ダンジョン踏破後2
「指示された場所にお前たちを馬車で連れて行く。それが俺の仕事だ。その馬車の中で何をしようとこちらは感知しない」
せっかく指示されたダンジョンを踏破してダンジョンコアを持ち帰ったのに、衛兵からはそれで解放という言葉はなく、さらに次が控えているとの話である。
「じゃあ、勝手に食事などを摂らせていただきますね」
「繰り返しだが、好きにしろ」
流石に馬車の荷台で焚き火をするわけにいかないが、昨夜に牢屋で提供された匂いもひどく水のようなスープのことを思えば、簡易な非常食でも十分である。
「仕方ない。このまま全員が寝るのは不安があるから、交代で寝ることにしよう。明日も何をさせられるのか分からないし、休憩はしないとな」
「こっちには装備から何まで返して貰っているのだから、何でもできるわよ」
「そうは言っても、オリガちゃんのことは分からないだろう?」
「そうだよ、カミラ。この国を逃げるにしても戦馬も王都に預けたままだし、俺たちは確かに何とでもできるけれど、オリガちゃんが無事でいるか……」
「汚いわね、子供を人質にするなんて」
「ま、俺たちで対処ができる今回のダンジョンみたいなものならば、とりあえず従っておけば良いだろう。それ以上の場合には、そのときに」
シミリートも、御者台の衛兵たちに聞こえる声はあくまでも落ち着いたようにさせてあったが、オリガに対することを怒っていないわけでないのが伝わる表情であった。
馬車の御者台にいる衛兵以外にも、ダンジョン踏破のことを伝えに行った衛兵が居たのは確認している。
少なくとも言われるまま従っている間は、オリガも安全であると思うことにする。