人型魔物ダンジョンのボス戦2
一方、大型オーガを相手しているサンダーも苦戦している。
九字を切る余力も対戦最初しかなく、両手で構えた刀による防御と攻撃しかできていない。
ユリアンネのゴーストによる攻撃というか気を逸らさせること、ドロテアによる≪火炎≫や≪氷刃≫による攻撃、そしてすでに発動済みの≪炎壁≫に背中が炙られているはず、というように単なる1対1ではない条件ではある。
流石にAランク魔物というべきか、この大型オーガの振るう大剣は通常オーガに比べて技があり、何度かフェイントをくらいそうになった。
その際にニヤリという顔をされた気がして、余計に内心は穏やかではない。
ただ、他人の様子を見る余力がある仲間はいないが、おそらくは見ていても優雅な刀さばきは変わっていないことが彼らしいところである。
そのサンダーに大丈夫か?と声をかける余力があるように見えているのがシミリートである。
もちろん彼は彼で、本当は余力などない。
シルヴィアによる嫌がらせと魔法攻撃などユリアンネの支援を貰っているので助力は一番だが、それを見越していたユリアンネの≪炎槍≫による事前攻撃はこの大型オーガには当てられていないので、一番ダメージが少ない状態で戦闘突入したのである。
「ユリ、俺への支援は後回しにして、敵を1体でも減らしてくれ」
強がりにも聞こえるが、確かに均衡を崩すにはそれも作戦の一つである。
ユリアンネもシミリートが心配ではあるが、その意味は理解する。
サンダーが対峙している大型オーガに≪炎槍≫を狙い澄まして当てた後は、ヨルクとジーモントのどちらを?と状況を再確認する。