北方諸国家群の情報3
「へぇ。ピロシキって言うんだ。これは便利な発想だな」
昼食は通りがかりの屋台で購入することになったが、そこで売られていたのがピロシキであった。
「なるほど。小麦粉で作った生地に色々な具材を包んで揚げたり焼いたりするんだな」
「これだと冒険のときにも持ち運びが楽だし食べやすいな。トリアンでも、冒険者向けの弁当として売れそうだな」
「ジモ、あなたの実家の宿とは路線が違うんじゃないの?」
「いやいや、具材には工夫の余地がある。安い屋台とは使い分けるのもありだろう」
ユリアンネは前世記憶でもひき肉と玉ねぎを炒めた具材くらいしか知らないので、新鮮であった。
「なぁ、おにぎりでも色々な具材を入れていたよな。あっちは包むのがご飯、こっちはパンやパイみたいな感じだけど、それぞれに合うものを色々と試してくれよ」
「ヨルクは気楽に言うな。でも、汁がこぼれないようなものを選んでも色々とできそうだな。冷えて固まったりする脂系は避けるとして……」
「ジモはこの旅で色々と学ぶことがあって良いわね」
「そう言うカミラだって、さっき買ったその細工物、なかなか面白いじゃないか」
「そう。良いでしょう?マトリョーシカって言うんだって。入れ子構造で、大きな人形の中に一回り小さな人形が入っているのが何段階も」
「どういう意味があるんだい?」
「サンダーって難しいことを考えるのね。でも、教えて貰ったわよ。家族円満や子孫繁栄だって」
「なるほど、確かにこれを見るとその意味は分かるな」
「これって、木で形を作った後の模様、顔や服は色々と考えられるわよね。素材を高級にしたらお金持ちにも買って貰えそうだし」
ジーモントだけでなくカミラにも得るものが多そうで楽しそうに見える。
ユリアンネは通過するだけの都市で薬のことを学ぶ機会がないとあきらめつつ、薬草として売られているハーブの屋台には興味深く立ち寄り、購入しつつ情報を得ている。