


「で、さっき言った通り緋焔の行きたい世界はあっちや」


 タフナはパッと手を離し、さっきも指差した方向に向けて指を指して言った。


「ありがとう。助かったよ」

「ええよ〜。これも仕事やし」

「まあ、ありがとう」

「気にせんといて。ミリアンによろしく言っといてな〜」


 ……ミリアンって誰?

聞こうとして後ろを振りかえるがすでにタフナはいなくなっていた。


「………ま、いっか」


 俺はタフナに教えてもらった方向に向けて歩く。

十分くらい歩くと、いきなり目の前にあの豪華な扉が現れた。


「……またか」


 今度は驚かなかった事を考えると成長してるんだろうな。……いや、慣れたんだな。

 慣れって恐ろしい。

 俺は一息つくと、ドアノブに手をかけ扉をくぐった。


「……緋焔?」

「失礼しました〜」


 ガチャリ


 いやいやおかしいだろ。なんで扉を開けたら藍の部屋に繋がってるのかな?きっと、見間違いだな。きっとそうだ。よし、気を取り直してもう一回。


 ガチャリ



―――――――――――――――――――――


 ……で、今に至ると。


「皆凄く心配したんだよ! おじさんやおばさんも心配したし、クラスの皆も……」

「……悪かった」


 ……そこまで言われると、あっちの世界ではしゃいでいた俺がバカみたいじゃないか。

 でも……。


「藍、今から言うことは全部ホントの事だ。よーく落ち着いて聞いてくれ」

「え? あ、うん」


 藍はキョトンとした顔をしていたが、話すことはたくさんたる。


 俺はあっちの世界であった事を全て話した。藍も最初はずっとキョトンとした顔のままだったが、終盤になると俺の話を楽しそうに聞いていた。


「……というわけで、俺はしばらくあっちの世界で暮らそうと思う」

「………………

「藍?」

「言いたいことはたくさんあるけど、とりあえず正座」


 俺はとりあえず、腰掛けていた椅子から降りて藍の言う通り正座をする。

………慣れですね。分かります。


「緋焔、私が言いたい事分かる?」


 はい、学校モードですね。しかも、声に怒りがこもってるし。


「………分かりません」

「私はね、緋焔が沢山の経験をして嬉しいの」


 ……あれ?なんか違わない?


「でもね、それ以上に沢山の人に迷惑をかけたのは許せない。私だって怒ってる。でも、緋焔のことは昔から知ってるし、緋焔のお父さんもお母さんも今だってどこにいるかも分からないような人だから……まあ、大して驚かないけど」

「はい……」


 すいません、やっぱ違いませんでした。


「今から電話しなさい。で、明日は学校に少しでも顔を出すこと」

「はい……」


 俺は藍に言われた通り、電話をするため携帯電話を開く。が、俺はここで不思議な事に気付く。


「時計間違ってる……」


 俺の携帯が表示していた時間は16時37分だったのだが、藍の部屋にかけてある時計は13時45分。


「あれ? 曜日も間違ってるよ?」


 と、いつもの調子に戻った藍に言われて見ると携帯の表示は水曜日。


「今日土曜日だよ?」

「なんで……」


 もしやと思った俺は、あいつを呼んでみる。


「バカ神」

(バカとはなんですか、いくらなんでもひどいですー)


 ……………………あれ?どこにもいない。


(当たり前ですー。神様は忙しいんですー)


 …………………まあ、いいや。ちょっと聞きたい事があるんだけど。


(その前に思念を繋げてほしいですー。遠くから心を読むのは疲れるですー)


 どうやれと?


(相手を思い浮かべて、喋らないで会話する感じですー。本に載ってたはずですよー)


 …………あの本はお前のか。まあ、いいけど。


(……こんな感じか?)

(はい、よく出来ましたですー)

(で、こっちの世界と向こうの世界って時間の流れ方違うみたいなんだけど)

(あれ? 言ってなかったですー? あっちで2日過ごすとこっちで5日過ぎるですよー)


 ………何て言えばいいんだろう。殺意?殺意だね。


(あなたには私は殺せないですよー)


 ちっ!


(……で、どうにかなんないの? こっちとあっちの時間の流れを同じにするとか)

(出来ますよー。というか、余裕ですよー。夕飯前ですー)

(朝飯前だバカ神)

(あうー、ひどいですよー。まあ、分かりました。あなたが飛んだ世界と、あなたの今いる世界の時間の流れを同じにすればいいですねー)

(そうだよ。じゃあ、よろしく)


 ふう、これでよし。それにしても、神様ってチートだな。万能すぎるだろ


「ねえ、どうかしたの? ぼーっとしてたけど」

「ん、ちょっとな」

「で、いつになったらみんなに連絡してくれるのかな?」


 笑顔がとても怖いです。そして、なんかデジャブ。


「あーと、うん。でもさ、できれば家族ぐらいにしたいんだ」

「なんで?」


 いや、だから笑いながら怒るのはやめてください。ものすごく怖いです。


「なんでも何も……。普通はあんなこと説明して信じてくれるか?」

「………信じないね。私ももう少しで、病院に行きたいか聞くところだったよ」

「だろ。だから……な?」


 下手に説明して病院に行きにされても困るからな……。


「……そうだね。分かったよ」

「話が分かって助かる。で、いきなり行くと混乱させると思うから―――――」

「じゃあ、今すぐ行こうか」


 やっぱ訂正。話が分からない奴だ。


「藍? 人の話聞いてる?」

「これ以上家族を心配させる気?」

「……はい」




なんか、入れるつもりのなかったキャラが入っちゃってます。

はい、あのエセ関西弁です。


エ「誰がエセや!」

作「うわ、なんか出た」

エ「なんかとはなんや。なんかとは」

作「だって、なんか書いてたら自然なノリでできたやつだし・・・?」

エ「俺に聞くなや!・・・で?俺の出番は?」

作「さあ?構図とか一切考えないから分かんない」

エ「・・・ずっとそうしてたんか?」

作「うん♪」

エ「・・・もうええ。で?次回は?」

作「さあ?」

エ「次もか?!次も書いてないんか?!」

作「まあ、学業と兼業だから」

エ「ようやるわ・・・」


 作者は相変わらず、感想、ご意見をお待ちしています。

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