槍術道場2
シミリートが衛兵の休みの日に向かったのは街の南部。
このトリアンは中心のダンジョンを囲むように同心円の城壁が3重にある。一番ダンジョンに近い城壁の内側はダンジョンと広場のみだが、その城壁の城門は南側にしかない。万が一にダンジョンから魔物が溢れる氾濫が発生した時に、街の北の小山にある領主館や貴族街と直結しないためと言われている。
つまり、一番危険な場所がダンジョン南であり、その内側から1つ目と2つ目の城壁の間には、冒険者ギルドや領軍の拠点がある。冒険者ギルドは武力の拠点になり得るだけでなく、ダンジョンから持ち帰った討伐証明部位や素材などを納品するために便利ということもある。
そしてシミリートが向かう槍術道場もその街の南部、2つ目の城壁のすぐ内側にあった。他にも道場の類がいくつかあるのは、武に自信がある証明でもあるのであろうか。
「失礼します!衛兵団東部旅団第3大隊マンファン分隊長の紹介で参りましたシミリート一等兵です!」
「ははは、聞いておるぞ。だが、この道場に通うのは衛兵団がほとんどとはいえ、ここでは階級は忘れよ。ワシはここの道場主のティスランだ」
「は、シミリートと申します。どうぞよろしくお願いします」
「元気が良いのは良いことだ。既に剣では武技が使えると聞いている。この師範代に教わるが良い」
「師範代のドミニコラだ。まずは腕を見せて貰おう」
指示に従い庭に出て、ショートソードで片手剣の武技≪斬撃≫が出来ることを実演し、衛兵団で教わっている槍の型を素振りするシミリート。
「ふむ。入団すぐと聞いたが、事前に独学もしていたようだな」
「は、ありがとうございます!」
「修行の先の姿を見せておこう」
そう言ったドミニコラが槍の武技、初級≪刺突≫中級≪強打≫≪剛撃≫上級≪飛斬≫を見せてくれる。
特に斬撃を飛ばす≪飛斬≫はシミリートの心をつかみ、これからサボらず通うことを誓うのであった。