【一話完結】異世界人のおもてなし
暖かい春、日曜日の昼下がり。芸能人が快活に笑うワイドショーから突然、放送が切り替わった。
「緊急速報です。首都に異世界人が現れました。異世界討滅部が出動し、対応にあたっています。住民のみなさんは現地の討滅部の指示に従ってください。国家指定装甲建築内におられる方はそのまま待機し、テレビ、ラジオ、インターネット等の情報を注視してください。その際、間違った情報や根拠のない噂に惑わされぬようご注意ください。多人数での情報共有や、情報ソースの確認をし、独自に危険な行動をしないようお願いいたします。続いて、各地の被害状況は……」
アナウンサーの冷静な声が、全国のお茶の間や街中のスクリーンに届く。この男もまた、それを目にしていた。
「早いな。前回からまだそんな経ってないのに」
伊海 守21歳。異世界討滅部のメンバーである。異世界討滅部とは、異世界の侵略者を討ち滅ぼすための組織。
「アリス、いけるか?」
「…………」
リビングのドア付近にちょんと立っている少女。守が声をかけると、こくんとうなずいた。異世界人襲来の知らせを受けてか、いつの間にかリビングにやってきていた。守は特に驚くことなく、自分の身支度を進める。
「まもるー? いるー?」
玄関から呼びかける声がする。守はまとめた荷物を担ぎ、アリスを伴って玄関へ。
「ずいぶん早いな、六花」
渡瀬 六花20歳。彼女も討滅部だ。腰に日本刀のような武器を下げている。
「たまたま近くに来ててさ。ブザー鳴ったから。あ、アリスもおはよ~」
異世界人襲来の知らせはスマートフォンでも通知される。地震などの災害と同じ。
「今回は早いよね。前っていつだっけ?」
「三年前だな。俺が高校卒業の年だから」
守の卒業式の嬉しくも悲しいムードが一瞬にして緊張に変わった。体育館中にブザーが鳴り響くという、人によってはトラウマになりそうな壮絶な状況だった。
予想外に早く六花と合流できたので、守はこのまま現地へと向かうことに。出現地点は首都だとニュースで言っていた。異世界人の襲来ではよくある場所、よくあるパターン。
「何回目なんだろうね、これで」
「どうだろうな。俺の人生だけでも五~六回来てるけど」
守が襲来を経験したのは、実際は今回で七回目。討滅部として出動するのは三回目になる。
ここ日本には、古くから異世界人と戦ってきた記録がある。その歴史は千年に上り、今となっては日常的に異世界対策が行われているほどだ。重要な建築物は異世界人の攻撃にも耐えられるように設計されている。インターネット上には国による専用のホームページがあり、過去の襲来の情報が数多く載せられている。さらに個人にも、異世界人から逃げるためのスタン装置や、位置を知らせる発煙筒が支給される。
「よし、アリスのもできた。六花は?」
「準備おっけーだよ。いこっか」
「おっしゃ。三、二、一……」
守のカウントダウンに合わせ、三人が同時に空へ飛び上がった。靴として履いた装甲が火を噴き、それぞれの体を飛行させる。
「便利な時代になったよねえ、ジェットブーツ。なんだっけ、正式名称」
「飛行可変式異世界燃料型脚部装甲」
「それそれ」
異世界人は倒すべき敵だが、彼らの持つテクノロジーはこの地球でも活用できる。通称ジェットブーツと呼ばれるこの装甲は人間の体を軽々と浮かせ、空中を自在に飛び、出力を変えれば安全に着陸も可能という優れもの。名前にあるように異世界燃料と呼ばれる特殊なエネルギーを使っている。ブーツ本体に小型のエネルギータンクが取り付けられており、それだけでも一回の襲撃を戦い抜けるほどの持続性を備えている。かつての人類が憧れ、漫画やアニメで空想した未来のテクノロジーそのものである。
「ここ十年くらいでもだいぶ進んだよね」
「それだけ襲撃も多いってことだがな」
異世界のテクノロジーを得るには当然、異世界人と接触しなければならない。死体から剥ぎ取った装置や体そのものが研究機関に送られ、人類のために活用される。それが次なる襲撃への備えにもなる。異世界は一つではなくいくつも存在しているため、様々なオーパーツが地球に集まってくる。
「アリスもすっかり討滅部に馴染んだよね。今日もよろしくね」
「…………」
呼びかけにアリスがうなずく。六花は満足げに笑った。
アリスは異世界人である。かつては侵略者の一人として地球を襲った。当時は彼女と直接対峙した守と六花が、現在は共に任務にあたる仲となっている。
「あの時は大変だったよねえ。上とか学者が納得しなくて」
生け捕りゆえに研究材料として引き渡しを要求されたが、なまじ外見が人間の少女のため守と六花はそれを拒み、人として接しようとした。最終的に、観察対象として側に置くこととなり今に至る。アリスという名は六花がつけた。六花曰く、異世界という不思議の国から来たから、とのこと。
「今じゃ襲撃の初動には欠かせない存在だ。学者は苦い顔してるだろうな。……いたぞ」
眼下に異世界人の団体が見える。三人はジェットブーツの出力を落とし、その前に降り立った。
「今回のは機械っぽいやつか」
「研究機関が喜びそうだね」
怪物のような見た目の異世界人もいれば、機械な見た目の異世界人もいる。今回の敵はいわゆる二足歩行ロボットのような姿をしている。綺麗に二列に並び、行進するように道路を進んでいる。守たちが着地してしばらくして、足を止めた。
「こっちに気付いてるな。何かしてくるか……おっと」
先頭にいる二体のロボットが、腕を守たちに向けた。三本指がばっと開き、人間で言う手の平にある、赤い珠のような部位が露わになる。
「アリス」
守が一声かける。アリスは即座に前に出ると、自身の顔を守るように両腕で覆った。その腕が変形し、巨大な盾を生成する。盾というよりももはや城壁か。
ロボットから光線が発射された。三人の体を丸ごと飲み込むほどの範囲がある光線。何もしなければ一瞬で蒸発していただろう。
「殺人マシーンかあ。割とメジャーなやつだね」
どう考えても非常事態だが、六花はのんきにしている。攻撃の手は止まらないが、アリスの盾に守られ余裕綽々。
このため、アリスは異世界人襲来の際に重宝される。あらゆる攻撃を防ぐシールド。が、それ以外の攻撃手段などは持たない。守と六花が彼女を生け捕りにできた理由でもある。
「目に入った敵を攻撃するタイプだな。なら壊すしか——あ、電話だ」
一方、守も緩み切った様子でスマホを手に取り、タップして通話を始める。
「はい、伊海です。……ええ、渡瀬も一緒にいます。……はい。……はい、了解でーす」
守は短く通話を終え、再びスマホをポケットへ。戦地とは思えない業務的な対応。
「なんて言ってた?」
「ここを片付けて中央区に行けって。敵の本丸を見つけたらしい」
「何もかも早いねー。じゃ、ちゃちゃっとやっちゃおうか」
六花が刀に手をかけた。守も荷物の中から愛用のライフル銃を取り出し、弾を装填。
「アリスはそのまま守っていてくれ。六花、俺はここから援護する」
「おっけー、任せて」
敵ロボットの光線が途切れる瞬間がある。殺人兵器にもリロードがあるのか、そうなるようにプログラムされているのか。詳細はともかく、隙は確かにある。
攻撃の隙間を見極め、六花が風のように駆けていく。並んでいるロボットの先頭二体が六花の刀で切り裂かれた。後続が六花に反応したが、攻撃される前に守が銃で撃ち抜く。残りもまるで倒す順番を決めていたかのような連携で、ロボットを全て無力化させた。
「……およ? 誰?」
六花が別の人影を見つけた。先ほどまでのロボットとは違う、人間のような見た目。髪の長い女性だ。
「まもるー、これも倒していいのかなあ? 人っぽいけど」
六花に呼ばれた守は銃を構えつつ、答える。
「いいだろ。髪の毛ケーブルだぞ」
「え? あらホント」
「なんで近くにいるお前が気付いてないんだ……」
銃は下ろさず六花には呆れつつ、守は敵を見る。遠目ではアリスと同じように人間。だが髪の毛に見える部位は黒く太いケーブル。友好的な目で見ることはできない。
「それじゃ、ほい」
六花が容赦なく刀を振るう。何本かのケーブルが首ごと切り裂かれた。支えを失った首がガシャンと音を立てて地面に落ち、胴体はうつ伏せに崩れ落ちた。
「あちゃ、ケーブル斬っちゃった。また怒られるかなー」
「無視しとけ。町や人の安全が最優先だ」
学者や研究員は戦利品が第一だが、現場はそうもいかない。美品で持ち帰るために怪我でもしたら元も子もない。
「で、中央区だっけ? いこっか」
敵を全て倒し、指示通り中央区に向かおうと六花が歩き出す。
それはかすかな物音だった。気付かなくてもおかしくはない。事実、守も六花も聞こえていなかった。アリスからは遠い。
「おっ……?」
六花が声を上げる頃には、遅かった。
切り落とされたはずの首がひとりでに浮かび、背後から六花を襲った。首の断面からも新たにケーブルが伸び、全て六花へと向かう。
六花の瞳から光が消える。
一瞬だった。ただ一瞬の出来事。
「ああ~……やっちった……」
刀を鞘に納め、引きつった表情で六花は笑う。
油断していた。それは六花だけでなく守も。反射的な居合斬りでケーブルはその全てがバラバラに切り裂かれ、残った頭は銃で撃ち抜かれることとなった。とても戦利品として持ち帰れる状態ではない。
「……まあ、いいだろ。行こうぜ」
こうなっては諦めるほかない。多くは語らず次へ向かう守とアリスに、六花はとぼとぼとついていった。
中央区はさすがに激戦となっていた。空に裂け目のようなものが生まれ、異世界人が次々と転送されてくる。討滅部の人間が多数いるため被害は抑えているものの、きりがない。元を断たなければこちらが消耗する。あまりいい状況ではない。
「おお、伊海。来たか」
裂け目から少し離れた場所に人が集まっていた。現場指揮官が守たちに気付き、声をかけた。
「状況はどうです?」
「あの裂け目から異世界人が湧いてくる。今はその討伐に人を回してるが、裂け目をなんとかしないことには始まらん。放っておけば別の場所にも同じものができるかもしれん。お前たちに裂け目の対処を頼む」
最も重要と思われる任務。それを頼まれるだけの実力が、守たちにはある。
「わかりました。発砲は?」
「避難は完了している。いくらでも撃て」
「ありがとうございます」
守の使う銃の弾丸は、単なる火薬の類ではない。異世界人に対抗するため、異世界のテクノロジーを使って開発されたエネルギー弾だ。装甲建築であろうと穴を開けてしまう。人間に当たればほぼほぼ死ぬので、人がいる場所では使えない。それが今は撃ち放題。
「どうする? 近づいてみる?」
「そうだな……」
改めて裂け目を観察。こうして見ている間にも、敵がどんどん出てくる。
「近くにある建物の屋上に行こう。そこから狙ってみる」
「おっけー」
ジェットブーツなら飛べるとはいえ、空中は危険も大きい。三人は高いビルの上まで移動し、より近くで裂け目を見る。近づいたといっても、裂け目がある場所はまだ高い。距離感がおかしくなる高さと大きさだ。
「撃ってみるか。アリス、シールドの準備を。六花も敵に備えてくれ」
守が銃に弾を込め、放つ。少しずつ位置をずらして乱射。
「……届かないか?」
特に反応がない。届いていないのか、当たっているが効果がないのか。
「いや、裂け目に着弾してるよ。やっぱ飛ぶ?」
六花の目には見えているようだ。着弾している。ならば飛ぶかと守が考え始めた、その時。
《オヲオオオー……!》
空気という空気が震えるほどの、低く大きい呻き声が周囲に響き渡った。
「うーわ、声でっか……」
背筋が震えあがりそうな不気味で大きな声にも、六花は片耳を塞ぐだけで意に介さない。何の反応も示さないアリスと一緒に、しばらく裂け目を眺める……
「避けろっ!」
突如、守が声を張り上げた。一瞬の後、三人が立っていた場所に巨大な手のようなものが叩きつけられる。ビルの装甲をも破損させる力。
手は更に襲ってくる。三人で別の方向に避けたが、手が狙っているのは一人。アリスだ。
「六花! アリスを!」
「おっけー!」
六花に呼びかけつつ、守は巨大な腕に弾を撃ち込む。さすがに異世界人用の銃器、数を撃てば注意を引くことはできる。
「そいやあーっ!」
手が守に狙いを変えたところをすかさず六花が斬りかかる。ジェットブーツの速度を乗せた一太刀が手を切り裂く。
六花の刀ももちろん、鉄を打って作ったものではない。これも異世界のオーパーツから開発したもの。それに六花の剣術が加われば、相手が誰であろうと斬り伏せることができる。が、さすがにこの巨大さでは殺せない。手を傷つけただけに過ぎない。
守もアリスのもとへ合流し、別のビルの上へ着地。三人で手と対峙する。六花の刀で怯んだように見えたが、まだ終わらない。手が再び動き出す。攻撃してくる様子はない。近くにある建物を掴む。
その後。もう一本の手が裂け目に現れた。裂け目の端に手をかけ、紙を破るかのように空を裂く。裂け目が更に広がり、異世界人が溢れ出てくる。
その対処は指揮官がするだろう。守はじっと裂け目を睨む。
何か出てくる。おそらくはあの巨大な手の本体が。アリスも同じくじっと見上げる。六花はどこか楽しそうに、しかし油断はせず腰を落として刀に手をかけて待つ。
間もなくしてそいつは姿を現す。裂け目の奥から、巨大な人型の異世界人がゆっくりと出てくる。
「おほー、でっかいねえ」
「今まで見た奴らとずいぶん違うな」
「ね。ロボットでもないし、あのケーブル生首の人とも違うよ」
メカのようでもなく、人間のようでもない。だが人型の怪物。人間の文化で最も近い表現は人体模型か。白い体。体毛はなく、目もない。ワニのように大きな口と、サメのように恐ろしい牙。
《オヲオオオーーーッ!!》
そして、震え上がるような咆哮。間違いなく、異世界人の親玉。これを倒せばこの襲撃は収まるだろう。これまでは比較的冷静だった町の人々も、これには動揺している。咆哮の後、悲鳴と共に駆け出していく人が多数見受けられる。
「すくすく育ったねえ。育毛剤だけ足りなかったか」
「珠の肌だぞ」
「いやー、あれはいらないかな」
一方、その姿にも声にも全く動じない三人。闇雲に攻撃はせず、動きを待つ。全身は出てこない。上半身、というより肩から上だけが出てきている。
「あれ、逆側は壁尻みたいになってるってこと?」
「やめろ。想像させるな」
想像したくはないが、六花の言うことはもっともである。こちら側に腕と顔となれば反対側は必然、下半身だけ残っていることになる。
巨人はひとしきり叫んだ後、ゆっくりと守たちを見る。目はないが顔が、まっすぐに三人を向いていた。
《…………ワ……》
巨人は動きを止め、何事かつぶやき始めた。
《……ワ…………タ……セ……》
「へ? あたし??」
「ちげーだろ」
ワ、タ、セ。そう聞こえた。渡瀬六花。
「でも言ったよ? ワタセって」
「言ったけど。『渡せ』だろ普通に考えて」
巨人が渡瀬という苗字を知っている可能性もなくはないが、ピンポイントすぎる。守るの言うように『渡せ』だとして、次の問題は何を欲しがっているかということだが。
「まさか、狙いはアリスか?」
目がない上に大きすぎてわかりにくいが、巨人がアリスを見ているようだ。アリスは異世界人。狙われる理由としては十分か。
「…………」
アリスはじっと巨人を見つめ返す。無表情で感情がなく、言葉も発さないので何を感じているのかはわからない。
「アリス、あいつと知り合いか?」
「…………」
アリスは首を振った。話すことはできないが、アリスは人間の言葉を理解している。守と六花が長年付き添って言葉を教え、肯定と否定だけは学習した。はいかいいえの質問ならばコミュニケーションを取ることが可能だ。
「知らないってさ。諦めな、異世界の巨人」
守が両手でライフルを構え、巨人の頭に向ける。
「お。やっていいの? んじゃ行くよっ」
六花が嬉しそうにジェットブーツを起動し、一直線に飛んでいく。アリスもその後に続いた。
《ワ……タ……セ!》
迫っていく六花とアリスに反応し、巨人が右手を動かす。六花を叩き落とそうと横に薙ぐ、が。
《ヲオ……!》
手が途中で止まった。アリスのシールドが、巨大な平手打ちを受け止めている。
「おっしぇーーーい!」
奇抜な掛け声で振り下ろされる一刀。巨人の顔を縦に切り裂く。
《オ……オヲオッ!》
ダメージが通った。巨人が痛みに叫ぶ。
「ナイスだ六花」
六花が切り裂いた顔の傷を狙い、守は弾を撃ち込んだ。的が大きいゆえ次々と命中し、巨人は更なる苦痛を受ける。
「隙ありぃっ! 渡瀬流抜刀術——『六花』!」
仰々しい技名を高らかに叫び、六花が刀を振るったのはわずか一瞬。
「成敗!」
六花が刀を納めると同時に、六つの斬撃が巨人の顔面を切り刻んだ。
巨人が絶命し、その巨体は塵となって消えた。同時に裂け目もなくなり、何の変哲もない青空に変わった。取り残された異世界人たちは途端に挙動が狂い始め、討滅部に粛々と処理されていった。
最大の功労者となった守たちだが、本人たちは歓声の一つも上げず、裂け目があった箇所を調べている。
「アリスのこと、なんかわかるかと思ったけどな」
守は周辺をくまなく見て回ったが、ただの空。裂け目跡には特に何の痕跡もなかった。ここから異世界に行けるというわけではない。
異世界は全て一方通行。異世界から地球を侵略しに来るが、地球から異世界に行くことはできない。地球は何度も侵略を受けているが、異世界に行ったという記録は前例がない。
「異世界人だから取り返しに来たのか、関係はないけどアリスが欲しかったのか……」
アリス本人は知らないと言っていたが、巨人がどうだったかまではわからない。あの状況では、客間に招いて茶をしばくわけにもいかない。
「まあいいんじゃない? アリスは知らないって言ってたし。無理に探ることないよ」
「それも一理あるが……」
アリスは言葉を話せない。また筆談もできない。人間の言語を理解し肯定するか否定するか。それだけだ。
ゆえに、アリスの気持ちを聞いたことがない。何度も声をかけているが、アリスから何か発信されたことがない。アリスはあの巨人について知らないとしたが、本当に知らないのか知っているが言いたくないのかはわからない。
「異世界人は追い払った。被害は~……まだわかんないけど大まかには無事。あたしたちもなんともないし、アリスはこれからも友達。それでよくない?」
襲撃があっても、ロボや化け物と戦っても、六花は底なしに明るい。アリスのことがわからないと嘆くのではなく、わからないならそれでいいと言う。
「ねーアリス? あんなおっきな人より、あたしたちと一緒にいるほうがいいよねー?」
「…………」
アリスがうなずく。六花はそれにぱっと顔を輝かせ、ほら、とばかりに守にドヤって見せた。
「……はあ」
憎たらしいが憎めない表情に、守もどうでもよくなった。六花の言う通り、今回も異世界人を無事撃退した。あの巨人は敵で、アリスは仲間。それでいい。
「よーし、終わり! ご飯行こうよ! 守のオゴリね!」
「なんでだよ」
「ここの調査で時間取らせたでしょ。時は金なり」
「お前なあ……」
あたかも調査で無駄足くらったかのような言い草だが、守にはもはや言い返す気力はなかった。時間を取らせたのは事実だし、巨人を倒したのは六花だし。
「わかったよ。ただし店は俺が決めるぞ」
「いいよんー。楽しみだねえ、アリス♪」
やることは変わらない。討滅部の一員として、異世界人の襲撃から地球を守る。これまでもこれからも、それが彼らの役目。
この世界での、おもてなし。
完