アロマ
色々と疲れることが続いたユリアンネは、“オトマン書肆”の一角でも販売しているハーブティーを飲んで気分転換を図る。本を読むときには落ち着いた気分で、という方へのコラボ商品として販売している。薬らしい物でもないため、薬剤師が奥で製作した物とは思われないだろうと考えている。オトマンからも、顧客満足度の向上への寄与として賛同されている。
そのハーブティーをいくら飲んでも、悪名高い冒険者クランや黒い噂のある貴族のことを考えると落ち着かない。その前の麻薬絡みの悪徳薬師でのモヤモヤも合わせて再発してくる。それに、お茶では飲める量にも限界がある。
「こうなると、前から先送りしていたアレにチャレンジするしかないわね」
前世でもリラクゼーション等として女性に人気であった、アロマセラピーである。正直、ユリアンネは細かいことは知らず、お香として焚いたりお風呂に入れたりすることぐらいしかイメージが無い。
アロマオイルとエッセンシャルオイル(精油)も何となく同じような物、果物やハーブを絞ったり蒸留したりして作る物、としか記憶していない。そのため、今までは自分にとってまだ分かりやすいハーブティーの種類を増やしたり風味を良くしたりすることに注力していた。それに、ハーブティーは既にこの世界でも普及していたため悪目立ちする恐れもなかった。
しかし、ハーブティーや香水はあってもアロマやポプリは見かけたことが無かった。ただそれが迷宮都市という殺伐とした街だからであり、王都やこのトリアンでももっと高級街に行けば販売しているのかもしれない。身近で高級なことを一番知っているオトマンも男性で意識していないからか、それらの存在を認識はしていないとのことだった。