カミラの危機3
相談した結果、カミラの誘拐について相談するのはあくまでもシミリートの属する分隊内のみに抑えることになり、その分隊も全員が業務を外れるわけにいかないため、シミリートを含めて3人だけがダンジョンに向かうことになった。分隊長のマンファン伍長、班長のセレスラン兵長である。
ユリアンネを尾行した“蒼海の眼”2人の捕縛・尋問などで顔を知られているシミリートと、後の2人は念のために別々の種類の仮面をつけることにした。
今月の21階層の地図は販売開始しており、今回の指示の南東の角を確認する。今月の階層入口は南の中央付近、そして22階への出口も南東の角付近であった。
「こんなときにはますます、手前の階層に戻れない仕組みが恨めしいわね」
例えば、ダンジョン入口から22階入口に飛んで、そのまま21階の出口に逆走することは出来ないのだ。それが可能であれば各階層のボス戦ばかり狙うものも出て来たのであろうが。
「ユリを確保したらすぐに出口から街に連れ帰るつもりなんだろうな」
「それに草原の階層だから、他の仲間がついて来て居ないかも夜の野営も含めて道中で見張るつもりでしょうね」
「まずいな……」
「シミ、大丈夫だ。お前は仲間達と進め。ただでさえいつもより1人減った5人で危ない。俺たちは2人だと流石に野営の時に危ないから信頼できるメンバを増やしておく。鉄級冒険者が多いお前達は魔物を回避するのに時間もかかるだろう。先に出発しろ」
マンファン伍長とセレスラン兵長は後から追いかけてくると言う。シミリートが頭を下げると、マンファンが否定をする。
「本当は俺たち衛兵があのときに“蒼海の眼”の動きを封じることを出来ていればこのようなことにならなかったんだ。今までの黒い噂のときでも。街の治安を守る俺たちの力不足だ。出来ることはさせて貰おう」
シミリートは良い人の部下になったことに感謝し、ユリアンネ達とダンジョンに潜る準備をする。