21階層での逃亡劇
「お前達、出て来い!ターゲットが逃げたぞ!」
カミラに剣を押し当てていた男が叫ぶが、男が向いた方向からは誰も出てこない。
そして1人別方向に走り出したユリアンネに向けて弓を構えた男4人に対して、思わぬ方向から複数の≪火球≫が飛んでくる。
「何だと!?」
そして男達がタイミングを逃したことで自分に矢が飛んで来ないことを確認できたユリアンネは、昔に使っていた杖を用いて≪火炎≫を複数発動させて、“蒼海の眼”の男達をさらに混乱させる。
「くそ!追いかけるぞ!」
それでも持ち直した“蒼海の眼”の動ける男たちはユリアンネを追いかけて走り出す。
「待て!」
シミリート達も手に持っていた羊皮紙を投げ捨て、地面に置いた武器をそれぞれ持ち、武器がないカミラはかわりにユリアンネの杖を持って追いかける。
一方、潜んでいたはずの“蒼海の眼”の男達6人は、目の前の仮面男3人に足止めを喰らっていた。
「何なんだお前達は!」
「いやいや名乗るほども無いのだが、大人しくさえすれば命までは取らないぞ」
「何言っているんだ」「早く向こうを助けに行くぞ」
“蒼海の眼”の男達がブロードソードなどの片手剣を振り回すか、短剣を投擲するのに対して、現れた男たちは軽やかに短剣を回避し、手にした短槍で敵の片手剣を振り払う。さらには穂先で切り付けるだけでなく、反対の石突で胸を突くか柄で強打して、次々と敵を行動不可にしていく。
「急げ!」
6人を倒した後、シミリートたちと視界を遮っていた丘にのぼるが、近くに敵も味方も残っておらず、少し遠くに数人ずつの集団が走っていくのが見える。
「まずい、急ぐぞ!」