ユリアンネの夢
「で、つまるところスリをしてきた少年に食事を与えて、ここまで連れて来たと?」
皆が揃っているところへ、少年ダニークを連れて戻ったシミリートとユリアンネ。
状況を説明したところでのカミラの発言である。
『ま、ユリ本人に当時の記憶はないらしいけれど、孤児院の出身だということを気にしているのだろうし』
昔からの仲間であるカミラたちは、ユリアンネが薬屋ラルフに引き取られ孤児であったことを知っている。
ドロテアは発言を控えているが、彼女も孤児院出身であることを皆が知っている。
「君は孤児院かどこかに住んでいるのかな?」
「あんなところ!屋根はあっても、少しの食事を貰えるかわりに大人たちにいじめられるところじゃないか!」
「!」
「共和制って、そういうところにもお金をかけるのだと思っていたわ」
「ユリの言うようなところもあるのかもしれないけれど、この国、この街では違うってことなのかもね」
「じゃあ、どこか隠れ家にでも住んでいるの?」
「……」
「私たちがその場所に行って、仲間たちに何かすることを心配しているのね」
「いやいや、俺たちはこの国を通過するだけの旅人だから、そんなことをする必要がないって、こっちの事情は知らないよな」
「場所を教えてくれたら、その子たちの分のご飯も買って行ってあげるわよ」
「ユリ、いつまでもこの国に居ないのだし、中途半端なことになるわよ……」
「カミラの言う通りね。でも、今まで漠然としか思っていなかったけれど、せめて目の前で出会った人には、その間だけでも何かしてあげたいの」
「でも、それでは……」
「そうね。だんだんと思うようになったわ。私、孤児院を立ち上げたい。私はたまたまお父さんたちに恵まれたけれど。だから、手に職をつけられるように薬師のことも教えてあげたい」




