ドラゴレシエ国への入国2
「ずいぶんと大きい川だな」
ドラゴレシエ国との国境は大きな川であり、その出国・入国審査は大きな橋のたもとにそれぞれあった。
ゾリヴィヤ国の出国は単に身分証を見せるだけで、言葉らしいものもなかった。
ドラゴレシエ国の入国では、ユリアンネとシミリートの銀級冒険者の身分証を見た衛兵の顔付きが変わる。
「銀級か!どうだ、仕官しないか?高給で募集しているぞ」
「いえ、私たちはモンタール王国に帰るところでして」
「そうか……いつでも募集しているからな。それと、滞在の間だけでも魔物を倒してくれると助かる。頼むな」
国境を越えて、周りに誰もいなくなったところでようやく口を開く。
「いや、参ったな。かなり真剣な勧誘だったな」
「それだけ戦力を欲しているのでしょうね。休戦したとはいえ、オンデンスク国の侵略へ対抗する力が欲しいのでしょう?」
「それよりも、魔物の話は気になったな。そんなに魔物が多いのかな」
「どうなのかしら」
自分たちが通る街道は、南部の海に近い方だからか、それほど戦火に見舞われた感じはしないと思いながら進む一行。
「え?あの木々の影」
「本当かよ。まさかゴブリンか?」
それなりに人が通るはずの街道。そこで見かけるのは角兎程度と思っていたのに、人型でそれなりに知性もあるはずのゴブリンがうろついている。
「放置していいわけがないし、やるぞ」
Eランク魔物なので、今の自分たちなら数体程度で苦労することもないが、一般の住民にしては脅威となるはずである。
あっさり倒した後は、胸から魔石を取り討伐証明の右耳も切り取ってから燃やしておく。
「本当に魔物に困っているのかもな」