ダニークの決断3
「これは困ったな。ダク、拠点はまだ遠いのか?」
「いや、もう少しだ。そこの次の次の建物の右に入っていく」
街の中に戦馬8体の集団で戻ると、道はすでに右往左往する住民たちでいっぱいであった。
乗せている子供のこともあるので、ゆっくり少しずつ進むのだが、知らない街で目的地が分からないと不安になる。
「あぁ、ここだ。でも、たくさんは入れないから」
ダニークが繰り返し言うので、魔法の収納袋を持つユリアンネと、背が低いドワーフのヨルク、そしてゾフィの3人が付いて行くことにする。
「ここなのね」
ユリアンネがつぶやいてしまう。
大通りから裏道に入ったあと、さらに大人がすれ違えないほどの細道に入り、行き止まりと思った突き当たりの板を動かしてその先に進む。
そして、建物の崩れた隙間から中に入るのだが、半地下のような部屋が1つ。天井も高くない。
天井の上からはドタバタという音が聞こえてくる。
「ねぇ、ここって」
「あぁ、どこかの店の下だよ。こんな部屋があることを上の奴らは知らないのだろうな」
確かに石造りの建物で隙間もなくて、こちらが小声なら聞こえないのかもしれないが、よくもまぁと思ってしまう。
「これよ、私の宝物」
小声で小さな女の子が差し出してきたのは、女の子の服装をした人形である。かなり汚れて傷んではいるが、この子にとっては大事なものなのだろう。これが無いと眠れないとなるのかもしれない。
「じゃあ、みんなもここにどんどん入れてね」
ユリアンネが用意した魔法の袋に子供たちが何でも放り込んでいく。
浅瀬で魚を取るときの籠も自慢されながら入れていく。




