少女オリガ
「私はユリアンネ。みんなからはユリって呼ばれているわ」
ユリアンネが少女の緊張をほぐせたのか、自分たちの自己紹介をしておく。
いっぺんに8人の名前を覚えられると思わないが、警戒されないためである。
「ユリね。でもこの国の人ではないのよね?」
「やっぱりわかる?そう、ここから南西の方にあるモンタール王国ってところに帰るところなの」
「ふーん。ずいぶん遠いところから来たのね」
「そうね。色々とあってね」
自分たちの国名など知らなくても不思議ではないのに、このあたりの子供への教育はしっかりしているのだろうか、と思いつつ、話を続ける。
「あなたのお名前は?」
「オリガよ。12歳に見えないって言いたいのでしょう?」
「あら、そんなことはないわよ」
そう思ったことを口に出さず、一応は否定しておく。
「それより、この辺りは角兎だけ?お姉さん達はあっちの森で狼、その向こうではゴブリンたちに遭遇していたのだけど」
「この近くなら角兎だけよ。あそこに見えるのは王都だから、この辺りにゴブリンなどは居ないわ」
「そうだったのね。でも、角兎までは手が回っていないのね」
「そうよ。だから私が狩るのよ」
「お友達、仲間はいないの?」
「今日は、いないわ」
その強調の仕方から、あまり指摘しない方が良いことなのかもしれない。
「あなた達、こんなところで無駄話をするくらい暇なの?じゃあ、見えている角兎を一緒に狩ってくれない?それとも角兎も狩れない冒険者なの?」
「ははは。よーし、見ていろよ」
本気で挑発に乗ったとは思えないが、少女の口調には乗っているシミリート。