人型魔物ダンジョン深部
「ちょっと交代をするか?」
最前列での盾役に疲れているジーモントに、シミリートが声をかける。
「いや、しかし……」
確かにユリアンネとドロテアは後方からの魔法攻撃、ゾフィが弓、カミラが短剣投擲であり、手持ち無沙汰になっているのがヨルクである。
「よし、やってみるぞ」
ドワーフらしい低身長のヨルクが得物のバトルアックスを持ち上げて宣言する。
「そうか、まず1回だけ試してみるか」
休憩が終わったところで隊列を変更する。
ジーモントは後ろからの攻撃に備えるために最後尾に移動する。敵が来なければ待機になってしまうが、溜まった疲労回復のためである。
そして、最前列である。
オーガ2体に対して、今まではシミリート、サンダー、ジーモントという3人で対応し、シミリートとジーモントの盾の合間からサンダーが刀の突き、シミリートは自前のショートスピアによる突きが近接武器での攻撃手段であった。
そこに後方からの魔法や弓矢の攻撃である。
今回は、シミリートが1体のオーガに対して実質1人で対応するのは変わっていないが、サンダーとヨルクが盾もなく1体のオーガに対峙するのである。
ここでのオーガは刀ではなく、大斧、大剣、棍棒のような力で押してくる武器ばかりであるので、サンダーは刀で受けるわけにはいかず、回避が主となる。
「まぁ、任せておけ。さっきまでもしっかり見て来ていたから」
ヨルクがそれなりに自信を持って発言するので、まずはやってみることにする。