貴族
ユリアンネ達が住む迷宮都市トリアンは、モンタール王国のストローデ領の領都である。そのストローデ領の領主がインリート・テンフルト・フォン・ストローデ侯爵。
このトリアン北側の小山の頂上付近にある領主館にストローデ侯爵家が住み、そこから街との斜面にある貴族街に、ストローデ侯爵家の寄子貴族達が住んでいる。
この王国の貴族は、王族の親戚である公爵より下に、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵と続く。準男爵・騎士爵は準貴族、子爵・男爵は下級貴族、伯爵以上は上級貴族とも呼ばれる。
子爵以下は、伯爵以上のいずれかの貴族への寄子となり、伯爵以上は寄親になる。これは膨大な数の貴族を王家が直接指揮命令することなく、多段管理するための手段である。ただし、爵位を授ける叙爵、爵位をあげる陞爵などは国王のみの権限である。
また、領地を持たず領地からの税収が無い、国から年金だけ貰う法衣貴族がほとんどになる。このトリアン北部の斜面の貴族街に住むのは、基本的には法衣貴族達になる。
領地持ちは私有軍団を編成できるので、戦争時には軍役があるし平常時でも魔物の討伐など領地を平穏に保つ義務がある。伯爵以上には直接雇用である直臣の私有軍以外に、寄子による騎士団も存在する。
ここストローデ侯爵領の領軍は、大きくは領主の直臣と寄子貴族の家臣団があり、直臣は近衛である金虎騎士団と、主に迷宮で魔物討伐を行う銀虎騎士団に分かれている。
金虎騎士団、銀虎騎士団、そして衛兵団がストローデ侯爵家の直臣となる。
建前上では、ストローデ侯爵領において衛兵団は寄子貴族達も取り締まることができる直臣ではあるが、現実ではそんな簡単には行かない。
衛兵団の中でも寄子貴族もしくはその家族がほとんどである上位役職の者達が、それら貴族の悪事を取り締まることになる。ただ、色々と政治的な調整も行うなかで、揉み消されたり身代わりを立てられたりすることもあるという。
寄子貴族同士でも派閥争いがあるため、衛兵団はその争いで良いように使われることもあると、シミリートは先輩達から愚痴を聞かされている。
流石にそれらの状況までを、オトマン、ユリアンネ、ジーモントに話すことはできないため、適当にお茶を濁してその日は別れを告げる。