カミラの危機
ユリアンネへの尾行騒動から数日した頃、カミラが実家の工芸屋を出たところで、フードを被った女性に声をかけられる。
「あのー、恐れ入りますが、工芸屋のカミラさんでしょうか?」
「はぁ、そうですがどちら様でしょうか?」
「皮革屋のゾフィさんがあちらで大怪我をされて。カミラさんに言えば良く効く傷回復ポーションを持って来て貰えるとおっしゃっていたので、探しておりました」
「え!?ゾフィが?どこですか?」
「はい、こちらです」
尾行騒動から少し時間が経って気が緩んだことと、狙われたのがユリアンネであったので自分自身に対しては危機感が弱かったことと、そして仲間ゾフィが大怪我と聞いて動転したこと、色々が原因となり指示されるまま裏道であろうがどんどんついて行ってしまうカミラ。
「まだなの?」
実家からかなり離れたところまで連れて来られて、あれ?と思い出したところで、
「はい、こちらです」
と女性が倉庫に入り立ち止まる。ついて入ったところで開いていたドアも閉められ、物陰に隠れていていた男達が姿を現わす。
「よぉお姉ちゃんよ、また会えたな」
「?あ、あんた達はこの前の、尾行していた!」
「あぁ、おかげで衛兵団の牢屋で臭い飯を食わされてしまったよ」
「何よ、自業自得でしょ!」
「この状態で気の強いことだな」
「まぁ仲間が大怪我したというのは嘘だったのね。安心したわ」
「そんなことを言って良いのか?今から大怪我をするのは誰になるのか。ゾフィか?ドワーフのヨルクか?」
「!?」
「そう、ご近所さんは簡単に色々なことを教えてくれるな。特に女性が聞きに行くとな。だが、薬師は誰なんだ?お前達がよく遊んでいたのは銀髪の娘というが、“木漏れ日の雫亭”の娘は金髪だし、あの店舗で販売していたのは俺達が探している品質の物ではなかった」
「……」
「ほぉ、今度はダンマリか。いつまで続けられるかな」




