ドラゴレシエ国への入国
「ユリ、魔道具の店で良い魔導書は見つからないの?ハンソク王国などと違って文字はわかるのだから、ここでは探す価値があるんじゃないの?」
ゾフィにも気をつかって貰うが、街での自由時間で探しても目新しいものは見つからない。戦争が定常化してしまっているから、良い魔導書は国家が集めているのかもしれないと思っている。
「ありがとうね。でも、もう諦めてきているところよ。それよりもゾフィこそ。ヨルクもだけど」
「そうなのよね。もう街道を進むだけだから、良い魔物素材なんて手に入りそうにないし、ヨルクも鍛治の目線で面白いものはこの辺りの街にはないんじゃないかって」
「そうね。その意味では宿屋と料理はどこでも経験になるジモと、各国で色々と目新しいものが見つかる工芸屋のカミラには良い旅になっているわね」
「そうね。薬と皮革と鍛治はしんどいわね。そういえばシミの衛兵って、各国のを見たら良い勉強になっているのかしら」
「ま、通り過ぎるだけの場所で、だとそんなに違いもなさそうだし、どうかな」
ジーモントとカミラに対して悪気はないが、少しうらやましく思う2人。本人たちに聞こえないタイミングでなら、と本音も漏れてしまう。
「おーい。そろそろ出発するぞ」
言葉はわかる国でもあるので、4人ずつに分かれての行動であった。
この班は、その女性2人以外は、シミリートとヨルクである。
「何か美味しいものはあった?ジモにも教えてあげるようなものは」
「単に焼いて串に刺しただけだが、味付けが変わっていた。ここでもあの酸っぱいクリームで」
「え?美味しいの、それ?」
「まぁ、好みによるかな。でもこの地方に慣れると普通なのかも」
「よし、ゾリヴィヤ国もこれで最後だ。ここを出ると次はドラゴレシエ国だな」
「特に買い忘れも無いわよね」
「戦火の後だというし、食料は多めに仕入れてあるぞ」
そうして全員がそろって西に出発する。