セントヤールへの襲撃3
「おぃおぃ、ハンソク王国がこの北方諸国家群と戦争なんて話は無かったよな?」
「そうね、旅人の私たちには分からないところで、そんな動きがあったのかもね」
「もしかしたら国民も知らないところで、な」
イスクラディヤ国の港街セントヤールに居るときに、まさかハンソク王国の軍船が攻め込んでくるとは、という状況である。
「この国の軍船が応戦するにはもう少しかかりそうだけれど、途中にある商船は他にもあるから、港そのものにまで攻撃が来るまではもう少し時間がかかりそうよ」
ユリアンネが使い魔シルヴィスの視界で見た内容を共有する。
「じゃあ、まだここに居る方が安全か。シミたちからの情報を待つとしよう」
大人たちが落ち着いて座りだしたので、孤児たちも安心したようである。
小さい子は大きな子に引っ付くか、女性陣の隣に近づいて来ている。
「よし、今のうちの食えるものを食っておこうぜ」
ヨルクらしい元気付けの言葉であるが、孤児たちのことも踏まえて、そうだな、とそれに乗る。
「ほら、串焼きを追加だ」
スープの際に用意していた焚き火は残っているので、その火を使用して温めていく。
「おいおい、呑気に……」
戻ってきたシミリートがその様子を見て言いかけるが、サンダーは意図を理解したのか、その馬の前に出て発言を止めさせる。
「俺たちは後で話を聞くから」
そう言って、ジーモントはヨルクを一緒に残らせて、残りの仲間たちをシミリートたちの話を聞きに行かせる。
孤児たちに聞かせないための配慮である。




